◎兼六園が「三つ星」 もっと誇りを持っていい
レストランやホテルの格付け本として知られるフランスの「ミシュラン」日本版観光地
ガイドで、金沢市の兼六園が最高ランクの「三つ星」に輝いた。「必ず見るべきところ」として推奨された三つ星観光地は、全国で五十一カ所選ばれており、兼六園が日本三名園に加え「世界的名園」というお墨付きを得たことに、石川県民も、もっと誇りを持っていいのではないか。この「勲章」を受けて、日本を代表する城下町としての金沢に、より一層磨きをかけたい。
一九〇〇年に創刊された「ミシュランガイド」は、フランス語圏を中心に世界で約九十
カ国で発行されており、その厳格さで定評がある。今回の観光地ガイドで三つ星に選ばれたのは、兼六園のほか、松島や日光東照宮、金閣寺、姫路城、法隆寺、厳島神社などである。フランス人に好まれる伝統的な庭園が多いとも言えるが、世界遺産をはじめ日本を代表する景勝地や名所の中に加わったことは、兼六園のみならず、金沢城一帯を含めた城下町の文化ゾーンを整備する上で弾みになろう。
昨年一年間の兼六園の入園者数をみると、外国人が前年比30・2%増の十二万五千人
と過去最多を更新したものの、国内の入場者が伸び悩み、総入場者数は前年を約一万九千人下回る約百六十二万八千人と、近年の減少傾向に歯止めはかからなかった。今回の三つ星の格付けを外国人観光客のさらなる誘客につなげるとともに、地元および隣県を中心に、国内からの入園者を増やす追い風にしてもらいたい。
昨年初めて主に東京のレストランを格付けして発行された東京版ミシュランガイドがベ
ストセラーになるなど、ミシュランの格付け効果は日本人にも影響力が大きい。県や金沢市は、兼六園の「三つ星」ブランドを国内に向けて情報発信し、誘客に有効利用してほしい。
また兼六園の外国人入園者は、台湾を中心にアジアからが約八割を占めるが、ユーロ高
の影響で欧州客も急増している。昨年末、フランス・カンヌで開かれた富裕層旅行者を対象とした商談会で金沢の伝統文化が紹介され、高い評価を受けた。今後もこうしたイベントに出展する機会が増えるだろうが、三つ星の本場でもミシュラン効果を生かしたい。
◎李韓国大統領就任 対北外交の原則曲げずに
李明博韓国大統領は、前政権のように理念におぼれず、実利を重視する指導者といえる
。李大統領のいわば「実用主義」の外交によって、これまでぎくしゃくし、冷却化傾向にあった日米両国との関係改善が進み、さらには北朝鮮の核廃棄に向けた行動が促されることを期待したい。
大統領就任後に持たれた福田康夫首相との会談で、途絶えていた首脳相互訪問(シャト
ル外交)の復活と、経済連携協定(EPA)の交渉再開の方向で一致したことを歓迎したい。歴史問題や竹島の領有権問題など両国間の火だねが消えたわけではなく、過度な楽観は慎まなければならないが、日韓新時代の実現へ着実に歩みを進める努力をあらためて両政府に求めたい。
北朝鮮問題に関する李大統領の演説で注目したいのは「理念でなく実用の物差しで解決
を図る」という言葉である。前政権は北朝鮮に遠慮がちで機嫌を取るのに熱心な傾向が強かった。しかし、新政権では、核廃棄につながる効果がないような融和政策は控えるということである。北朝鮮の非核化が進展しない限り経済協力は行わないという、日本政府の「対話と圧力」の基本方針にも通じる原則を曲げないでもらいたい。さらに、この原則に立ってもう一度、日米韓の足並みをそろえ、場合によっては重油支援の在り方を見直す必要もあると思われる。
昨年の六カ国協議で合意した寧辺の核施設無能力化作業は大幅にペースダウンし、「核
計画の完全申告」もいまだになされていない。こうした北朝鮮のノラリクラリとした対応は韓国、ロシアさらに米国の大統領交代を計算してのものとみられるが、残り任期が一年を切ったブッシュ米大統領に、功を焦る気配も感じられるのが気掛りである。
ブッシュ大統領は先の一般教書演説で北朝鮮に一言も触れず、核計画の申告ではプルト
ニウムの計画を先にし、高濃縮ウラン計画やシリアへの核拡散問題の申告を後回しにする案も出されているという。こう着状態打開のための融和的な姿勢がかえってあだになり、北朝鮮に見返りを与えるだけの結果になる危険性もある。それが過去の交渉の教訓であることを忘れてはなるまい。