先日、紙面(八日付第二全県面)でも紹介しましたが、笠岡市用之江の上の谷地区で住民有志が地元の生活道である市道の幅を広げ、路面を舗装する工事に汗を流しました。労力は地元、資材は市が支給する官民協働の事業です。
この話で思い出したのが、長野県栄村の「田直し」「げたばきヘルパー」です。栄村は長野県最北端に位置する雪深い過疎の山村。自立を目指す中、村民が元気に暮らせる地域にするため考え出した独自の施策です。
「田直し」は、棚田の多い栄村ならではの直営小規模区画整理事業。重機の扱いに熟練した村の臨時職員らが現地で農家と協議しながら工事をします。十アールあたりの事業費は四十万円以内をめどにし農家負担は半分。国の補助事業なら農家負担は数倍といいます。
隣近所なら真夜中でもげたを履いて駆け付けられるということでこの名が付いた「げたばきヘルパー」は、点在する集落で二十四時間安否確認や介護が担える体制整備が目標。ヘルパー資格を取ってもらった村民を社会福祉協議会に登録し、住民自身による安心ネットを形作っています。
これらの事業を始めた高橋彦芳村長は共著「自立をめざす村」(自治体研究社)の中で「実践的住民自治」を提唱。協働の観点から、住民が実践的に自治にかかわれば住民自治が回復され、参加民主主義が実現できる―との旨を書いています。
今、「協働」は自治のキーワード。今後も一層の住民パワーと、住民生活の視点に立った行政のきめ細かな施策が求められるでしょう。
(笠岡支社・河本春男)