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2008年2月24日

 「あれは素晴らしい。よう考えなはったなぁ」。落語家の桂文珍さんが石川県庁の観光創造会議で語ったことがある。手取川河口近くにある「美川県一の町」の看板のことである

合併で町の名も消えて三年、名物看板は遠からず姿を消すというので、あらためて見に行ってきた。黄色地に黒字で書かれていて、歌手・美川憲一さんの舞台衣装顔負けの派手な色と大きさだ。文珍師匠が脱帽の体だったのも分かる

元々賛否両論あった。設置当時の町当局からは「目立たない看板は看板ではない」という強烈な一言を聞いたこともある。看板の役割を明快に言い切っているが、何をもって目立てばいいのかが難しいのである。どの看板も「目立たなくては」と主張しだしたら、街中ならばたちまち景観破壊となるだろう

色か。大きさか。それとも言葉のセンスやユーモアか。目立ち方にもいろいろある事を問い掛けて消えて行くなら価値はあり、景観行政の在り方を考えさせる記念碑として語り継がれるだろう

「わたしはもう十分なのよ」とは廃止を聞いた美川さんのコメントだった。そう、目立つだけの存在ならもう十分だ。


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