2008年02月17日
岡田斗司夫の「遺言」第三章
岡田斗司夫が自身の半生について4時間以上にわたり一人で喋りまくる、岡田信者必聴イベント、「岡田斗司夫の『遺言』」の「第三章」が先日開催されたので行ってきた。「遺言」なのに「第三章」なのは、一回で収まらなかったからだ。
第一章と第二章の自分なりのメモと感想はこちらとこちら。
無論、第一章からかかさず参加している私は、もう紛れもない信者の一人だ。ウヒョヒョヒョヒョヒョヒョ。
だからというわけではないが、シビアでスリリングな話が続く今回が一番面白かった。いつも通り、自分が面白かったことだけをメモとしてまとめることとする。括弧内は私の感想なのだが、だからといってそれ以外は岡田斗司夫の発言そのままというわけではないので、そのつもりで。
第一章と第二章の自分なりのメモと感想はこちらとこちら。
無論、第一章からかかさず参加している私は、もう紛れもない信者の一人だ。ウヒョヒョヒョヒョヒョヒョ。
だからというわけではないが、シビアでスリリングな話が続く今回が一番面白かった。いつも通り、自分が面白かったことだけをメモとしてまとめることとする。括弧内は私の感想なのだが、だからといってそれ以外は岡田斗司夫の発言そのままというわけではないので、そのつもりで。
最初に長めの雑談。
○ 前回、前々回のイベントについてブログ等にアップされた感想はしっかりチェックしているのだが、書き手の立ち位置が透けて見えて面白い。これが学生のレポートだったら高得点をつける。リンク集などはないのか(あるぞ↓)。
http://room666.blog49.fc2.com/blog-entry-1081.html
http://randal.blog91.fc2.com/blog-entry-306.html
○ 新装版「オタク学入門」が近いうちに出る。「オタク学入門」は10年以上前(1996年)に「オタクは素晴らしい!」ということを訴える為に様々なオタクのダークサイドに触れないまま書いた非常に政治的な本で、今回新装版を出すに当たってはその時代の記録という意味から書き直しも注釈入れ直しもしなかった。
オタク学入門
岡田 斗司夫

○ しかし、何か特典が欲しいので、豪華おまけとして収録する為、数日前に富野由悠季と対談を行った。だが、そのような出版背景を知らない富野監督は、対談の前日に「オタク学入門」を読んで烈火の如く大激怒。でも、対談は面白くなった。
○ もうすぐ「BSアニメ夜話」恐怖の三作品が放送される。「イデオン」は燃えた。「トップ」は全開だった。「今日からマ王!」は他の二つとは違う意味で辛かった。
ここから本題に。まずは「第二章」から時系列的にちょっと戻って、「王立宇宙軍」後のガイナックスは本当に貧乏だったという話から。
○ 色々な支払いが滞り、督促の電話に言い訳する毎日だった。また会社には資金がゼロというわけではなく、中途半端に何百万円とかあったので、それを支払いにあてるのか社員の給料にするのか悩む、という状況。
○ 見かねたバンダイの人が「アップルシード」OVA化の仕事をくれた。しかも、他の会社に外注して、中抜きしても構わない!という素晴らしい条件。後にも先にも最初から「中抜きOK!」と言われた仕事はこれだけだった。
アップルシード
勝生真沙子 坂口芳貞 沢田敏子

○ 中抜きをする礼儀というか倫理として、本当に中抜きだけに徹した。製作については何も言わず、試写会にすら行かなかった。
○ その結果、勿論デキは最悪。「あのガイナックスがアップルシードをアニメ化するなんて!」と興奮したアニメファンは皆ガッカリ。買った人は災難だったろう。罪悪感でちょっと悩んだが、アニメ業界はそのようにどんなヒドイ作品にでもお布施のように金を出すありがたいアニメファンによって支えられているという一面がある。赤井孝美に「岡田さん、アニメファンだってたまには勉強した方が良いんですよ!」と慰められる。
