人権擁護法案の再提出に向け、自民党の人権問題調査会(会長・太田誠一元総務庁長官)は13日、党本部で約2カ月半ぶりに会合を開いた。鳩山邦夫法相は、「以前の人権擁護法案は再提出しない。前の法案をベースにせず自由に議論してほしい」と述べ、白紙から法案を策定する考えを表明。その上で「人権を守る基本法がないのは非常に残念だ。みなさんによいものを作ってもらい、政府提出の形にしたい」と述べ、今国会提出に重ねて意欲を示した。
平成17年に法務省が策定した法案をたたき台にすれば、反対派は修正さえ応じない公算が大きいと判断したようだが、出席議員は「たたき台の法案もなく、われわれの意見を法務省が集約して法案を作るのは異常ではないか」(萩生田光一衆院議員)と反発し、法案に賛同する声は出なかった。
17年に法務省が示した原案は国家行政組織法に基づく「3条機関」として人権委員会を新設し、あらゆる人権侵害に勧告などを行う内容。人権委員会は令状なしで家宅捜索を行えるなど強大な権限を有するため、自民党で「憲法21条(表現の自由)を侵害する」など反発が相次ぎ、提出を見送った経緯がある。
白紙から議論するとはいえ、人権委員会設立が法案の根幹をなすだけに反対派は、「人権の定義もなく強力な権限を持つ人権委員会を作ること自体が民主主義への重大な弾圧だ」(衛藤晟一参院議員)「そもそも論から議論しないと将来に禍根を残す。無理やり通す法律ではない」(下村博文元官房副長官)など安易に修正に応じない構えを見せている。
あまりの反発に太田氏は会合後、「今国会提出は私の希望を言っているだけで強行突破する考えはない」と釈明。会長代理の塩崎恭久元官房長官も「党の了承がないと法案提出はできない。郵政民営化じゃあるまいし…」と困惑を隠さなかった。
調査会は週1回ペースで会合を開く方針だが、見通しはまったく立たないまま。推進派の古賀誠選挙対策委員長や二階俊博総務会長は会合に姿を見せなかった。
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