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'Stay hungry. Stay foolish.'

Apple , THINK , YouTube

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スティーブ・ジョブズ(もちろん、Apple の)が、6月12日日曜日、スタンフォード大学の卒業式で来賓としてスピーチした。そのスピーチが大いに話題になっているようだ。mojix さんの「ZOPEジャンキー日記」のエントリーで知ったのだ。

彼の今まで人生を概括しながら、若い人達への一つのはなむけの言葉にする、いつもながら上手な話の組立てに感心する。しかし、今回の話、自分にとって同時代(彼よりはずっと年上の私ではあるが)の話として、感銘したのである。


スタンフォード大学のニュースサイトに、スピーチ全文(英文)、ムービーがある。
● Steve Jobs to 2005 graduates: 'Stay hungry, stay foolish'

PLANet blog. の「スティーブ・ジョブスのスピーチ」に、その全文の日本語訳がある。
その一部、最初と最後をお借りして、のせてみた。

世界有数の最高学府を卒業される皆さんと、本日こうして晴れの門出に同席でき大変光栄です。 実を言うと私は大学を出たことがないので、これが今までで最も大学卒業に近い経験ということになります。

本日は皆さんに私自身の人生から得たストーリーを3つ紹介します。それだけです。どうってことないですよね、

たった3つです。最初の話は、点と点を繋ぐというお話です。

私はリード大学を半年で退学しました。が、本当にやめてしまうまで18ヶ月かそこらはまだ大学に居残って授業を聴講していました。じゃあ、なぜ辞めたんだ?ということになるんですけども、それは私が生まれる前の話に遡ります。

私の生みの母親は若い未婚の院生で、私のことは生まれたらすぐ養子に出すと決めていました。...................




...................私が若い頃、"The Whole Earth Catalog(全地球カタログ)"というとんでもない出版物があって、同世代の間ではバイブルの一つになっていました。

それはスチュアート・ブランドという男がここからそう遠くないメンローパークで製作したもので、彼の詩的なタッチが誌面を実に生き生きしたものに仕上げていました。時代は60年代後半。パーソナルコンピュータやデスクトップ印刷がまだ普及する前の話ですから、媒体は全てタイプライターとはさみ、ポラロイドカメラで作っていた。
だけど、それはまるでグーグルが出る35年前の時代に遡って出されたグーグルのペーパーバック版とも言うべきもので、理想に輝き、使えるツールと偉大な概念がそれこそページの端から溢れ返っている、そんな印刷物でした。

スチュアートと彼のチームはこの”The Whole Earth Catalog”の発行を何度か重ね、コースを一通り走り切ってしまうと最終号を出した。それが70年代半ば。私はちょうど今の君たちと同じ年頃でした。

最終号の背表紙には、まだ朝早い田舎道の写真が1枚ありました。君が冒険の好きなタイプならヒッチハイクの途上で一度は出会う、そんな田舎道の写真です。写真の下にはこんな言葉が書かれていました。
「Stay hungry. Stay foolish.(ハングリーであれ。馬鹿であれ)」。
それが断筆する彼らが最後に残した、お別れのメッセージでした。「Stay hungry, stay foolish.」

それからというもの私は常に自分自身そうありたいと願い続けてきた。そして今、卒業して新たな人生に踏み出す君たちに、それを願って止みません。

Stay hungry, stay foolish.

ご清聴ありがとうございました。

PLANet blog.2005年07月26日付けエントリーより

ジョブズのスピーチに、Whole Earth Catalog の話がでてくるとは思わなかったな。それも「Stay hungry. Stay foolish.」を、このスピーチの結びにすえるなんて、思いもしなかったことだ。

大事な言葉は、ちゃんと残るべきところに残っているんだ、よき時代の記憶が、と思った。

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ジョブズが Whole Earth Catalog の最終号といっているのは、この1974年9月に出た Whole Earth Epilog のことだ。

その裏表紙には、彼の言ったとおりの写真があり、その言葉がある。

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Steve Jobs Stanford Commencement Speech 2005


追記 051201

iCon: Steve Jobs, The Greatest Second Act In The History Of Business の邦訳「スティーブ・ジョブズー偶像復活」が出版された。原書の出版は今年の5月だから、スタンフォードの学生はこの本を読んでいて、この話を聞いたのであろう。

