【北京・大塚卓也】右肩上がりの価格高騰が続き「バブル」の指摘も増えていた中国の不動産市場に変調の兆しが出てきた。夏の北京五輪を機に市況が反落するといった不安から、不動産業者が、あの手この手のサービスで手持ち物件の処分に動き始めたのだ。全部屋の家具・家電を無料提供したり、1戸買えばもう1戸をタダで付ける業者まで登場。競争過熱による暴落を不安がる声も出ている。
◇20年間管理費タダ
北京市中心部から北に約25キロ。環状鉄道13号線「回竜観」駅から徒歩約15分の新興住宅地区で建設が進む高層マンション「東亜・上北中心」の販売センターには、「20年間の管理費、契約税、補修積立金を進呈」と書いた垂れ幕が並ぶ。女性販売員が「2月いっぱいの限定特販です。同じ特典は二度とないですよ」とパンフレットを差し出した。昨年12月に売り出された15階の物件(約83平方メートル)の元の価格は約92万元(約1380万円)だが、特典を加味した実質価格は79万元(約1185万円)で、15%の値引きに相当するという。
市中心部への通勤圏にある宣武区広安門の分譲マンション「栄豊2008」でも、特定物件を対象に「買一送一(1戸買えば1戸を進呈)」と名付けたキャンペーンを3月9日まで実施中だ。関係者は「市西南部という場所柄、外国人の借り手がなく、投資に不向きで買い手がつかないのではないか」と話す。
北京の不動産市況は、昨年10~12月の前年同月比上昇率が平均15%に達した。株式市場に流れていた投資資金が、高値警戒感から再び不動産市場に向かったのが理由と見られ、表面上は騰勢が続いている。
◇五輪後、値崩れの声
しかし、12月末に中国南部の深センで、不動産仲介業者の倒産が相次ぎ報じられ、「ポスト五輪」の値崩れを予測する声も聞かれるようになった。
北京に拠点を置く香港の不動産開発会社幹部は「富裕層目当ての高額投資物件は、昨年11月以降、3カ月連続で価格の横ばいが続いており、周期的に見てそろそろ価格は下がる」と話している。
不動産は、高度経済成長で増えている富裕層の主な投資対象だ。長者番付の上位を占めるのは不動産開発業者で、不動産市況の動向は、中国の国内消費と密接に関係している。
価格が急落すれば、高値転売を見込んでいた開発業者が不良債権を抱え込むことになり、消費が鈍るのは必至だ。
ただ、米国のサブプライムローン問題を受けて世界の株式市場が混乱する中、中国の不動産が世界の投資資金の逃避先となるといった見方もあり、相場の先行きは見通しにくくなっている。
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◆中国の住宅販売で見られる主な“特典”の例◆
所在地・物件 特典
<北京>
栄豊2008 1戸買うと、もう1戸進呈
富貴園 駐車場を提供
<上海>
名門世家 駐車場の使用権を提供
バルコニーを一つ増設
天安花園 駐車場を提供
<深セン>
俊景豪園 全部屋の家電品提供
東悦名軒 サンルーム増設
毎日新聞 2008年2月24日 東京朝刊