親の虐待などで、家庭を出て施設で暮らす子供を支援する児童福祉法改正案の全容が、明らかになった。施設内での虐待には、児童間で起きる暴力の放置も含め、施設職員らに通告を義務付ける。都道府県はこれを受け、実態を毎年公表する。改正案には、こうした虐待の防止・対応策に加え、家庭で暮らせない子供を養育者が自宅で育てる新たな養育事業も盛り込み、厚生労働省は週明けにも、今国会へ提出し、成立を目指す。
密室で深刻な傷を子供にもたらす「施設内虐待」は、90年代に表面化。しかし、同法には家庭内虐待に関する規定しかなく、厚労省は昨年2月に有識者会合を設置、9月に専門委員会に格上げして議論を進めてきた。
改正案では、施設の職員ら発見者に都道府県や福祉事務所、児童相談所などへの通告を義務付け、子供本人も訴えられるとした。通告した職員らを解雇するといった不利益な扱いは禁じられる。通告を受けた都道府県は必要な場合、事実確認や子供の保護を図ったうえで、施設内虐待の状況や対応措置を、毎年公表する。
同法に盛り込む新たな養育事業は、自治体の委託を受けた人(養育者)が自宅で6人程度の子供を育てるもので、一般に「ファミリーホーム」と呼ばれる。保護の必要な子供を支援する「第三の受け皿」となる。養育者は都道府県による立ち入り検査の対象となる。子育てや施設での経験年数など要件を今後詰め、省令で定めたうえで助成対象とする。
さらに、中学卒業後の子供が就職で施設を出ると離職後に行き場を失うケースが多いことから、本人が申し込めば、都道府県が自立援助ホームへの入所を手当てする。【野倉恵】
毎日新聞 2008年2月27日 東京朝刊