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航海長聴取は問題なのか (1/2ページ)

2008.2.27 22:18

 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、防衛省が、海上保安庁の捜査前にあたごの当直士官だった航海長をヘリコプターで省内に呼び、事故に関する聴取を行っていたことを一部のメディアや政治家が問題視している。だが、組織、とりわけ軍事組織が、早い段階で状況把握することは鉄則である。今後、事故後の対応をめぐり、一方では「情報公開の遅れ」を批判されている防衛省・自衛隊が、いかなる初動態勢を整備すべきなのか、二律背反の“宿題”を突きつけられた格好だ。   (野口裕之)

 防衛省が航海長をヘリで東京都新宿区の省内に呼んだのは、事故から約6時間後の19日午前10時すぎ。約1時間にわたり聴取し、再びヘリであたごに戻した。

 艦橋において、事故前の態勢を掌握していた前任の当直責任者である当直士官に出頭を命じたのは、組織である以上、自然である。しかも、この当直士官はたまたま、航海長であった。「航行、信号、見張り、操舵(そうだ)、気象およびこれらに係る物件の整備に関する業務を所掌」(自衛艦乗員服務規則)する航海長の責任・専門性を考えれば、その人選は、二重の意味で適正であった。艦長は艦(ふね)から絶対に離れてはならないし、ナンバー2の副長は、事故前の艦内事情に当直士官=航海長ほど精通していないためだ。

 医療事故でも、警察当局の捜査とは別に、病院側が担当の医師・看護師らに事情を聴く。隠蔽(いんぺい)するための「口封じ」を目的とした悪質な場合もあるだろうが、通常は組織としての対応・対策を決定するために行われる。例えば、新聞記者が交通事故を起こせば、新聞社のしかるべき幹部が、本人に状況を確認しようと努力するはずだ。

 航海長への聴取が問題となることは、日本が「普通の国」でないことに起因する。実はこちらの方が格段に深刻だ。海上事故に関して、自衛隊には裁判権が与えられておらず、とりわけ民間との事故では事実上、海保に捜査権を委ねることが慣例化しているからだ。

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