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社説(2008年2月24日朝刊)

[月例経済報告]

政府は内需拡大に本腰を

 戦後最長の景気拡大に変調の兆しが表れてきた。米経済の景気後退への懸念が広がる中で、昨秋から今年にかけて、景気の減速を示す指標が相次いで発表されている。

 大田弘子経済財政担当相は二月の月例経済報告で、景気の基調判断を「このところ回復が緩やかになっている」と下方修正した。基調判断が下方修正されたのは一年三カ月ぶりだ。

 「テンポは緩やかだが、回復基調は続いている」と強調しつつも、「踊り場」(景気の一時的な足踏み)に入る可能性がないわけではない、と先行きへの警戒感を表明した。

 景気をけん引してきた生産が鈍化し、輸出に陰りが出ていることが基調判断に大きく影響している。今後は輸出に頼るだけでなく、内需拡大への取り組みを急ぐ必要がある。

 震源となっているのは米国の信用力の低い人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題だ。貸出債権などを証券化した金融商品の価格が急落し、欧米の金融機関を中心に巨額の損失が発生。金融・株式市場が不安定化し、実体経済にも悪影響を与えている。

 米国の景気悪化を受けて、日本からの輸出が減少し、世界経済を支える中国やインドなど新興国への影響も避けられないとの見方も広がっている。

 原油高や食品価格の上昇が個人消費にも影響を与えるのは必至だ。好調だった企業業績にも陰りが見えてきた。大手企業では一月に入り、経常利益予想を下方修正した企業が増えた。

 内閣府が発表した一月の景気ウオッチャー調査では、街角の景気実感を示す現状判断指数が三一・八となり、十カ月連続で低下。景気判断の分岐点となる五〇を十カ月連続で下回った。

 また二〇〇七年十―十二月期の国内総生産(GDP)は実質で前期に比べ0・9%増、年率換算で3・7%増となったが、個人消費は横ばいの状態。

 政府、日銀はこれまで「企業部門の好調が緩やかながらも家計部門に波及している」として、息の長い成長が続くとの見方を示してきたが、下振れリスクが高まり、成長持続のシナリオが崩れかねない状況を迎えた。

 日銀の福井俊彦総裁は、米国の景気動向について「減速傾向が一段と強まっている」と述べ、警戒しながら見守る意向を表明している。

 住宅投資の持ち直しなどの好材料も残るが、今回の景気減速が象徴しているのは輸出など外需に依存した経済成長の限界だろう。景気の持続にはGDPの約六割を占める個人消費も鍵になる。政府は内需の拡大や少子化対策などに本腰を入れるべきだ。



社説(2008年2月24日朝刊)

[食の日中関係]

管理態勢の構築急げ

 中国製ギョーザ中毒事件をきっかけに、国内で相次ぐ中国製食品からの殺虫剤検出に対し、具体的な対応策が見えない。日中の捜査当局による原因究明作業は進展せず、効果的な再発防止策を打ち出せないでいる。

 中国製食品に対する消費者の不安は増大するばかりで、買い控えも広がっている。一方、中国でも検疫当局が安全確認の検査を強化したため、一部の食品が日本に輸出できなくなっているという。

 こうした状況が長引けば、二〇〇六年十月に安倍晋三首相(当時)が訪中して以降、修復の動きが出てきた日中関係に影響を及ぼす可能性もあるのではないか。両国は速やかな原因究明と再発防止に向け連携していくべきだ。

 福田康夫首相と来日中の唐家〓国務委員はギョーザ中毒事件について、緊密な協力と一日も早く真相を究明していくことで一致。食の安全について日中間の中長期的な枠組みを構築する考えを示した。具体化を急ぐべきだろう。

 例えば、食の安全に関する情報の共有化や常設の協議機関設置など、できることから始めてはどうか。異なる法制度や国内事情など、課題は多いが早期に取り組む必要がある。

 国民生活に直結する食の安全性の問題で対応を誤れば、年々依存関係を深める日中両国の経済にも深刻な打撃を与えかねないからだ。

 農林水産省によると、〇六年に日本が農水産物を輸入した主要国のうち、中国のシェア(金額ベース)は米国に次ぐ15・1%。生鮮、冷凍野菜は45%以上を占めており、今や日本の食卓は中国抜きには成り立たない。

 財務省の貿易統計速報(通関ベース)でも、〇六年度の中国(香港を除く)との貿易額(輸出と輸入の合計)は二十五兆四千億円を超える。米国との貿易額を戦後初めて上回り、最大の貿易国となっている。

 食の安全問題は経済関係だけに限らず、文化、政治問題にも波及する。両国は双方が協力した安全管理システムを早急に構築すべきだ。

※(注=〓はへんが「王」でつくりが「旋」)


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