○ 初期ガイナックスはいわば「カウンセリング技法」というもので作品を作っていた。これは監督を初めとする中心的なスタッフと「何を作りたいのか」「何が疑問なのか」「何を作るべきなのか」等々についてカウンセリング的な問答を繰り返し、答えを引き出すという方法。「例えばそれはこういうことだよね?」と挙げた具体例が違っていても、それが補助線になる。未だにこういう作り方でやっていると思う(そういや「エヴァンゲリオン」がカウンセリング・アニメと呼ばれていた時期もありましたな)。
○ 「王立宇宙軍」の後、どのような作品を作るべきか非常に悩んだ。カウンセリングの相手となる山賀くんはカラッポだった。
○ 今はもう悩まない。悩む→思考停止→更に悩む……という負のスパイラルに気がついた。悩みをこじらせると生産性が低下する。「解決不能」のラベルをつけておくだけでいい。
○ あの時、僕がやるべきだったのは、今思えば、カウンセリングの相手を庵野くんに切り替えることだった。
○ 庵野秀明には人の10倍才能があるが、何かが人の1/10しかない。
監督不行届 (Feelコミックス)
安野 モヨコ

○ しかし、庵野秀明・山賀博之・赤井孝美の三人の間にある人間関係を壊したくかった。大阪芸大出身の三人の中でも、庵野くんは年齢的に一番上。一方で山賀くんは「王立」で監督を務め、「俺は監督」という自負がある。赤井くんは戦略家で、勝てる戦しかやらない。三人の間には微妙な力関係があった。
アオイホノオ 1 (1) (ヤングサンデーコミックス)
島本 和彦

○ しかし、やはり今思えば、あの時は庵野くんに切り替えるべきだった。例えば庵野くんは「BASTARD!!」で敵として出てくる主天使がウルトラマンのパロディだったりする描写にいたく感動していた。庵野くんにカウンセリング技法であたれば、エヴァじゃないけどそれに類するものを引き出せたかもしれないのに。僕が「頼む」と言えばやってくれたことは明白で、庵野くんには悪いことをした。
BASTARD 14―暗黒の破壊神 (14)
萩原 一至

○ でも「エヴァンゲリオン」の原作が「BASTARD!!」であるなんて、一見しただけでは分からないよな。
○ 「王立」製作時は広いスタジオで作業していたが、2年ほど広い場所が欲しいという製作会社があったので、不動産屋に内緒で交換した。家賃はかからないし、打ち合わせには便利だしと最適な環境に。しかし、社長の僕が借金の言い訳電話ばかりしているので、皆すぐに出社しなくなった。
○ その頃山賀くんと打ち合わせしていた企画の一つに「トレスコ」というものがある。「ロトスコープ(初期ディズニーみたいなフィルムトレースのアニメーション)」「プレスコアリング(アフレコの逆)」「シネマスコープ(1:2.35)」の三つの「スコ」という意味。全てが絵に見える病気になった女の子が主人公で、その娘の主観映像をロトスコープのリアルな絵で描く。その娘の心理状態に応じて、絵柄がカートゥーン風になったり、ロボットアニメ調になったりする。丹波哲郎をキャスティングして、ロトスコープでもの凄いリアルな丹波哲郎が出てくる。
○ 当時は、「王立宇宙軍」を作った俺達は次にもっと凄いものを作らなければならないという呪縛があった。富野流にいえば重力に魂をとらわれていたというか、自分の過去作品にひっぱられていた。
○ このような、ある程度成功したクリエイターにつきまとう呪縛は普遍的なものである。例えば、河森正治には、「マクロス」を作った俺だから次はもっと凄いものを…という気持ちがあったので、「マクロスプラス」まで自分の企画をものにできていない。富野由悠季は「ガンダム」を作ってしまったから、次に(もっとエスカレートした)「イデオン」を作ってしまった。宮崎駿にさえ「ナウシカ」を作った俺だから……、という気持ちがあった。
○ 結局、次回作としては「トップをねらえ!」のようにある程度肩の力を抜けるものでないと駄目だった。
