現在位置:asahi.com>教育>子育て>朝日新聞記者の子育て日記> 記事 初めての授乳に大奮闘(女性編)2008年02月25日 自分のおっぱいからお乳が出てくるって、どんな気分だろう。おっぱいを吸われるって、どんな感じなんだろう。ずっと知りたかった未知の感覚に、期待で胸をふくらませたが、現実はそれどころではなかった。 とにかく、おっぱいがバンバンに硬く張って、痛くて眠ることもできない。生理前に起きる胸の張りの何倍も痛い。赤ちゃんに吸ってもらって、楽になりたいという一心に駆られる。 「赤ちゃんがおっぱいをほしがって泣いていますよ」。助産師さんから病室に電話がかかってきても、おなかの傷口が痛くて新生児室に赤ちゃんを迎えに行けないので、病室に連れてきてもらって授乳指導を受けた。 まだすわっていない赤ちゃんの首を支え、乳輪にカプッとくわえさせる。上唇と下唇がアヒルの口のように乳輪のところまで上手にくわえられていると、赤ちゃんはさほど空気をのまずにお乳を吸えるという。 夫に赤ちゃんをベビーケースから抱き上げてもらい、私のおなかに巻き着けた授乳クッションの上に置いてもらう。ふにゃふにゃの赤ちゃんをこわごわ支えて、おっぱいをくわえさせるが、親子ともに初心者同士。なかなか、助産師さんのように上手にくわえさせることができない。赤ちゃんもぎこちなく吸っている。ペッチャン、ペッチャンと空気をのみ込む音がする。あふれたおっぱいで、赤ちゃんの口の周りや産着をぬらしてしまう。 赤ちゃんは吸うときに、上唇と下唇を内側に巻き込む癖があった。唇を引っ張ってアヒルの口のように広げようとするが、吸う力が強くて難しい。授乳を繰り返すたびに上唇の皮がふやけて、むけてしまった。見るだけで痛そうだが、ケロッとしている。母は、白くむけた上唇の皮がちょうどネズミの歯みたいで、「なんだかネズミおやじみたいねえ」と笑っていた。 乳輪の部分までカプッと上手にくわえさえられず、もろに乳首を吸わせてしまうので、私の左の乳頭もすりむけて、血が出てしまった。赤ちゃんの大事な食料供給源がもう故障してしまった。どうしよう! あわてたが薬を塗るわけにもいかない。助産師さんに聞くと、お乳を塗り薬代わりに塗っておけばいいですよと教えてくれた。常に乳頭の部分をお乳で潤わせておくようにしたら、本当にあっという間に治った。 新生児の胃はまだ小さく、片方のおっぱいを飲むと満腹になってしまう。左右を少しずつ飲んでもらいたいのだが、一度乳首を離すともうくわえてくれない。仕方がないので、片方ずつ飲ませた。お乳が出る勢いが強すぎて、よくむせてしまうのにも困った。むせると苦しいので、その後はなかなか飲んでくれない。 それに、おっぱいがバンバンに張ると、乳輪も張って、乳首も硬くなり、吸いにくいらしい。こちらは痛くて「さあ、早くうんと吸ってちょうだい」という気分なのだが、うまくいかないものだ。飲ませる前に、まず乳輪のあたりを30秒ほど指でゆっくり押し、軟らかくしてから口に含ませるよう指導を受けた。でも、おっぱいをほしがって泣く赤ちゃんを前にすると、早く吸わせなければと焦ってしまい、落ち着いて準備をするのは難しかった。 授乳後も、あまりに張ってつらいときは、搾乳機で搾るのだが、これがまた痛い。乳輪のあたりが擦れる感じがする。おっぱいの故障の原因になると思い、やめてしまった。今では、授乳間隔が空いてどうしても痛い時は、指でそっと搾るようにしている。 2、3時間置きに赤ちゃんのおむつを替えては、おっぱいを飲ませる。その後、そっと立て抱きにしてゲップを出してやる。深夜、赤ちゃんが眠りにつくまでしばらく子守歌を歌ってあげた。かつて、母が私に歌ってくれた歌を思い出しながらいくつか歌ってみる。ああ、こうして人間の命の営みは受け継がれていくのね。熱い思いがさざ波のように押し寄せ、赤ちゃんを胸に抱きながらむせび泣き、こう誓った。私がこの子を、命をかけて守っていくわ。 数日後、ママさんたちを対象にした退院後のお世話指導があった。「みなさん、情緒不安定になったり、涙もろくなったりしていませんか。それは産後のホルモンバランスの乱れによるものです。もう少ししますと、落ち着いてきますから」と助産師さん。えっ! そうだったのね。あれは。 女性記者プロフィール(07年10月15日から)
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