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『John Pawson: Themes and Projects』
K. Michael Hays, Maxwell L. Anderson, Toshiko Mori, John Pawson: Themes and Projects,
Phaidon Press, 2002.
 
『a+t: tony fretton architects』
Javier Mozas y Aurora Fernández Per,
a+t: Tony Fretton Architects
,
a+t ediciones
『Pierre Koenig』
James Steel & David Jenkins,
Pierre Koenig
,
Phaidon Press, 2002.
『Julius Shulman: Architecture and its photography』
Julius Shulman (Photographer), Peter Gossel (Editor),
Julius Shulman: Architecutre and its Photography
,
TASCHEN, 1998.
『Yona Friedman』
Sabine Lebesque, Helene Fentener Van Vlissingen,
Yona Friedman: Structures Serving the Unpredictable
,
NAI Publishers, 1999.
イギリスの建築家というと、すぐにノーマン・フォスターやリチャード・ロジャースの名前が挙げられるが、それに続く世代の建築家というのは、あまりよく知られていない。しかし、これはイギリスに限ったことではなく、世界のトップ建築家の顔ぶれというのは、ここ10年、20年さほど変わっておらず、どの国にあっても現在どのような新しいムーブメントが起きているかはなかなか見えてこない。日本でも一昔前と違ってある世代を代表する建築家が何人かというのではなく、今の30歳代くらいのいわゆる若手とされる建築家で建築雑誌等に登場するものは何十人という単位でいる。同様に各国でも若手とされる建築家が数多くいて多様な活動をしているため、その全体を把握することは難しい。


そのように、イギリスにおいても様々な試みをする建築家が出てきているわけだが、その中にシンプルながら質の高い空間を志向している建築家が何人かいるようだ。ジョン・ポーソン(この連載の4回目で彼の本を紹介している。ちなみにその後同じPHAIDON社から『John Pawson: Themes and Projects』という作品集も昨年出版されている。)は日本でも既になじみが深いといって差し支えないかと思うが、その他にもカルソ・セント・ジョンやデイヴィド・アジャイは簡素ながら豊かな空間を実現している。ここに作品集『a+t: tony fretton architects』を紹介するトニー・フレットンもそのような建築家の一人であり、写真からも彼の建築が限られた要素を注意深くデザインしている様子がよくわかる。シンプルではあるが、いわゆるミニマリズムと呼ぶときの論理性や硬い幾何学などからは遠く、もっと自由な平面や開口を持つ。斜めに振られた壁や開口部からさす光など、微妙な操作が施され、そうしたデリケートな振る舞いが空間をユニークなものとしている。'98年にAAスクールでの展覧会に合わせて小さなカタログが作られたことがあるが、まとまった作品集はここで紹介するものが初めてである。よってその活動が広く知られるようになって来たのも最近といって差し支えないと思われるが、彼は'45年生まれで実はもうすぐ60歳とまだ若いわけでは決してない。20年ほど前に自分の設計事務所を作った後、'86年に完成したリッソン・ギャラリーで注目を浴びるが、その後の歩みは緩やかで、この作品集に掲載された実現した作品は10に満たない。ますますの活動を期待するとともに、今までのようにゆっくりじっくりと良質の建築を作り続けて欲しいものだと思う。ジョン・ポーソンは、売れっ子となり、多作になるにつれてその空間が薄味になっているように感じられるので、その同じてつは踏んで欲しくないと願っている。

ケース・スタディ・ハウスのファンは多いであろうが、そのなかでももっともフォトジェニックな住宅no.22の建築家ピエール・コーニッグの全貌を紹介する本がPHAIDON社の『Pierre Koenig』である。彼の作品は、ケース・スタディ・ハウスの2件以外はほとんど知られていないが、この本で紹介されている30近くの住宅の中にも興味深いものがある。また、ケース・スタディ・ハウスの当時撮られた写真で印象的なものはすべてジュリウス・シュルマンによるものだが、この建築カメラマンの長期に渡って撮られた建築写真を一冊にまとめたものが割と手軽な価格で手に入る。Taschen社から出ている『Julius Shulman: Architecture and its photography』がそれで、この本を見ると彼はケース・スタディ・ハウスやノイトラといったフィフ・ティーズだけではなく、フランク・ロイド・ライト、ルドルフ・シンドラーから、ルイス・カーン、初期のフランク・O・ゲーリーまで60年近くにわたってアメリカ西海岸の建築を撮り続けた巨匠であることがよくわかる。(カリフォルニアの二川幸夫といえばイメージが涌くであろうか。)イントロダクションはゲーリーによって書かれ、ついでながらシュルマンが撮ったゲーリーが50年代に設計したノイトラ風の住宅の写真も興味深い。まさにシュルマンはアメリカ西海岸の建築の歴史的証人であったといえよう。

ハンガリー系フランス人の建築家ヨナ・フリードマンは50年代、60年代、メタボリズムやアーキグラムにシンクロするように、空想的な立体都市のドローイングを製作し注目を浴びるが、その後はあまり表舞台に出てこなかった。今年80歳になるこのフリードマンは、近年横浜ビエンナーレや上海ビエンナーレに招待されるなど再評価が進み、このNAi Publisherから出版された『Yona Friedman』は、彼の50年以上に渡る広範な探求の成果をまとめた初めての本である。セドリック・プライスの作品集も昨年一冊(磯崎新の「建築の解体」のセドリック・プライス論が英訳されて掲載されているという)今年一冊出版され、彼らのような空想的なメガ・ストラクチャーのヴィジョンが、今後ますます注目されるということであろうか。東京は昨今大きな変貌を遂げながらも、建築家はそこに何のヴィジョンも示せずにいるが、フリードマンやプライスから、今なにを学べるのであろうか。

[いまむら そうへい・建築家]

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今村創平
l○┼l net.2003.12  ミース・ファン・デル・ローエを知っていますか?[1]
2003.11  追悼セドリック・プライス 聖なる酔っ払いの伝説
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2003.02  住宅の平面は自由か?
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2002.11  ラディカル・カップルズ
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2002.09  家具デザインのお奨め本
2002.08  知られざるしかし重要な建築家

大島哲蔵
2002.06  デザイン関連書の新刊より
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2002.03  2月の少し寒いロンドンから
2002.02  スペイン建築界と共に歩んだGG社
2002.01  オランダ建築界の世界戦略
2001.12  工学書と芸術書のうまいミキシング
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2001.08-09[2]  出版活動が状況をリードする余地
2001.08-09[1]  期待が集まるエレクタ社

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