この本の翻訳者、井口耕二氏のブログ「Buckeye the Translator」の11月3日付けのエントリーに、このジョブズのスピーチの和訳についてのご意見がある。


Posted by 秋山東一 @ August 3, 2005 08:03 AM
Comments

iPodでスタンフォード大学卒業式でのSteve Jobsのスピーチを繰り返して聴いていると,なかなか良いことをおっしゃっておれらるので,勝手に日本語訳をしてみました。間違いや不備等あれば,お知らせください。

http://www.nishihara.info/eigo_links/jobsspokeatstanford.html

Posted by: ni_hao@nishihara.info @ December 24, 2005 12:22 AM

ホールアースカタログのバックカバー写真、アップしてくれてどうもありがとうございました。なるほど、これなんだな、と思って拝見しました。

Posted by: かわうそ亭 @ December 6, 2005 07:17 PM

井口さん、どうもありがとうございます。

昔、Whole Earth Catalog のスチュワート・ブランドの How buildings learn の翻訳本を出そうとして画策しましたが、その時のいろいろ、出版社の事情みたいな事を思い出しました。
この本、がんばって読んでみようと思います。

Posted by: 秋山東一 @ December 3, 2005 11:12 AM

秋山さん、

翻訳本となって世に出るかどうかは出版社次第ですからねぇ。出版社としては、ある程度は売れそうでないと出版できませんし、いい本かどうかと売れるかどうかは必ずしも一致しないし。いろいろと難しい世界のようです(私は出版系の仕事をあまりしないので詳しくは知りません)。

ご紹介の本、英語圏での売れ行きもそれほどでないので難しいでしょう。残念ながら。

Posted by: 井口耕二 a.k.a. Buckeye @ December 3, 2005 10:05 AM

井口さん、こんにちは。

いやぁ、ジョブズよりお若いなんていう井口さんから見れば、私なんてすごく年寄りなんです。Whole Earth Catalog については、検索されてここにいらっしゃる方が結構おられます。一度、きちんとまとめたエントリーを作っておかないといけないと考えています。

ところで、先日こんな本を買ってみたのですが、その時代についての知識はあっても、私の力では読みこなすことができません。井口さんが邦訳本をだしてくださったらいいなと思っています。

「What The Dormouse Said: How the Sixties Counterculture Shaped the Personal Computer Industry」

Posted by: 秋山東一 @ December 2, 2005 11:03 AM

『スティーブ・ジョブズ-偶像復活』の翻訳者です。

いや~、The Whole Earth Catalog の同時代を生きられたのですね。私はジョブズよりも少し若いせいか、当時の動きを知らずに育ちました。

Posted by: 井口耕二 a.k.a. Buckeye @ December 2, 2005 10:32 AM

はじめまして。トラバさせていただきました。ぼくもたまたまブログ仲間の記事を見て全文を読んだのですが、個人的に人生の転機を目指して真っ直中にいる自分にとってとても率直に受け止められたお話でした。少し躊躇している自分に「You con do it.」と渇を入れられたような気がします。

Posted by: ume-monz38 @ September 25, 2005 09:19 PM

ジョブズのスピーチを読んでますます彼とアップル製品が好きになりました。
The Whole Earth Catalog、古本屋さんで探してみようと思います。


Track Backさせていただきました☆

Posted by: はじめ風呂 @ September 24, 2005 05:21 PM

はじめまして。

私も今頃このスピーチの事を知りブログに掲載したところです。
まさか、「Whole Earth Epilog」をここで拝見できるとは思ってもみませんでした。ジョブスの言っているとおりの風景写真と「Stay hungry,stay foolish」なのですね~

TBさせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

Posted by: Jolly @ September 19, 2005 10:20 PM

Solid Inspiration さん、はじめまして。
ジョブズのこのスピーチ、徐々に感銘の輪が広がっているようですね。
本の写真がお粗末で申し訳ありません。直さなくちゃ、って考えています。

Posted by: 秋山東一 @ September 13, 2005 09:14 AM

初めまして。Solid Inspirationと申します。

スピーチに感銘を受け、何度か取り上げてきていたのですが、先日のAERA掲載を受けて再度起こしたエントリーにおいてご紹介させていただきました。
#申し訳ございません。先ほどまで存じ上げませんでした…

