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記者のひとりごと:悪くなんかない /東京

 「自分がいけなかったのかとも思った」

 東京福祉大の前総長による強姦(ごうかん)未遂事件で、被害者の一人で元職員の女性は、取材に対し当時を語った。旅行の土産を渡す名目で総長室に呼ばれ、奥の寝室に連れ込まれて無理やりキスされた。

 相手は、職員に対し絶対的な権力を持っていた。それでも、断れたのではないか。避けられたのではないか。被害者のはずなのに自責の念にとらわれ、身内にもすべてを話せなかった。

 私自身、一歩間違えばという場面に出くわした経験はある。幸か不幸か、告訴を考える事態まではないが、思い出すと腹立たしく悔しい。同時に、自分に隙(すき)があったのかと自問してしまう。

 女性は前総長の逮捕を機に、やっと「自分は悪くなかった」と思えるようになった。記事で被害を知った元同僚からは「気付いてあげられなくてごめん」と言われたという。記事が再び女性を傷つけるのではと迷った私も、少し救われた。被害者の傷を消すことはできなくても、記憶に克(か)てる日が来てほしい。【五味香織】

毎日新聞 2008年2月26日

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