高村正彦外相が、沖縄の女子中学生暴行事件など一連の米兵不祥事を受け、当面の再発防止策を発表した。今回の暴行事件の容疑者が基地外居住だったことから、これまで自治体で把握できなかった基地外に住む米兵らの人数などの情報提供を柱にする。
一定の制約を課される基地内居住の米兵と違い、基地外居住は生活上の明確な規制はないとみられ、沖縄県は基地外に住む米兵の人数などについての実態把握が再発防止には必要としていた。政府の再発防止策では、基地外居住米兵らの人数などの情報を年一回は地元自治体に提供するとしている。
事件後、政府が米軍側に照会して初めて分かった一月三十一日現在の沖縄県に居住する米兵の数は、二万二千七百七十二人だった。軍属、家族を合わせると四万四千九百六十三人に上った。このうち基地外居住者は、一万七百四十八人と23・9%を占める。
基地外居住の許可基準も判明した。海兵隊の場合、三等軍曹以下の単身者は原則として認めず、扶養家族を得たか、米兵の配偶者と同居したなどのいずれかの条件を満たせば可能とする。
基地外に住む米兵らの人数などは、自治体にとって当然必要な情報である。これまでなかったのがおかしい。だが、人数が判明したからといって犯罪減少につながるとはいえまい。基地外居住の在り方や居住を認める基準見直しまで踏み込むことが大切だ。
再発防止策には繁華街などでの米軍と警察による共同パトロールや防犯カメラの設置なども盛り込まれた。ただ、共同パトロールには沖縄県警が「現状の日米地位協定では、日米どちらが身柄を確保するのかが問題になる」と難色を示す。日本側に不利にならない運用でなければならない。防犯カメラ設置も、プライバシー問題が絡む。地元住民の意向に十分配慮することが重要だろう。
沖縄県も再発防止策をまとめた。米兵らの外出制限の拡大のほか、米兵らへの研修時間の増加や内容の充実などだ。県警の警ら隊の増強や犯罪の発生状況を市民の携帯電話に配信するシステムの整備も挙げる。さらには日米地位協定を抜本的に見直し、米側が拘束した被疑者を起訴前に引き渡すことも求める。
沖縄では、女子中学生暴行事件以降も海兵隊員が飲酒運転や住居侵入容疑で逮捕され、陸軍兵によるフィリピン人女性暴行事件も発覚した。効果的な防止策のさらなる検討が必要だが、再発防止には、米軍基地の整理縮小を忘れてはならない。
日本郵政グループのかんぽ生命保険と日本生命保険が、保険商品の開発や販売、システム構築などに関して業務提携することで合意した。
日生を含む生保、金融業界は、民業圧迫の観点から郵政民営化に懸念を示してきた。実際に動きだしてからは、現実的な対応として各社とも日本郵政グループとの関係を強めているが、かんぽ生命が商品開発など基幹業務で個別の生保と業務提携するのは初めてである。
具体的な提携内容は今後詰めるが、日生からかんぽ生命への商品開発のノウハウ提供や、保険の引き受け・支払い管理の態勢整備支援などが柱になりそうだ。商品開発ではかんぽ生命が苦手とするがん保険など「第三分野」の商品が有力という。
約一年後に共同開発商品の第一弾が市場に投入される見通しだ。新商品は、かんぽ生命のブランドで直営店のほか全国の郵便局の窓口で販売されることになろう。
ニーズに沿った保険商品がスピーディーに開発され、身近な郵便局で売られるのは消費者にとっては歓迎できることだろう。しかし、別の面で不安がある。
かんぽ生命と日生が双方の利益極大化に走り、郵便局で売られるのがかんぽ・日生グループの商品ばかりになる事態だ。かんぽ生命は現段階では全額政府出資の会社で信用力は高い。そこが個別の生保と組んだ。郵便局網を両社が独占的に使うことは不可能ではない。圧倒的な市場シェアとなる展開を、他の生保各社も懸念していよう。
今回の提携で業界の勢力図が大きく塗り変わろう。競争による消費者利益拡大は郵政民営化の目的の一つだが、競争の公正さは保てるのか。
(2008年2月24日掲載)