ロス銃撃事件で日本で無罪が確定した三浦和義元被告(60)が休暇中のサイパンで逮捕された。日本の憲法は、一度無罪とされた行為について再び刑事責任を問うことはない「一事不再理」の原則を掲げている。日本人が外国で事件を起こし、その国の法律で裁かれる場合は、この原則は適用されないが、実際に立件されることは極めてまれだ。
前田雅英・首都大学東京法科大学院教授(刑事法)は「米国の捜査当局も、三浦元被告の無罪が確定したことは当然知っている。それでも逮捕したのは、日本の裁判では出てこなかった有力な証拠を握っている可能性が高い。ロス市警が日本の警察と太いパイプを持っているとも考えにくく、独自の捜査を続けていたのだろう」とみる。
米国の刑事司法に詳しい藤本哲也・中央大教授(刑事法)によると、今回のケースは、犯罪捜査について米国が「属地主義」、日本が「属人主義」を取っているために起きた。
日本国内で米国人が犯罪を起こした場合、米国の捜査当局は原則的に立件しないが、日本の捜査当局は日本人が海外で起こした犯罪も捜査する。結果的に、日本人による米国内での犯罪は、日米両国で逮捕・起訴される可能性が生じる。藤本教授は「三浦元被告が日本で有罪だったとしても、米国でさらに起訴されることも理論的には可能。本来は国際的なルールを作るのが望ましい」と指摘する。
殺人罪は、日本では25年の公訴時効があるが、米国には時効がない。藤本教授によると、米国では38州が刑法で死刑の規定を設け、13州が死刑を廃止。カリフォルニア州は、計画的な殺人を含む「第1級殺人」の最高刑は死刑。起訴されると地裁で陪審員が有罪か無罪かを判断し、有罪の評決なら職業裁判官が量刑を決める。無罪なら検察は控訴できず、そのまま確定するという。【清水健二】
毎日新聞 2008年2月23日 21時49分 (最終更新時間 2月23日 23時03分)