Jobsがこの言葉と写真からAppleやNext、Pixarを生み、さらにまた若い世代に伝えていく…、大変貴重なものを拝見させていただき、感激しております。

ありがとうございました。

Posted by: Solid Inspiration @ September 12, 2005 04:07 PM

このジョブズのスピーチ 'Stay hungry, stay foolish' は、[AERA '05.9.19]に「「iPod 電話」携帯制するか」という記事の付録として、「ジョブズ氏の「わが人生」スピーチ」という題で抄訳がのっている。

Posted by: 秋山東一 @ September 11, 2005 07:52 AM

s.i. さん、お早うございます。
直しておきました。お知らせありがとうございます。

Posted by: 秋山東一 @ September 2, 2005 07:18 AM

最終号の現物をお持ちの方がいらしたなんて感激です。上記訳文に読者の方より間違いのご指摘を受け、大慌てで掲載ウェブを検索し修正のお願いをして回っている、へっぽこ訳者です。

既にお気づきのことと思いますが、最終行 「拝聴」とあるのは「清聴」の完全なる間違いです。1文字で恐縮なのですが可能であれば、お時間のある時にでも修正していただけたら幸いです。私の不注意で大変申し訳ございません!では失礼いたします。
訳者@岡倉天心ファン
(このコメントは削除いただいて構いません)

Posted by: s.i. @ September 2, 2005 03:28 AM

裏表紙の田舎道の写真、いいですね。
いついつどこどこの、ではなくて、「君が冒険の好きなタイプならヒッチハイクの途上で一度は出会う、そんな田舎道」というのがとてもいいです。
それが秋山さんの手元で大切にされて少しよれたカバーの本だから、よけいそう感じるのかもしれません。
どこまでも続く、切りとられた永遠の風景は、英語にもパソコンにも疎い私にさえ、たまらなく強い意志を与えます。
もし自分がこの本を手に入れることが可能だとしても、それよりここで出会ったことの方が、私には意味があるように思いました。

Posted by: noz @ August 4, 2005 04:03 AM

ジョブズのスピーチいいですね。全てが等身大に語られているように思います。

WHOLE EARTH CATALOG を、時代精神として直接感じられる人は少ないと思いますが、'Stay hungry. Stay foolish.'なんて、誰が言ってもいいとは思えません。ジョブズだから、聞いている皆が納得ってことになるような気がします。

Posted by: 秋山東一 @ August 3, 2005 08:02 PM

スチュアート・ブランドの著書「メディア・ラボ」(1987)はテクノロジーを文化的側面で語ったもので、それはMacintoshで書かれている。またAppleからハイパーカードがリリースされると直ぐにハイパーカード版のThe Whole Earth CatalogをCD-ROMでリリースした。と云うことでジョブズがブランドに影響を受け、ブランドもジョブズに影響を受けていた。
スチュアート・ブランドは「メディア・ラボ」についてこう述べている。
この本を、合衆国憲法修正第一条の起草者とそれを守る人々に捧げる。
「議会は、言論と出版報道の自由を奪う法律を制定してはならない。」
これは、賢明なるプログラマーによって書かれた格調高いコードである。

Posted by: iGa @ August 3, 2005 01:43 PM

トラックバックを2つ飛ばしてしまいました。
ごめんなさい。
わたしはWhole earth Catalogueから遅れた世代で、
それにすごく影響を受けたと思われる
創刊からの宝島(昔はWonderlandという名でした)や
その編集をしていた人たちにすごく影響を受けています。

そして、わたしの今を作っているMacとの出会い。
それが、直線でつながっていることを知ってうれしく思います。

Posted by: りりこ @ August 2, 2005 11:42 PM

ジョブズの、このスピーチのことは全く知りませんでした。いま、これを読んで、ぼくは興奮しています。
これが話題になっているんだとしたしたら、アメリカもまだ捨てたものじゃない。ジョブズはさすがだ。
この興奮をしばらく楽しみたいと思います。
ただ、残念なことに、ぼくはepilogueをもっていない。

Posted by: 玉井一匡 @ August 2, 2005 09:18 PM