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千葉都市モノレール、延伸是か非か

2008年02月26日

 開業20年の千葉都市モノレール――事業主体の千葉市は、さらに延伸を進める計画だが、財政難のなか、176億円以上の資金投入が見込まれる延伸の是非については議論もある。厳しい財政状況のあおりを受け、モノレールの延伸はどうなるのか。(石平道典)

 市内で16日、「モノレール延伸について」と題した討論会があった。主催したのは、市民有志がつくる「モノレールの未来を考える会」。約150人が集まった。

 「財政難の中、これだけのお金をかけて延伸する理由がわからない」
 参加者からは計画を疑問視する声が相次いだ。

 市が延伸計画を進めているのは「県庁前―市立青葉病院前(仮称)」の約2キロ。同区間は病院や、文化会館など公共施設が集まり、「モノレール利用者の増加が期待される」(市都市交通課)という。

 市の説明に対し、参加者からは「バスの本数が多く、それで十分」「税金は福祉や教育に優先的に使ってほしい」などと反論が出た。一方、「もっと人口の多い所に延ばすべきだ」との意見もあった。

 討論会を企画した宮川伸さんは「基本的にはモノレールはあった方がいい。だが、厳しい財政の中で本当に延伸が必要なのか、市民がきちんと考えるべき時期では」と話した。

 モノレールは当初、循環するはずだった。

 昭和40年代、千葉市は首都圏のベッドタウンとして急激に発展した。道路整備が追いつかず、わずか10キロの距離をバスで1時間以上と、交通渋滞が限界に達していた。

 市は76年に「モノレールマスタープラン」を策定。81年に県と市が共同で事業着手し、88年に開業した。現行ルートは、千葉みなと―県庁前、千葉―千城台の2路線、計15・2キロが走る。

 マスタープランルートは、市内を循環させるなど総延長40キロに延伸する計画を描いていた=同。だが、当初10万人以上と見込んだ1日平均乗客数は06年度で約4万4500人。想定が「100万都市」だったため、少子高齢化の中で現状と合わなくなってきた。

 市は昨年11月、「新しい交通政策のあり方を探る必要がある」(市企画課)としてプランを白紙に戻した。循環計画を断念し、県庁前からの延伸に絞ることにした。

だが、延伸計画も財政難で足踏みしている。市は昨年11月、第2次5カ年計画(06〜10年度)を見直し、事業費を当初計画よりも約3割、1237億円削減することを決定。モノレールの延伸部分の開業予定を16年度に2年先送りした。

 延伸には176億円(うち41億円は会社側の事業費)以上がかかるとするが、用地取得のめども立っていない。

 それでも、なぜ延伸なのか?

 現在の千葉―県庁前=同=は、1日の利用者が千人以下の赤字区間だ。だが、市は、延伸によって約8800人が利用すると見込んでいる。

 モノレールは開業時の初期投資がかさみ、苦しい経営が続いてきた。06年に県が撤退し、市の単独事業で再建中だが、マスタープランのように予想を見誤れば再び経営を圧迫しかねない。

 有識者でつくる「千葉都市モノレール評価・助言委員会」は04年、延伸には経営上のリスクがある上、バス輸送で代替できるなどとして、計画の廃止を結論づけている。

 同会委員長を務めた東京大学の大西隆教授(都市環境システム)は「少子高齢化や人口減少の進展を見ながら、延伸をやめるのか、それとも税金で支えるのか、決断が迫られるだろう」と話す。

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