○ 作品を作ることは一種の「呪い」であるので、僕はニ作品でそれから解放されてラッキーであるともいえる。
この後、一旦休憩が入るも、まだまだ熱いトークは続いたのだが、長くなるので次回に続きます。
○ 前回、前々回のイベントについてブログ等にアップされた感想はしっかりチェックしているのだが、書き手の立ち位置が透けて見えて面白い。これが学生のレポートだったら高得点をつける。リンク集などはないのか(あるぞ↓)。
http://room666.blog49.fc2.com/blog-entry-1081.html
http://randal.blog91.fc2.com/blog-entry-306.html
○ 新装版「オタク学入門」が近いうちに出る。「オタク学入門」は10年以上前(1996年)に「オタクは素晴らしい!」ということを訴える為に様々なオタクのダークサイドに触れないまま書いた非常に政治的な本で、今回新装版を出すに当たってはその時代の記録という意味から書き直しも注釈入れ直しもしなかった。
オタク学入門
岡田 斗司夫
○ しかし、何か特典が欲しいので、豪華おまけとして収録する為、数日前に富野由悠季と対談を行った。だが、そのような出版背景を知らない富野監督は、対談の前日に「オタク学入門」を読んで烈火の如く大激怒。でも、対談は面白くなった。
○ もうすぐ「BSアニメ夜話」恐怖の三作品が放送される。「イデオン」は燃えた。「トップ」は全開だった。「今日からマ王!」は他の二つとは違う意味で辛かった。
ここから本題に。まずは「第二章」から時系列的にちょっと戻って、「王立宇宙軍」後のガイナックスは本当に貧乏だったという話から。
○ 色々な支払いが滞り、督促の電話に言い訳する毎日だった。また会社には資金がゼロというわけではなく、中途半端に何百万円とかあったので、それを支払いにあてるのか社員の給料にするのか悩む、という状況。
○ 見かねたバンダイの人が「アップルシード」OVA化の仕事をくれた。しかも、他の会社に外注して、中抜きしても構わない!という素晴らしい条件。後にも先にも最初から「中抜きOK!」と言われた仕事はこれだけだった。
アップルシード
勝生真沙子 坂口芳貞 沢田敏子
○ 中抜きをする礼儀というか倫理として、本当に中抜きだけに徹した。製作については何も言わず、試写会にすら行かなかった。
○ その結果、勿論デキは最悪。「あのガイナックスがアップルシードをアニメ化するなんて!」と興奮したアニメファンは皆ガッカリ。買った人は災難だったろう。罪悪感でちょっと悩んだが、アニメ業界はそのようにどんなヒドイ作品にでもお布施のように金を出すありがたいアニメファンによって支えられているという一面がある。赤井孝美に「岡田さん、アニメファンだってたまには勉強した方が良いんですよ!」と慰められる。
○ 初期ガイナックスはいわば「カウンセリング技法」というもので作品を作っていた。これは監督を初めとする中心的なスタッフと「何を作りたいのか」「何が疑問なのか」「何を作るべきなのか」等々についてカウンセリング的な問答を繰り返し、答えを引き出すという方法。「例えばそれはこういうことだよね?」と挙げた具体例が違っていても、それが補助線になる。未だにこういう作り方でやっていると思う(そういや「エヴァンゲリオン」がカウンセリング・アニメと呼ばれていた時期もありましたな)。
○ 「王立宇宙軍」の後、どのような作品を作るべきか非常に悩んだ。カウンセリングの相手となる山賀くんはカラッポだった。
○ 今はもう悩まない。悩む→思考停止→更に悩む……という負のスパイラルに気がついた。悩みをこじらせると生産性が低下する。「解決不能」のラベルをつけておくだけでいい。
○ あの時、僕がやるべきだったのは、今思えば、カウンセリングの相手を庵野くんに切り替えることだった。
○ 庵野秀明には人の10倍才能があるが、何かが人の1/10しかない。
