憲法を歩く 施行60年
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【社会】人気殺到『日暮里・舎人ライナー』 ラッシュ時、乗れる? 来月30日に開業2008年2月23日 夕刊 割安料金で人気沸騰か−。鉄道の空白地帯だった東京都足立区西部を南北に走る新交通「日暮里・舎人ライナー」の開業を三月三十日に控え、地元では「朝のラッシュ時は乗客の積み残しが出るのでは」と心配する声が上がっている。従来のバスや鉄道を利用するのに比べ料金が割安で、都心へ向かう上り線終点近くまで主要路線との連絡がなく、「途中駅で降りる人がほとんどいない」と推測されるためだ。運営する東京都交通局は「ラッシュ時は五分間隔の運転。輸送力に問題はない」と断言するのだが−。 (社会部・藤原哲也) 足立区西部の舎人地区はバスが唯一の公共交通で、これまで朝の時間帯はJR山手線日暮里駅まで一時間もかかっていた。バスは三分間隔でも停留所で乗客の積み残しが出る状態で、新ライナー開通は混雑解消に向けた期待の星だ。 新ライナーは五両編成で定員約三百人。現在のバスの輸送能力を大きく上回るが、従来のバスと鉄道を利用した場合より運賃が割安のため、地元から「乗客が殺到する」と不安が出始めた。 例えば、始発駅「見沼代親水公園」から東京駅に出る場合、新ライナーとJR山手線を利用すると、運賃は四百七十円、約三十分で到着する。現在は、始発駅近くの「舎人二ツ橋」バス停から東武バス、東武伊勢崎線、JR常磐線、京浜東北線と乗り継いで五百八十円、約一時間もかかっている。地元では「乗り換えが少なく所要時間も半分になって、さらに安い」などと評判だ。足立区の担当者は「同じ新交通でも臨海部の『ゆりかもめ』(大人百八十円−三百七十円)より安いのはインパクトがある」と説明する。 着工前の一九九五年、都は新ライナーの一日のの利用者を十万人と予測した。都が出資する公共交通の赤字が目立ったことから、二〇〇三年には五万九千人に下方修正。これに基づいて、新ライナーの車両編成などが決まった。 見沼代親水公園駅近くに住む農業大熊久三郎さん(60)は「埼玉県側からの乗客も一気に流れ込む」と話す。 都は一日五万九千人の利用者で年間約五十億円の運賃収入があり、採算ラインは確保できると説明。「バスに比べ乗降の時間が短縮でき、輸送能力に問題はない」と積み残し発生を否定する。区の担当者は「利用客が多いのはいいが、積み残しはないと信じるしかない」と祈る毎日だ。 <日暮里・舎人ライナー> 日暮里(荒川区)と見沼代親水公園(足立区)間の13駅(9・7キロ)を20分で結ぶ新交通システム。1997年に着工し、都が約1300億円を投入して建設した。計画当初は地下鉄での整備案もあったが、建設費の問題や採算性から主要道路の上部スペースを使って高架専用軌道上をゴムタイヤで走る新交通システムに変更された。全自動無人運転で運行する臨海部の「ゆりかもめ」と同じタイプ。運賃は大人で160−320円。
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