ここから本文エリア 「反対」後生へ生かせ2008年02月27日
九州新幹線西九州(長崎)ルート建設問題は、佐賀、長崎両県とJR、さらには政府・与党によって、沿線自治体の不同意などお構いなしに着工への布石が矢継ぎ早に打たれ、江北町ら沿線市町で反対派の置かれた状況は「万事休す」に等しい。それでもなお反対を唱え続け、今回の町長選でも新幹線容認の対立候補を抑えて5選を果たした田中源一町長。周りからは荒唐無稽(こう・とう・む・けい)にさえ映るその言説は、「透徹した歴史観」に裏打ちされていた。(村田悟、市川雄輝) ――今回の民意はどういうものか? 新幹線は来ない方がよい、という気持ち。さらに言うなら、国や県との関係は大切だが、良いこと・悪いことは自分たちが選別して町を守るんだという気持ちだ。 ――具体的には? 沿線市町を頭越しにした3者合意への怒りや、新幹線は無駄な公共事業なのに、という怒りがある。新幹線より福祉や教育に金を使うべきではないかと。県や国は地元の意思をくんで県政や国政に反映する、というのが、あるべき民主主義の姿だ。 ――反対し続けてこれまでに得たものは? 経営分離せずJRが走ることになったのは大きな果実だ。よその並行在来線では地元負担があるが、ここはない。地元負担なしにしないと沿線自治体の同意を得られぬほど、費用対効果が小さい新幹線だからだと思う。 ――反対し続けて今後何を得られると思うか? 国や県から得られるものはないかもしれない。だが、我慢すべきは我慢して、自分たちの町は自分たちでつくるんだという町民の結束がある。 ――県による地域振興策など、失うものも大きいという批判もあるが? 何年かはペナルティーがあるかもしれないが、町民も覚悟の上だ。ここで反対しておかないと、将来後悔すると思った。 ――当面、県と話し合うべき課題は? 子育てや福祉の支援など、県政への注文はあろうが、町だけのために協力して欲しいことは何もない。県が管理する道路の推進や延伸は地元県議がやってくれる。県議も自身の選挙があるから、県の仕事をとって来なきゃという気持ちも強い。 ――開業後の踏切や騒音問題で「反対するからこそ国やJRにモノが言える」と言っていたが? それは新幹線が通ってからの話だ。10年先、駅に止まらずスピードを上げたまま新幹線が通り過ぎて、騒音や踏切の危険が問題として浮上した時、「町は反対したのに無理やり通したのだから、この迷惑を何とかしてくれ」と後世の人が言えるようにしておかねば。その歴史の始まりを今回の選挙でつくれた。 ――国が着工を認可しても反対する意味は? 着工が決まっても、政権だってどう代わるか分からない。今年中に衆院選があって政権交代があれば、長崎新幹線不要論も出てくると思う。今すぐに民主党を応援するというわけではないが、意見の違う人はどんどん戦うべきだ。時々、政権が代わる二大政党制はいいと思う。政権交代に期待する国民も増えている。 ――新幹線を通して見えた古川県政は、今までの県政とは違うか? 最初から結論ありきで、理屈をいろいろつけて、ねじ伏せるんだ、という風に見える。これまでの知事は、有権者の声を案外大事にした面はあったと思う。 マイタウン佐賀
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