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2008年2月25日

◎ポリ容器漂着 強く抗議し、再発防止要求を

 石川県などの海岸線に濃塩酸が入ったポリ容器などが大量に漂着していることに憤りを 覚える。中国や韓国からの漂着ごみは年々増える一方であり、劇物指定の危険な薬品を投棄する悪質さは容認できない。

 日本の排他的経済水域(EEZ)では、韓国の密漁船が投棄した網やバイカゴが膨大な 数に上っている。環境庁は容器の漂着について、韓国に原因究明と再発防止を求めるとしているが、その程度では不十分だ。ポリ容器の三分の一近くにハングル表記があり、不法投棄の可能性が高い以上、強く抗議し、再発防止を要求する必要があるのではないか。

 福田康夫首相はきょう韓国を訪問し、李明博次期韓国大統領の就任式に出席後、会談を 行う。首脳同士が相互訪問する日韓シャトル外交も再開の見通しという。満足な対話すらできなかった盧武鉉政権時代が終わるこの機を逃さず、ごみの不法投棄や密漁船問題についても外交上の主要なテーマとして取り上げてもらいたい。

 海上保安庁の調べでは、ポリ容器は一月以降、石川県をはじめ日本海側から九州沿岸に かけての十五府県に約二万三千個が漂着した。このうち三分の一近くにはハングルで、「過酸化水素水」「硝酸」などと書かれていた。

 ポリ容器の漂着は、今年に限ったことではなく、過去九年の累計で十五万個以上が漂着 している。三年前には石川県以西の五県に、針が付いたままの注射器や薬品のビンなど医療廃棄物約千五百点が流れ着いたこともあり、このときは中国語の表記が多数見られた。中国や韓国でも、川や海にごみを捨てる行為は禁止されているが、モラルはまだまだ低いとされる。

 水産庁によると、日本の排他的経済水域の海底清掃で見つかった刺し網は東京―福岡間 の二・五往復分、バイカゴは積み上げると富士山二十個分もあった。いずれも韓国の密漁漁具であり、わが者顔で違法操業が行われている現実が見て取れる。

 日韓シャトル外交の再開は結構なことだが、言うべきことをきちんと言わねば何のため の正常化か分からなくなる。福田首相は海洋ごみの不法投棄や密漁について、李次期大統領に強く是正を求めてほしい。

◎日中捜査協力 共助条約の発効早めたい

 中国製ギョーザ中毒事件で浮かび上がった大きな課題は、日中にまたがる事件を解決す る際の捜査協力である。両国の警察当局による初の情報交換会議が開催されたが、これを機に実効性のある協力関係へ踏み出すことを望みたい。両国政府は昨年十二月、外交ルートを通さず、警察同士で情報をやり取りできる日中刑事共助条約に調印したものの、それぞれ国会承認はなされていない。発効を早めることも検討してほしい。

 日本が刑事共助条約を結ぶのは米国、韓国に続いて三カ国目で、証拠の取得や捜索、差 し押さえ、犯罪歴の提供などが相互に可能となる。在日外国人の犯罪検挙者の半数近くは中国人であり、中国との協力体制構築は日本の治安を確保するうえでも極めて重要である。

 情報交換会議では警察庁が「日本国内での殺虫剤混入の可能性は低い」と主張したのに 対し、中国側は「日中双方で混入の可能性がある」と反論し、認識の食い違いが目立った。日本側には「中国が自国に不利益な情報をどこまで提供できるか」といった懐疑心があり、中国側にも日本の主張は安易に受け入れられないといった警戒心がうかがえる。

 二〇〇三年に福岡市で起きた一家四人殺害事件では外交ルートを通した捜査協力が行わ れ、中国の供述調書が日本の裁判で証拠採用されるなど一定の前進があった。今回は農薬が故意に混入されたのか特定できないうえ、中国の国際的な信用にかかわる問題とあって、協力は一筋縄ではいかない状況である。

 中国は共産党支配の下での司法であり、捜査も政治の影響を受けやすい。公安省はとり わけ秘密主義が徹底し、法律の仕組みから捜査手法まで両国間で隔たりがある。だが、人の行き来がこれだけ活発化し、経済的にも相互依存が強まっている以上、捜査協力は両国共通の利益となる。刑事司法分野での緊密な連携は、成熟した日中関係に向けての一つの試金石と言えるだろう。

 二十五日には警察庁次長ら幹部が北京を訪れ、日中警察首脳級会議が開催される。過大 な期待は禁物としても、話し合いを通して認識を共有し、捜査協力の踏み込んだ協議を始めてほしい。


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