社説(2008年2月28日朝刊)
[ポリタンク漂着]
対策が奏功していない
本島北部などの海岸に廃ポリタンクが相次いで漂着し、住民を不安がらせている。
県環境整備課によると、二十六日現在、国頭、大宜味、今帰仁、恩納、うるま、渡嘉敷の六市村で七十八個が見つかった。
廃ポリタンクは、沖縄の海岸だけに漂着しているわけではない。環境省環境保全対策課によると、一月十五日ごろ、長崎県平戸市の海岸で確認され、それ以降、北は青森県から南は沖縄県まで、十六府県で約二万六千個が見つかっている(二十六日現在)。
しかも、漂着は今年だけではない。一九九九年ごろから、冬場を中心に毎年のように、数千から一万を超えるおびただしい量の廃ポリタンクが日本海沿岸に漂着している、というから驚く(二〇〇六年度はゼロ)。
〇三年に韓国政府は、環境省との話し合いの中で、国内ののり養殖業者の使用したものが流出したことを認めたという。
今回の大量漂着の流出源についてはまだ分かっていない。ただ、ハングル文字が記された廃ポリタンクが今回も多数見つかっており、韓国から流出した可能性が高い。
日韓両国の政府レベルで原因究明を進め、早急に防止対策を講じてもらいたい。
未知の人へのメッセージを盛り込んだ漂着物にはロマンがあり、拾った人と流した人の間に交流が生まれることもしばしばだ。島崎藤村の「椰子の実」のような話なら大いに歓迎だが、中に何が入っているか分からない廃ポリタンクの大量漂着が冬の風物詩になるような事態だけは願い下げにしたい。
実際、うるま市で見つかった廃ポリタンクの中からpH(ペーハー)1の強酸性の液体が検出された。全国的には酢酸、硝酸なども検出されており、注意喚起が必要だ。
医療廃棄物に廃油ボール、ペットボトルにライター、ガラス瓶にビニール袋。漂着ごみによる県内の海岸汚染は深刻だ。
日本、中国、韓国、ロシアの四カ国は一九九四年に「北西太平洋地域海行動計画」を採択した。海洋・沿岸の環境保全に協力して取り組むための国際的な枠組みである。
二〇〇四年の政府間会合では、海洋ごみ問題に取り組んでいくことも合意されている。
国境を越えた政府間のルールづくりを進める一方で、自治体レベルでできることや住民が主体となって進めるべきことなど、それぞれの段階で取り組みを強化していく必要がある。
社説(2008年2月28日朝刊)
[基地外拳銃携帯]
違法命令に厳正な対応を
在沖米海兵隊基地の日本人警備員が実弾の入った拳銃を携帯したまま、基地外を移動していたことが明らかになった。外務省は「警備員が外で銃を携行することは禁じられている」と明言し、県や県警も問題視している。
基地外での携帯は銃刀法違反に当たり、地位協定からの逸脱としか言いようがない。米兵の不祥事が相次いでいる中、どういう神経なのか。今回は米軍人の憲兵隊司令官が拳銃携行を文書で命じていたというから驚かされる。
日本人警備員が基地外を移動したのは今月十一日と十二日で、延べ五十九人が腰に拳銃を携帯し、軍用車や徒歩でうるま市のキャンプ・コートニーとマクトリアス間を移動したという。
従来、日本人警備員が基地外に出る際は、米軍人の憲兵が拳銃を預かり、基地内に移動後に再び渡していた。海兵隊を除く三軍では現在も同様の管理をしている。当然のことである。
日本人従業員らの証言によると、命令で基地外での携帯を強いられた。さらに拳銃を携行しなかったり、外部に知らせたりした場合は処罰の対象になるとの通知もあったようだ。
複数の警備員の証言を踏まえると、憲兵隊司令官ら幹部は基地外での日本人警備員の拳銃携帯が違法であることを認識していた可能性がある。
基地警備員の拳銃携行は一九八三年から義務付けられ、二〇〇一年九月の米中枢同時テロ以降は警備も厳しくなった。それだけに違法な命令を見過ごすことはできない。
沖縄防衛局は、米軍側の回答を受けて再発防止を申し入れているが、それだけで済ませるわけにはいかない。
民間地域での拳銃携帯の違法性を知らなかったのか、違法性を認識した上で命令を出していたのか、事実関係を明らかにすべきだ。いずれのケースにせよ問題がある。
憲兵隊司令官らが違法性を十分認識した上で基地外での拳銃携行を命じていたとすれば由々しき問題であり、在沖米軍は憲兵隊司令官ら幹部に問いただし、厳正に対処してもらいたい。
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