回復基調にある日本経済に気になる変調が表れた。政府の二月の月例経済報告で景気回復の減速を告げる判断が示され、米国の信用力の低い人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題の深刻化に原油の再高騰なども加わり、先行き不透明感が強まる。
景気の基調判断について、月例報告は前月までの「一部に弱さがみられるものの、回復している」から「このところ回復が緩やかになっている」と一年三カ月ぶりに下方修正した。
生産、輸出の両面に陰りが生じてきたことを重くみたという。大田弘子経済財政担当相は「テンポは緩やかだが、回復基調は続いている」としながらも「米国経済の減速で、踊り場に入る可能性がないわけではない」と今後、景気が足踏み状態に陥る懸念を隠さなかった。
戦後最長が続く景気回復は、二月から七年目に入ったとされる。今回の減速は一時的な調整局面なのか、息切れの前兆なのか判断は難しいが、日本経済が正念場を迎えたことは間違いなかろう。
生産については、これまでの「緩やかに増加している」から「増勢が鈍化している」と下方修正した。電子部品や輸送機械などの生産が鈍ったからだ。
輸出も「増加している」から「緩やかに増加している」に下方修正された。米サブプライムローンの問題を受け、米国向けの減少が響いた。最近、米国への輸出の落ち込みをアジアなどの新興国向けがカバーするという構図が鮮明化しているが、米国の景気後退は新興国にも影響を与えかねないため楽観できない。
世界経済を揺さぶっている米サブプライムローン問題は、底が見えない点が最大の懸念材料だろう。金融機関を中心に影響が拡大しているだけに不安が募る。
国内では原油高や穀物価格の上昇などが、企業業績や個人消費に暗い影を落とす。世界的な鉄鋼需要の拡大を背景に好況が続く鉄鋼業界でも、鉄鉱石価格の高騰で業績が圧迫され始めた。
資源や穀物価格のアップなどがこのまま続けば、景気回復は途切れる可能性が高い。政府は早い段階で新たな経済成長戦略を打ち出すべきではないか。
内需拡大も欠かせない。厚生労働省がまとめた二〇〇七年の実質賃金は二年連続で減った。パートタイム労働者の増加などが影響した。これでは内需拡大は望めない。今春闘では賃上げとともにパートの正社員化なども大きなテーマだ。経営側の前向きな対応が求められる。
国土交通省は、カラオケセットの購入や公益法人との随意契約など道路特定財源の使途を見直す改革本部を設置し、初会合を開いた。問題点を検証し、六月をめどに最終報告書をまとめる。
今国会で最大の焦点になっている道路特定財源は、揮発油税などを原資にしている。道路整備だけでなく国交省職員が使うカラオケセットや電動マッサージチェア、卓球用具などの購入に使われていたことが分かった。
国交省の天下り先になっている公益法人と多くの随意契約を結び、多額の事業費が支出されていることなども明らかになった。問題視される使途の適正化を図るのは当然だが、今回のやり方には疑問が残る。
改革本部のメンバーが道路特定財源の確保を狙う当事者で固められたからだ。本部長は冬柴鉄三国交相が務め、副大臣や事務次官などの幹部職員らが検証に当たる。有識者の意見も聴くというが、身内主導で客観性や公正さが確保できるのか、首をかしげざるを得ない。
初会合で冬柴国交相は「国交省の未曾有の危機ととらえ、連帯して改める勇気と決断が求められている」と訓示した。当事者がどこまで自浄能力を発揮できるか、今後の取り組みを注視したい。
改革本部は、職員の福利厚生費のチェック体制整備や、公益法人に対する契約の在り方などを検討する。
国民の理解を得るには、まず道路特定財源の使途の全容を見直して情報公開することだ。問題の多くは野党の指摘で表面化しているが、ほかにもあるかもしれない。発覚した問題点への対応だけでは十分とはいえない。それを肝に銘じる必要がある。
(2008年2月25日掲載)