在沖米軍基地の海兵隊憲兵の日本人警備隊員延べ59人が11、12の両日、憲兵隊司令官の指示で、弾丸が装てんされた拳銃を携行して民間地に出ていたことが分かった。
外務省は「日本人警備員が銃砲等を施設区域外で携行することは禁止されている」と、米軍の規定に違反すると明確に指摘。本間浩法政大教授は「日本の銃刀法違反に当たる」としている。
違法行為を文書で指示した司令官は「日米の合意事項の変更で隣接する施設には拳銃を持ったまま移動できるようになった」と、事実と反する説明を日本人警備員にしていた。
何を根拠にそのような説明をしたのか。勇み足で済まされる問題ではない。米軍は法律を尊重し、関係者を厳正に処分するべきだ。
隊員からは「禁止されていることを強要したのだから、上司には責任を取ってもらいたい」との訴えもある。規律を重んじる軍隊ならば、責任を取ることは当然のことである。
日本人警備隊員が見せられた指示書には「この指示は司令官の公式な指示で、もし拒むなら行政処分、懲戒処分の対象になる」と脅しともとれる文言があったという。
強い立場を利用して、事もあろうに違法行為を強要する。憲兵隊の役割は、軍隊の秩序維持のはずである。自ら決まり事を犯す行為を強要しては、その存在意義が問われる。
米兵女子中学生暴行事件やその後の一連の米兵犯罪といい、海兵隊の組織自体に構造的な問題があるとしか言いようがない。
基地内での日本人警備隊員の拳銃所持について、政府は「日米地位協定上認められている」としている。だが、その見解は曲解の上に出来上がったことが、外務省の秘密文書「日米地位協定の考え方」増補版で明らかになっている。
増補版では、外務省が「地位協定はあくまでも条約」で「米軍基地の日本人警備隊員の銃砲保持を認める明文の国内法令はない」とし、曲折を経て「『法令に基づき職務のために所持する場合』に該当すると答えるほかない」との結論に達したと自ら解説している。
基地内での拳銃携行も、何ら法的根拠はなかったのを強引に、正当化したのである。
今回の司令官の指示は大きな問題をはらんでいる。日本人警備隊員の拳銃携行を基地外まで拡大するための話し合いが、日米で進められているとの疑念さえ浮かんでくる。
過去には日本人警備隊員が襲われて重傷を負い、拳銃を奪われた事件もあった。日本人警備隊員に危険を及ぼす可能性のある拳銃携行は基地の内外を問わず、改めるべきだ。
(2/28 9:48)