「ロス疑惑」は、事件発生から二十七年たっても「疑惑」の二文字が取れていなかったことを、ロス市警による三浦容疑者逮捕はあらためて示した 捜査陣もマスコミの現場にも、当時を直接知る者はほとんどいない。肩書きに「元」がつく検事や記者が登場するしかない。今もって「現役」なのは当の容疑者と、殺害された一美さんの母親だけのように見えて、そこもつらい事件である 多くの識者が当惑気味のコメントを並べている中、東京地検時代に同事件の主任検事だった元金沢地検検事正の談話が印象深い。「ロス市警は、なぜ無罪なんだという強い疑問を持っていたのだろう」との、一見単純なコメントだった その執念のロス市警にも当時を知る捜査員はほとんどいないはずだ。米国に殺人事件の時効がないことと考え併せると、真相究明を歳月に流さず、疑惑にはっきり白黒つける捜査の根本姿勢を語っているように思えた 二十七年前の事件だが、日本の最高裁判決が出たのは今からわずか五年前のことであり、忘れるには早すぎる。その間、報道する側にも少なくない教訓を残した。冷静に、根気よく見ていきたい。
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