和歌山県田辺市や西牟婁郡の医師や看護師、介護支援専門員らによる「介護保険地域連絡会」が23日、田辺市新屋敷町の市医師会館であり、地元医療・介護関係者が、国が進めている療養病床削減について議論した。出席者からは「高齢化が進む中、削減できるのか」「医療難民や介護難民を生み出さないか」などと心配する声が相次いだ。 田辺市医師会と西牟婁郡医師会、県介護支援専門員協会西牟婁・田辺支部主催。県長寿社会推進課介護保険班の森本修司班長が療養病床再編についての国や県の計画や進め方などを説明し、白浜はまゆう病院(白浜町)の西浦敏和事務長が「地域からの報告」として講演した。 「療養病床」とは高齢者ら長期療養を必要とする人を受け入れる病床で、医療保険の医療療養病床と介護保険の介護療養病床がある。医療の必要性が低くても、行き場がないために入院してしまう「社会的入院」が多く、一般病床の不足や、医療費の無駄につながっていると指摘されている。 森本班長によると、全国に医療療養病床が約25万床、介護療養病床は11万〜12万床ある。国は医療費抑制や医療資源の効率化などを目的に、2011年度末までに、比較的医療の必要性が高い医療療養病床を約15万床残し、残りを削減。介護療養病床は廃止する。県もそれを受け、療養病床を約半数の1551床にする目標を掲げている。 医療の必要性が低い人は、療養病床から、老人保健施設やケアハウス、特別養護老人ホーム、在宅療養などに移ってもらうという。そのため、受け皿を増やすとともに、利用者が同じ施設で入所を続けられるよう、国は療養病床を新しい「医療機能強化型老人保健施設」へ移行する方針を立てている。 西浦事務長は白浜はまゆう病院の療養病床の転換を決めかねていると報告。ほかの医療機関でも、経営面が不透明で不安があり、4月に改定される療養病床の診療報酬と、新しく設定される老人保健施設の報酬を見て、方向を決めるところが多いという。 西浦事務長は「医療は急性期医療だけではない。良質な慢性期医療がないと地域医療は成り立たない」と療養病床の必要性を訴え、「高齢化率が高まる上、急性期病院で平均在院日数が短縮される中、本当に療養病床を削減していいのか」と疑問を投げ掛けた。 最後にシンポジウムがあり、出席者から「高齢化に伴い、逆に今後療養病床を増やせという話にもなりかねないので、療養病床からの転換は進まないのでは」「介護支援専門員は生活を支援できても、医療が必要になった場合、どう対応できるかが課題」「介護支援専門員と医師、看護師と高度に連携を深める必要が出てくる」などの意見が出た。