空港管理会社への外資規制を盛り込んだ空港整備法改正案をめぐって政府、与党内の調整が難航している。
安全保障の観点から外資が国内空港を支配することを避けたい国土交通省の原案に対し、対日投資促進の妨げになるとの懸念から反対する声が強く、妥協点が見いだせないためだ。町村信孝官房長官は来週中に閣議決定する方針を示したが、法案修正を含めた難しい対応を迫られよう。
外資規制導入の検討は、成田国際空港会社(NAA)が二〇〇九年度にも完全民営化で上場されるのをにらんだ措置だ。
国交省が対応を急いだのは、昨年十月、既に上場している羽田空港の旅客ターミナルを運営する日本空港ビルデングの株式の約20%が、オーストラリア系投資ファンドに買われたのがきっかけだ。中東やロシアなどの政府系ファンドが、国際的に動きを活発化させていることへの危機感も後押しした。
改正原案は、成田、羽田、中部国際、関西の四基幹空港の管理会社を対象に、外資の出資比率を議決権のある株式の三分の一未満に制限し、重要案件で拒否権を行使できなくするという内容である。
国交省が外資規制を求める根拠は、安全保障上の懸念だ。大災害やテロ、ハイジャックなど有事に際し「利益優先の外資が経営権を握っていると、運営に支障が出かねない」と主張する。
これに対し、渡辺喜美金融担当相ら複数の閣僚や塩崎恭久元官房長官らは、政府が成長路線の柱に掲げる「対日投資促進に逆行する」と反発を強める。
確かに福田康夫首相も先月、ダボス会議で「市場開放努力を一層進める」と発言したばかりだ。外資規制によって「日本市場は閉鎖的」というイメージが定着すれば、外国人投資家の日本離れを促し、株式市場にも悪影響を及ぼしかねまい。
外資規制とからんで批判されているのが官僚の天下り問題だ。空港会社が国交省の重要な天下り先になっていることから、省益確保を狙って外資を排除しようとしているのではとみる向きもある。そうした疑念を晴らすためにも、国交省は規制に踏み込まなければならない理由について説明責任を果たすべきだ。
外資規制によらなくても「安全保障上の懸念」に対応する手はないのかどうか。もう一度、幅広い角度から検討してみる必要があるのではないか。資本市場をより開かれたものにするためにも、規制につながらない方向で議論すべきだろう。
政府は、指定暴力団組員が資金を得るための違法行為で他人に危害を加えた場合、上部団体の組長に損害賠償責任を負わせることなどを盛り込んだ暴力団対策法改正案を閣議決定し、国会に提出した。
暴力団活動の封じ込めを目指して暴対法が施行されたのは一九九二年。二〇〇四年の改正で、抗争に巻き込まれて一般市民が生命や財産に被害を受けた場合、簡単な立証で組長らに損害賠償責任が問える規定が新設された。なかなか届かなかった組織の頂点へ迫る道が開けた。
今回の改正は、抗争の巻き添え以外にも組長の責任範囲を拡大することで、被害者救済の促進と抗争や資金獲得の防止効果を高めるのが狙い。恐喝やみかじめ料の徴収行為についてもトップの責任が問えるようになる。損害賠償請求などを妨害する行為にも中止命令や防止命令が出せる。さらに組織の威力を示し、公共事業の入札参加を自治体などに働き掛ける行政対象暴力についても規制する。
後を絶たない暴力団の抗争や、資金獲得をめぐる悪質な行為が市民生活を脅かしている。〇七年版「警察白書」によると、行政対象暴力で警察などが受理した相談は近年二千件を超えている。昨年四月の長崎市長射殺事件も市に対する不当要求がきっかけとされるなど由々しき事態だ。
改正案は、さらなる前進といえよう。しかし、暴力団の資金獲得策は企業活動を装うなど巧妙化、不透明化が一段と進んでいる。資金源をこまめに閉ざしていくことが欠かせない。警察の強力な取り締まりとともに、暴力団活動と資金源へ厳しい視線を向け、「悪は絶対はびこらせない」との意識を新たに社会全体で取り組みを加速させたい。
(2008年2月28日掲載)