ここから本文エリア 大阪府の対策に現場当惑 救急病院の認定基準緩和策(特ダネ) 救急患者の受け入れ不能問題に対処するため、大阪府が打ち出した救急医療体制の見直し案をめぐり、医療現場に波紋が広がっている。府は、他府県と比べて厳しいとされる救急病院の認定基準の緩和と、病院が交代で救急対応する「輪番制」の導入で、患者を断らない仕組み作りをめざすが、貧弱な態勢の病院に重い負担がのしかかる、との懸念は消えない。経営難に悩む公立病院からは「赤字部門を押しつけられる」との声も上がる。(島脇健史) 府内には約550の病院があるが、救急告示病院として認定されているのは半分の約270カ所。府はこれまで、当直が伴う救急対応には医療スタッフの充実が不可欠として、「1診療科につき常勤医2人以上」を認定の基準としてきた。多くの府県が導入している輪番制についても、各地域で救急病院が機能している、との判断から設けてこなかったという。 だが、医師不足などから府内の救急病院が年々減少。残った病院も医師の激務が深刻化し、救急搬送を断る例が後を絶たない。このため、府は医療機関の多さに頼っていた施策を転換し、有識者らでつくる救急医療対策審議会で、認定基準を「常勤医1人以上」に緩和する方針を表明。橋下徹知事も内科・外科の輪番制を導入し、受け入れ不能問題を解消する意向を明らかにした。 府の認定基準には「医師が24時間365日体制で常駐」との項目もあるが、実際はこうした体制が取れない救急病院が多い。常勤医の大量退職で入院診療を休止した府南部の民間病院の担当者は「今は夜間当直がほとんどできず、救急患者さえ受けられない状態。輪番制なら負担も軽い」。 ただ、歓迎の声は少数派だ。内科の常勤医2人中1人が退職し、1月に救急の看板を下ろした大阪市内の民間病院。当直要員に非常勤医を雇えば人件費がかさみ、雇わなければ常勤医に負担がかかる。担当者は「救急患者の半数は搬送が必要かどうか疑わしい。搬送の前に症状をきちんと判定する体制を整備してくれないと受け切れない」。軽症者が押し寄せれば、入院費が稼げずに採算割れする恐れもある。 今月15日、受け入れ不能問題が相次いだ南河内地区9市町村の救急医療関係者が一堂に会し、輪番制の導入について協議した。だが、「当番病院が処置の難しい患者を受け入れる責任が生じ、訴訟リスクが高まる」などの異論が続出していたこともあり、夜間の軽症患者に限って輪番制を採用することで折り合った。 救急告示をしていない公立病院にも不安が広がる。輪番制が導入されれば、真っ先に行政側や周辺病院から参加を求められる可能性が高い。 藤井寺市では1月、民間病院が救急を取りやめ、市内に救急病院がなくなった。市立藤井寺市民病院の担当者は「今の体制で救急をやれば当直代の分だけ赤字になる。医師にも負担がかかり、退職しないか心配だ」と戸惑う。「輪番制を敷くなら府の補助で人件費を手当てすべきだ」との声も自治体病院に根強い。 輪番制を導入している神戸市では、参加53病院が診療科ごとに当番日を決めているが、ほかの病院も受け入れ可能な場合は医療情報システムに空床状況を入力し、助け合う形を取る。同市第2次救急病院協議会の吉田耕造会長は「小規模な病院には負担の軽い患者を担当させるなど、バックアップ体制を設ける必要がある」と指摘する。 PR情報救急存亡
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