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【社会】自転車3人乗り禁止徹底 社会が後押しを 読者から多くの反発2008年2月28日 07時16分
幼児二人を前後に乗せた「自転車の三人乗り禁止を徹底」の記事(二月四日付)に読者から多くの反響があった。その大半が取り締まり強化への反発だった。子育てに奮闘中の親にとって、三人乗りの禁止徹底は一大事。切実な「読者の声」を紹介する。 (渡部穣) 「自転車がなければ、どうやって保育園に連れていったらいいのですか?」。ある読者からの手紙には怒りが込められていた。「保育園はどこも定員いっぱい。兄弟が一緒の保育園に入れず、別々の送迎先になると、なおさら自転車は必要。歩行者と自転車、自動車の安全な共存を図るため、もっと現場の声を聞いて対策を立ててください」 「規制の対象を間違えている」「三人乗り禁止は少子化対策や子育て支援に逆行している」「ガソリンの値上げより困る」「罰金覚悟で乗り続けます」といった激しい反発の声もあった。 先の記事に書いたように、自転車の三人乗りはもともと道路交通法で禁じられている。これまで警察が黙認するケースが多かったが、自転車事故の深刻な事態を受け、警察庁が今春にも「交通の方法に関する教則」に、危険な乗り方の禁止徹底を新たに盛り込むことになった。 では、時間節約のために、自転車の三人乗りを活用している親はどうしたらいいのか? 先の記事で、子ども二人を乗せても「自転車を押して歩けば違反にはならない」と“押し歩き”を提案したが、「かえって危険」「実情が分かっていない」など多数の反対意見が寄せられた。 「押し歩きをやったことありますか? はっきり言って無理。倒れます」「押し歩きだと全重量を腕だけで支えなくてはならず、重心が反対側に傾いてしまったら、もうどうしようもない」…。 実は、押し歩きのアイデアは、取材した複数の母親から教えてもらったものだ。「保育園に子どもを送り届けた後に自転車を通勤に使える」などと話され、「一石二鳥」と感じたのだが…。 街中などで多数の人から意見を聞いて回ったが、残念ながらこれといった妙案はなかった。 一方、消費生活アドバイザーで母親グループ「子育てグッズ&ライフ研究会」の河尻和佳子さんは、ある程度の距離に保育園がある場合、徒歩での送迎を勧める。 「私は毎日歩いて通園していますが、子どもも自然と体力がつき、あまり『疲れた』と言わなくなった。早起きが必要になりますが、街のいろんな発見を親子でしたり、なかなか面白いですよ」とその効果を話す。 今回寄せられた声は母親からだけだった。もっと父親の協力があれば、三人乗りをしなくていい保育園への送迎もより現実的になる。しかし、同研究会代表の宗沢美果さんは「出勤時間に間に合わせるため、早朝に家を出なければならない父親は多い。幼児期まではフレックスタイムを認めるなど、企業の協力が不可欠」と話す。 自転車の三人乗りの禁止徹底のためには、保育園の充実や、父親が協力できる体制づくりなど、社会全体の総合的な“後押し”が必要になる。 警察庁は「現状では三人乗りは危険で認められないが、複数の幼児を持つ保護者らの切実さは認識している。三人乗りでも安全に走行できる自転車ができないか、自転車業界とも協議中」としている。安全な自転車ができれば、規制緩和もありうるようだ。 (東京新聞)
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