大荒れの日が続いた。昨日は岡山県北部だけでなく、南部でも雪まじりの強い風が吹きつけた。本格的な春の到来まで、気まぐれな空模様が続きそうだ。
激しい天候の変化の中でも、植物は着実に季節の歩みを刻んでいる。岡山市内有数の梅の名所である神崎緑地公園一帯では、昨日、地元の実行委員会による「太伯振興梅まつり」が行われた。市内外から多くの人々が訪れ、観梅とイベントを楽しんだ。
一帯には約五百本の梅がある。満開の紅梅やこれからが本番の白梅が、雪や強風を受けながらも凛(りん)とした美しさで魅了した。その一方で、しだれ梅の中には「リョクガクシダレ」のように、まだ花の少ないものもある。種類が多く梅見は長く楽しめる。地元では「梅は地域の一体化や活性化、他地域との交流の功労者」と親しみを語る。
日本人にとって「花」といえば桜を挙げる人が圧倒的に多い。しかし、古くは梅の人気が桜をしのいでいたという。中国の影響からか、万葉集には梅を詠んだ歌が桜の三倍近くあるそうだ。
梅と桜は対照的だ。華やかにパッと咲き誇り、短期間で散っていく潔い美しさが称賛される桜に対して、梅は厳しい寒さに耐えて花開き、春のきざしを告げる。生命力にあふれた美である。
理不尽な事件や事故が相次ぎ、社会は混迷の中にある。梅を見ていると、頼もしさに希望を感じる。