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LBOローン会計基準、証券会社に比べ銀行に有利ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)投資家の大きな心配の種になっているレバレッジドローン(低格付けあるいは格付けのない借り手を対象としたシンジケートローン)で損失が出る場合、危機を乗り切るためには証券会社より銀行のほうが有利と考えられる。 会計基準の特異性によって、JPモルガン・チェース(NYSE:JPM)などの銀行はそうしたローンによる損失を直ちに計上する必要がない。だがゴールドマン・サックス・グループ(NYSE:GS)などの証券会社は直ちに計上するよう義務づけられている。 レバレッジド・バイアウト(LBO、買収先企業の資産を担保とした借り入れによる買収)向けのローンは元来、銀行や証券会社が迅速にそうしたローンの債権を投資家に売却するために作られた。昨年8月に資本市場が凍りついた時、機関投資家は、売却できなくなったローン債権を数十億ドル相当抱えていることに気付いた。 金融各社は多くの場合、こうしたLBOローン債権の評価額を約5%引き下げざるを得ず、これが昨秋の損失につながった。LBOローン債権市場は再び困難に直面しており、ローン債権の価値はさらに下落している。下落幅は場合によっては10%またはそれ以上で、金融各社の損失がさらに膨らむ可能性がある。 このため一部の銀行は、保有しているローン債権の少なくとも一部を市場価格の変動から守ろうとしている。保有しているローン債権の分類を見直すことで、値洗いを避けることができる。一方、証券会社はそうしたローン債権について、時価で評価しなければならない。 これは、銀行が大規模なLBO向けローンによる損失を完全に回避できることを意味するのではない。だが、このところのさえない市場環境を考えると、どのような緩衝材でも歓迎される。 ただ、会計基準の特異性が銀行を有利にしているのと同時に、投資家に危険をもたらす恐れがあるとアナリストは警告している。銀行が直面するかもしれない打撃の大きさと範囲について、投資家が安心してしまう可能性があるからだ。 銀行と証券会社は、LBOローンへのエクスポージャーが2000億ドル近くに達している。オッペンハイマーのアナリスト、メレディス・ホイットニー氏は最近の調査リポートで、「LBOローンの市場価値がこのところ下落していることを考えると、100億−140億ドルの評価損が発生する可能性がある」との見積もりを示している。 銀行では、米シティグループ(NYSE:C)とJPモルガンのエクスポージャーが大きく、昨年末時点でシティは430億ドル、JPモルガンは264億ドルだった。証券会社では、ゴールドマンのエクスポージャーが最も大きく260億ドル、次いでリーマン・ブラザーズ・ホールディングス(NYSE:LEH)が238億ドルとなっている。 銀行と証券会社が同種のローン債権を保有していても影響の出方が極めて異なると考えられるという事実は、LBOローンにかかわる会計基準に大きな欠陥があることを浮き彫りにしていると一部のアナリストは感じている。証券会社は長年、銀行にもすべての金融資産を市場価格で評価するよう義務づけるべきだと主張している。 また、資本市場が停滞し時価の信頼性に疑問が生じていても、会計基準の違いから、すべてではなく一部の金融会社が、いわゆる時価を適用することによって直ちに多額の損失を計上することになる。 アナリストも、これはおかしいと思っている。クレディ・スイスの会計アナリスト、デビッド・ザイオン氏はローンを取り巻く問題についての最近の調査リポートで「債券投資と株式投資の会計基準が不必要に複雑だと感じる人は、ローン関連の会計基準を見たら目まいがするだろう」としている。 例えばJPモルガンは1月、保有している260億ドルのLBOローン債権のうち約50億ドル分の分類を見直したという。同社はその時のジェームズ・ダイモン最高経営責任者(CEO)の発言以外のコメントを避けている。同氏は当時、「現在の低迷している市場価格に基づくと、LBOローンの一部は長期保有する資産として素晴らしいものになる可能性があると考えたため、このように再分類した」と説明した。 より有利な会計基準を適用することも痛手を避けることになる。企業はLBOローン債権を「売却のための保有」とするか「投資のための保有」とするかにかかわらず、「満期まで保有」するものとして扱うことがある。売却目的で保有しているローン債権は、取得価格と時価のうち低いほうの価格を適用する。どのような損失でも発生した四半期に計上する。 だが投資目的で保有しているローン債権の価値は、市場価格の上がり下がりによって変化せず、取得価格がその価値となる。ただ、売却目的から投資目的に分類を変更した場合は、まず値洗いをする。 大きな利点は、投資目的で保有すれば価値の変動が小さくなることだ。一方、ゴールドマン、リーマン、モルガン・スタンレー(NYSE:MS)、メリルリンチ(NYSE:MER)などの証券会社は、保有しているすべての資産を値洗いする必要がある。したがって証券各社は直ちに損失を計上することになる。オッペンハイマーによると、証券会社によるLBOローン債権へのエクスポージャーは総額約910億ドル。 ただ、投資目的で保有しているローン債権の損失を銀行が完全に回避できるわけではない。ダイモン氏は同社の電話会見で「再分類したローン債権の値洗いはしないが、適切な貸倒引当金を積んでおく必要があり、関連する情報は十分に開示する」と語った。 投資目的で保有しているローン債権の価値が目減りしているかどうかを判断する際、銀行は、ローン主体の格付けに変化がないか、利払いが滞っていないか、延滞の恐れはないかに着目する。 アナリストは、銀行は必ずしも、現時点で市場で売却する場合の価格は考慮しなくてよいと考えている。市場の考え方を反映させると、現時点では多くの金融会社で多額の損失が生じる。したがって、信用の質だけに着目することが有利になると考えられる。 (2月27日付のHeard On The Streetより) 米DJ記事一覧
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