広島国際学院大(広島市)と関西電力(大阪市)の研究グループが、微生物を使って汚染された土壌や河川から放射性物質を回収する方法を開発した。微生物を使うことで環境に優しく低コストなのが特徴。09年の実用化を目指しており、将来は、劣化ウラン弾による汚染土壌の浄化にも利用可能という。【下原知広】
佐々木健教授(生物環境化学)らのグループ。既に特許を取得している多数の穴が開いた5センチ大のY字形特殊セラミックに細菌を特殊加工して付着させる。細菌の表面にできるマイナス電気に、放射性物質などのプラスイオンが吸い寄せられる原理を利用した。
ウラン、コバルト、ストロンチウムの3種類の放射性物質など計6種類の物質で実験。約30度の水1リットルの中に20ミリグラムずつ混ぜ、6日間の変化を調査した。その結果、細菌を付着させた特殊セラミック4個を入れた場合、ウランはほぼゼロになり、ストロンチウムとコバルトは約半分になった。土の表面に特殊セラミックを3~6カ月置くと1個当たり半径約30センチ以内の放射性物資を約10~20ミリグラム回収できると推定される。
劣化ウラン弾や原発の放射能漏れ事故の場合、放射性物質による汚染は水1リットルにつき1ミリグラム程度の濃度。システムを実用化すれば、原発事故で出た汚染排水から放射性物質の回収も可能になる。放射性物質の除去は現在、薬品を使えば可能だが、大量に必要で環境への悪影響も懸念される。新システムは、自然界に広く存在する細菌が利用され、必要なのは空気と光のため、環境に負荷がかからず、コストも10~100分の1で済むという。
佐々木教授は「劣化ウラン弾などによる汚染に対し、技術者は知恵を出す必要がある」と話している。
◇葉佐井博巳・広島大名誉教授(原子核物理学)の話
微生物を使った重金属の回収方法は知られているが、水などに含まれた放射性物質が回収できることは有効で、価値がある。
毎日新聞 2008年2月23日 大阪夕刊