監督不行届 (Feelコミックス)
安野 モヨコ
○ しかし、庵野秀明・山賀博之・赤井孝美の三人の間にある人間関係を壊したくかった。大阪芸大出身の三人の中でも、庵野くんは年齢的に一番上。一方で山賀くんは「王立」で監督を務め、「俺は監督」という自負がある。赤井くんは戦略家で、勝てる戦しかやらない。三人の間には微妙な力関係があった。
アオイホノオ 1 (1) (ヤングサンデーコミックス)
島本 和彦
○ しかし、やはり今思えば、あの時は庵野くんに切り替えるべきだった。例えば庵野くんは「BASTARD!!」で敵として出てくる主天使がウルトラマンのパロディだったりする描写にいたく感動していた。庵野くんにカウンセリング技法であたれば、エヴァじゃないけどそれに類するものを引き出せたかもしれないのに。僕が「頼む」と言えばやってくれたことは明白で、庵野くんには悪いことをした。
BASTARD 14―暗黒の破壊神 (14)
萩原 一至
○ でも「エヴァンゲリオン」の原作が「BASTARD!!」であるなんて、一見しただけでは分からないよな。
○ 「王立」製作時は広いスタジオで作業していたが、2年ほど広い場所が欲しいという製作会社があったので、不動産屋に内緒で交換した。家賃はかからないし、打ち合わせには便利だしと最適な環境に。しかし、社長の僕が借金の言い訳電話ばかりしているので、皆すぐに出社しなくなった。
○ その頃山賀くんと打ち合わせしていた企画の一つに「トレスコ」というものがある。「ロトスコープ(初期ディズニーみたいなフィルムトレースのアニメーション)」「プレスコアリング(アフレコの逆)」「シネマスコープ(1:2.35)」の三つの「スコ」という意味。全てが絵に見える病気になった女の子が主人公で、その娘の主観映像をロトスコープのリアルな絵で描く。その娘の心理状態に応じて、絵柄がカートゥーン風になったり、ロボットアニメ調になったりする。丹波哲郎をキャスティングして、ロトスコープでもの凄いリアルな丹波哲郎が出てくる。
○ 当時は、「王立宇宙軍」を作った俺達は次にもっと凄いものを作らなければならないという呪縛があった。富野流にいえば重力に魂をとらわれていたというか、自分の過去作品にひっぱられていた。
○ このような、ある程度成功したクリエイターにつきまとう呪縛は普遍的なものである。例えば、河森正治には、「マクロス」を作った俺だから次はもっと凄いものを…という気持ちがあったので、「マクロスプラス」まで自分の企画をものにできていない。富野由悠季は「ガンダム」を作ってしまったから、次に(もっとエスカレートした)「イデオン」を作ってしまった。宮崎駿にさえ「ナウシカ」を作った俺だから……、という気持ちがあった。
○ 結局、次回作としては「トップをねらえ!」のようにある程度肩の力を抜けるものでないと駄目だった。
○ 作品を作ることは一種の「呪い」であるので、僕はニ作品でそれから解放されてラッキーであるともいえる。
この後、一旦休憩が入るも、まだまだ熱いトークは続いたのだが、長くなるので次回に続きます。
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(08/02/05 02:36 レコーディング・ダイエットのススメ)
『遺言』第三章
「岡田斗司夫の関連映像作品のテーマ語り&記憶を語り継ぎましょうイベンヮ..
岡田斗司夫の『遺言』第三章 2月12日開催【「エヴァ板とガイナスレ用だよ」Blog】at 2008年02月18日 02:19
●フロイライン綾波に包帯バージョン発売?
http://akibahobby-b.sakura.ne.jp/image/20080224/w022.html
腕と頭だけ差し替えなら、制服バージョンが出るときに??.
フロイライン綾波に包帯バージョン発売?【エヴァ緊急ニュース】at 2008年02月25日 03:20