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2008年2月24日

◎金沢中心部でアート展 歴史的空間も生かしたい

 金沢21世紀美術館が今年秋、金沢市中心部の商店街の空き店舗や公共施設などを芸術 作品で彩る新事業を始める。北陸新幹線の金沢開業を控え、ゆくゆくは三年に一度の国際美術展を開催する足がかりにするようだが、インパクトのある企画にするために、まちなかの空きスペースだけでなく、たとえば兼六園や金沢城公園など、金沢の歴史的景観や建造物を展示空間として生かしてアートを展開することも、考えてみてはどうだろう。

 芸術の祭典としては世界最高峰であるベネチア・ビエンナーレも歴史的建築物が建ち並 ぶ伝統的な都市で開かれ、時にはパビリオンとは別に街中の教会なども展示会場として活用することにより、芸術空間としての価値が一層高まっていることも確かである。城下町金沢の特徴ある街並みに現代的意義を持たせる意味でも、アートの現場として歴史空間を積極的に使い、伝統のたたずまいに磨きをかけたい。

 今回、「金沢アートプラットホーム2008」と名付けられた芸術空間の創出事業は、 国際的に活躍する国内外の作家や地元若手ら約二十人が、竪町、広坂、兼六大通りなどの商店街の空き店舗や空きビル、公共施設など十カ所を利用して作品を創作し、建物そのもののアート化も想定しているようだ。

 金沢市では、これまでもJR金沢駅東口から同美術館に至る都心軸沿いを「アートアベ ニュー」と位置づけ、企業のショーウインドーに学生の制作した作品を展示したり、コンペ形式で意欲的な作品を審査し、受賞作品を目抜き通りに設置するなど、アートを通じた街づくりを進めてきた。

 今回の事業も、展示スペースとして空き店舗や空きスペースも活用することで、まちな かのにぎわい創出の幅を広げることにつながるだろうが、それとともに金沢の歴史都市としての側面を生かすことも必要だろう。名所旧跡でなくても、新たな活用策が検討されている金澤町家や広見、用水なども含めて、金沢は作家の制作意欲をくすぐる素材に事欠かないはずだ。金沢全体を芸術空間にするという目標に一歩一歩近づけるためにも、創作候補地の範囲を広げ参加者に提案してほしい。

◎道路財源集中審議 問題点が出たことを評価

 衆院予算委員会での道路特定財源に関する集中審議で、今後十年間に五十九兆円を投じ る道路整備中期計画の問題点がかなり浮き彫りにされ、福田康夫首相や冬柴鉄三国土交通相が五年ごとの見直しや、毎年の予算編成時に議論をして、よい案をつくることもあるとしたほか、道路事業の執行や改革の方向性を検討するなど逃げない取り組みを述べたことは評価できるやりとりだった。

 そうした前向き姿勢を貫き、予算を透明にし、その執行を厳格にしていくことが肝心な のだから、政府には言行一致の努力を望む。

 野党側は五十九兆円を投入するとした積算根拠の明確化を求め、国土開発幹線自動車道 建設会議(国幹会議)の審議を経ないで高速道路をつくっていく「抜け道」がある等々の問題点を指摘した。抜け道というのは、国道をつくるとの名目で高速道路の規格のものを建設し、後で格上げすることを指す。

 五年ごとの見直しや、毎年の予算編成時に議論して、よい案にしていくとした答弁は福 田首相の発言である。この集中審議に先立ち、自民党の谷垣禎一政調会長がNHKの番組に出て、中期計画について「五年ごとに見直す。五十九兆円は上限で、減っていくことは十分ある」と述べており、首相の答弁はこれと軌を一にしたものだった。

 冬柴国交相は具体的な算定根拠に関する資料を予算委に提出すると明言したほか、自ら が本部長を務める改革本部を設置して、道路財源の使途の見直しや業務執行の総点検をして改革の方向性を検討するとし、国交省所管の公益法人への天下りの規制にも取り組む意向を表明した。

 さらに、抜け道があるとの指摘に関連して国幹会議の人選や運営方法を抜本的に見直し 、国民の意見を反映させる分科会を設置するとの考えも明らかにした。

 職員用のマッサージチェアやカラオケセットが道路財源から支出されたことも分かった 。国民には見えなかったことばかりだ。道路特定財源というと、ガソリンが下がるなどという話につながっていく。いわゆる暫定税率をめぐる攻防ばかりが目につくのだが、適切に支出されるかどうかこそ重要だ。


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