千葉県・野島崎沖で起きた海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、あたごの見張り員が衝突12分前に清徳丸のものとみられる灯火を目視していたにもかかわらず、衝突1分前まで針路を固定する自動操舵で航行していたことが20日、分かった。12分前に目視した灯火は、清徳丸の左舷にある赤色と後部の白色だったことも判明。清徳丸は左側面を見せながら、あたごの進行方向に右側から接近しており、第3管区海上保安本部は清徳丸を右手に見るあたごに回避義務があったと断定した。
海自によると、あたごの見張り員は事故発生12分前の2月19日午前3時55分に、約3000メートル先で清徳丸とみられる灯火を確認。だが、この時点であたごは回避措置を取らず、約10ノット(18キロ)の速度を維持して自動操舵を続けて直進した。
同4時5分に前方を別の漁船が横切ったのを確認し、同6分に清徳丸が約100メートルの地点まで近づいたことで初めて危険性を認識。この時点で当直士官が後進を指示し自動から手動へ操舵を切り替えた。
3管本部などの調べでは、12分前に確認した清徳丸とみられる船舶について、見張り員は「赤と白の灯火が見えた」と証言した。
海上衝突予防法により、左舷に赤、右舷に緑、後部に白の灯火をつけることが義務づけられている。見張り員は12分前、右舷の緑色だけは確認していなかったため、右から左に向けて航行しながら、あたごに接近していた清徳丸を確認していたことが裏付けられた形だ。同法では、相手の船を右手に見る船舶に衝突を避ける義務を規定している。
あたごでは午前4時が当直の交代時間だったことも判明。海自は、12分前に灯火に目視で気付いた見張り員と事故直前に清徳丸を確認した見張り員は同じで、3時55分より前に交代したとみられる。海自によると、交代する乗組員は時間に余裕を持って配置部署に着き、時間前に交代することもある。
この見張り員は衝突2分前には、清徳丸の緑色の灯火しか確認していないが、これは清徳丸があたごと向かい合うような形で航行する態勢にかえたためとみられる。
一方、3管本部の調べで、あたごには、右舷以外に左舷や船体下部にも複数の傷があり、損傷は艦首突端部が最も激しかったことが判明。3管本部はあたごの船首先端が90度に近い確度で清徳丸に衝突したとみている。清徳丸からは全地球測位システム(GPS)2台を回収しており、分析を急ぐ。
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