千葉県・野島崎沖で起きた海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、あたごの当直グループの各担当者がそれぞれ漁船の情報を入手しながら交代の際、次の担当者に引き継いでいなかったことが23日、分かった。さらに交代前に把握していた漁船も、清徳丸とは別の漁船である可能性が強くなり、結果としてあたごは衝突して初めて清徳丸に気づいたとの見方が浮上している。
第3管区海上保安本部や防衛省などによると、あたごの艦橋やCIC(戦闘指揮所)ではレーダー情報などから前方海面の漁船情報を得ていたという。艦橋で周囲の海面を警戒監視していた見張り員も衝突12分前の19日午前3時55分に前方に赤色の灯火を発見、漁船の存在を視認したものの「危険性はない」と判断して、当直士官やレーダー員に的確な報告しなかった。
同日午前4時の当直交代のため、この午前3時55分前後は、引き継ぎが各担当部署で行われており、前の当直グループが新しい当直グループにこの漁船の存在を的確に伝えておらず、漁船に関する当直全員の共通認識ができていなかったものとみられている。
さらに、これまでの見張り員を含めた交代前後の当直員からの聴取で午前3時55分に視認した灯火が漁船左舷に設置義務のある赤色で、衝突2分前に視認した灯火が右舷の緑色であることから、
「そもそも清徳丸を当初から認識していなかったのではないか」との新たな見方が浮上している。
この見方は、海自幹部への事故の一報段階が「漁船に全然気づかずに衝突した」となっていたとの証言があることや「清徳丸に関する情報があれば、全速後進だけでなく警笛、舵を切るなど複数の衝突回避動作をするのが常識」(海自艦艇勤務経験者)とされる中、海幕のこれまでの発表では「衝突1分前に自動操舵を手動操舵に切り替えて全速後進をかけた」だけであることなどが根拠になっているという。
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