美術館巡りが好きで、広島県内でも結構行った。特にフランス印象派を中心にロマン派からエコール・ド・パリまで、ヨーロッパ近代美術の名画約九十点を所蔵、常設展示している広島市中心部にあるひろしま美術館は、お気に入りのスポットだ。
その美術館から程近い市民球場の北に位置するハノーバー庭園に、画家の故岡本太郎さんが制作した巨大壁画「明日の神話」を誘致する運動が市民らの手で進む。
縦五・五メートル、横三十メートルの“特大キャンバス”に、さく裂する原爆、燃え上がるがい骨など描き、原爆の恐怖、悲惨さを訴える。ホームページで見ると確かに力強い筆致。目を見開き「芸術は爆発だ!!」と叫ぶ岡本さんをしのばせるに十分な迫力だ。
誘致に名乗りを挙げているのは、ほかに東京都渋谷区と大阪府吹田市。壁画を所有する東京都の財団は近く設置先を決める予定だが、壁画の副題は「ヒロシマナガサキ」。広島誘致には長崎市の応援も受けており、被爆地で展示するのが一番ふさわしいように思う。
ハノーバー庭園は、南の線上に位置する原爆ドームや原爆慰霊碑、平和記念資料館などにも近い。新球場建設に伴う現市民球場の跡地利用・再開発とも絡むが、ひろしま美術館を含め回遊するにはうってつけのゾーンだ。壁画が加わることで「平和都市ヒロシマ」を、世界から訪れる観光客らに、さらにアピールできよう。
二年間過ごした思い出の地に、春の朗報が届くことを切に祈る。
(広島支社・本多薫)