◇いわき市で相次ぐ
県は4日、救急搬送の実態調査結果を公表した。06年の実績で、全体の84・5%は最初の照会で受け入れ先の医療機関が決まったものの、10回以上断られたケースが78件あり、うち76件がいわき市内だった。同市では、県内最高の18回断られたケースも2件あり、医療体制の不備が浮き彫りになった。【西嶋正法】
調査は、昨年11月に福島市の女性が4病院から受け入れを断られ、その後死亡した事故を受け、県内12消防本部に照会した。安達と会津若松地方の2消防本部はデータがなかった。
いわき市消防本部は、現場到着から搬送先が決まり出発するまでの「現場滞在時間」も、「1時間以上」が44件にのぼった。2位の郡山地方や福島市内は各4件で、いわき市が突出していた。
また、医療機関が受け入れを拒否した理由(県全体)は、▽設備が不十分で処置が困難34・9%▽専門外で治療不可能29・5%▽別の患者の対応中9・1%▽ベッド満床7・5%。搬送の遅れによって患者が死亡したケースはなかったとみられるという。
県医療看護グループの石井敬参事は「(10回以上断られた78件は)驚くべき数字。いわき市は搬送体制を見直す機会にしなければならない。医師不足が根底にあるが、一刻も早く患者を病院に収容するのが救急医療の課題だ」と話した。
◇医師不足を強調--いわき市会見
また、いわき市は4日会見し、「医師不足」を強調した。厚生労働省調査で、人口10万人当たりの医師数(06年)は、郡山市の241人に対し、いわき市は167人だったという。
市によると、市内には2次医療の17病院があり、緊急の重篤患者はいわき市立総合磐城共立病院内の救命救急センターで受け入れている。18回受け入れを拒否された2件のケースは腹痛と転倒による負傷で、ともに軽症だったが、受け入れ先が見つからず、19回目で救命救急センターに搬送されたという。
木村清・市保健福祉部長は「医師確保に即効性はない。市民が安心して生活できるよう、引き続き市医師会とも協議し、医療充実を図りたい」と語った。
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◆救急患者が受け入れを断られた件数(06年)◆
消防本部 0 1~2回 3~4回 5~9回 10回~
伊達地方 3045 364 27 0 0
福島市 6968 456 32 1 0
郡山地方広域 11596 1274 56 11 0
須賀川地方広域 248 38 2 0 0
白河地方広域 2971 291 44 3 0
喜多方地方広域 2178 103 7 1 0
南会津地方広域 1192 0 1 0 0
相馬地方広域 3123 212 17 5 0
双葉地方広域 1533 515 94 50 2
いわき市 6733 2234 830 495 76
計 39587 5487 1110 566 78
(安達、会津若松の両地方広域消防本部は統計なし)
毎日新聞 2008年2月5日