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2008/02/10の紙面より
−石破 茂 −
三月一日より公開される映画「明日への遺言」を試写会で見て、大きな感銘を受けた。 原作は大岡昌平氏のノンフィクション「ながい旅」。太平洋戦争後に行われたBC級戦犯裁判(横浜裁判)において、昭和二十年の日本空襲の際に撃墜された米軍機搭乗員に対し斬首(ざんしゅ)による死刑執行を命じた罪で起訴され、全責任を負って部下たちの命を救った岡田資中将の姿が藤田まこと氏の主演により克明に描かれている。 以前原作を読んだ時も深く考えさせられたが、二時間にわたる映画は息をもつかせぬ張り詰めた雰囲気に終始し、映像化は困難では、との私の危惧(きぐ)は杞憂(きゆう)に終わった。 「報復ではない」岡田中将はこの裁判を「法戦」と位置づけ、米国による無差別爆撃は国際人道法に反し、戦時(緊急時)において軍律による略式裁判で処刑を行ったのは合法であり、その責任は司令官がすべて負うべきものと立論するのである。岡田中将の真摯(しんし)な姿勢にうたれ、裁判官が「戦闘員が戦争法規に照らして違法な行為に及んだ時は、米陸軍法規では『報復』が認められている。処刑はこの『報復』ではないか」と問い掛ける場面がある。 これに対し、岡田が毅然(きぜん)として「報復ではない。処罰である」と答える場面がこの映画のハイライトであろう。自らは助かろうと思えば助かることが出来る時にあえて信念を貫く姿は、今の日本においてあまり見られなくなったように思われる。 国際法の整備「無差別爆撃や広島・長崎への原爆投下は国際人道法違反であり、米国に対して賠償や謝罪を求めるべきだ」との意見が今なお存在する。政府はその立場をとらないが、日本も中国に対し無差別爆撃を行い、事実として原爆の開発も進めていた。これに成功していれば、絶対に使わなかったという保証もない。A級戦犯に対する裁判は事後法によるものでそもそも違法である等、わが国として言いたいことは多くある。しかしそれらすべてを受け入れて今日の日本が在るのではないか。 むしろ考えるべきは、岡田の「裁判の結果は関係ない。向こう(米国)にも都合のあることゆえ」との姿勢、「航空機爆撃に対する国際法の整備は絶対に今後必要」との認識なのではないか。ちなみにそれはいまだなされていない。 岡田中将は鳥取市江崎の出身であり、鳥取一中から陸軍士官学校に進む。巣鴨プリズンで「ふるさと」を歌い、絞首刑執行の日、他の若い被告たちに「君たちは来なさんなよ」と鳥取弁で語りかけている。多くの日本人に、アメリカ人に、そして鳥取県人に見て頂きたい。
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