[イージス艦事故]家族らが現場海域に…発見祈り名前呼ぶ

　海上自衛隊のイージス艦「あたご」とマグロはえ縄漁船「清徳丸」の衝突事故で、行方不明になっている吉清（きちせい）治夫さん（５８）と長男哲大（てつひろ）さん（２３）の家族らが２３日、現場海域を訪れた。治夫さんの母春枝さん（８３）や妻幸子さん（５２）らは涙を流し、護衛艦の甲板から荒れた海に向かって２人の名前を呼び続け、発見を祈った。

　家族ら約３０人は海上自衛隊館山航空基地（千葉県館山市）からヘリコプター５機に分乗し、約２０分かけて野島崎沖で待機する護衛艦２隻に到着。強風と高波で甲板には海水のしぶきが飛ぶ中、用意した千羽鶴や花束などを海に流し、「早く帰って来て」「哲ちゃん」などと叫んだ。

　春枝さんはぼうぜんとした表情で荒れる海を見つめ、幸子さんは握り締めたタオルで顔を覆いうなだれた。甲板は２人の名前を呼ぶ声とすすり泣きに包まれ、乗組員らはこわばった表情で見守った。

　治夫さんの兄高志さん（６０）は「哲大はよく私の仕事を手伝ってくれた。今も『おじさん、手伝うよ』と出て来てくれるような気がする」と話し、涙で声を詰まらせた。

　家族らは捜索の責任者である第１護衛隊群司令の河村正雄・海将補から捜索状況についての説明を受けた。帰路は強風のためヘリが離艦できず、２隻の護衛艦はいったん横須賀沖まで移動し、家族らはそこからヘリで館山航空基地に戻った。【佐々木洋】