海上自衛隊のイージス艦「あたご」と千葉県勝浦市の漁船「清徳丸」の衝突事故で、吉清治夫さん(58)、哲大さん(23)親子の捜索を続けてきた同市の新勝浦市漁協全7支所のうち、清徳丸が所属する川津支所を除く6支所が、捜索活動の打ち切りを決めた。
同漁協では、悪天候の日を除き、計50隻余の漁船を捜索にあたらせてきたが、操業停止は家計を直撃し、市内の鮮魚店で魚が品薄になるなど地元にも影響が出始めていた。しかし、「二人のことを思うと、まだ漁をする気にならない」と話す漁師も多く、まさに苦渋の決断だ。
西部支所所属の「観栄丸」船長の鈴木吉造さん(59)は操業再開に踏み切れない1人。漁師仲間の会議などで、冗談交じりに場を和ませながら、自分の意見をはっきり言う姿を見てきた。「治夫さんは愉快で真っすぐな人。思いやりのある漁師らしい漁師なんです。忘れて漁に出るなんて」と表情を曇らせる。
これまで捜索に3回参加した同支所の船団長、高梨勝さん(59)は、週明けから南東約40キロの沖合でキンメダイ漁に入ることを決めた。「海面に目をこらし、手掛かりがないかどうか捜したい」と話し、吉清さん親子を気遣いながらの操業となる。
川津支所の漁師仲間は当面、約20隻の漁船で捜索を続ける。吉清さん親子が行っていたはえ縄マグロ漁はいまが好漁期。1度の水揚げ高は多い日で200万〜300万円になる。操業停止の負担は大きいが、治夫さんから漁の手ほどきを受けたという「基吉丸」船長の渡辺清志さん(51)は、「何が何でも捜し出したい」と話した。
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