「制服の誘惑」に警察トップが激怒
いつぞや『東方日報』に、こんな記事が出ていたことがある。「日本の男はみんなヘンタイで、船員の服を見ると欲情する」…。おいおい、いくら何でもヒドいデマ記事だと思いきや、船員の服=セーラー服だから、こんな誤解を生んだのだろう。
男が「制服」に欲情するのは香港だって同じで、地元のポルノ雑誌を見れば、「制服を着た女子高生を、ウッヒッヒと征服」だなんて小説が満載されている。最近では不況にあえぐ香港・マカオのフーゾク界にも、「女学生ナイトクラブ」だの「ナース・ソープ」だの、風俗嬢のコスチュームをウリにする店が登場しているし、香港映画でも制服姿の女性が次々と色魔のエジキになるという『強姦2制服誘惑』が目下上映中で、8日の観客数は『タイタニック』に次ぎ大ヒットだ。
しかし10日付『東方日報』によると、香港警察のトップである許[王/其]安・警務処長が『強姦2制服誘惑』に激怒。あの手この手による「弾圧」を命じたそうだ。
許処長が怒った理由は、この作品が胸元をはだけた制服姿の婦警さんをポスターに使っていたため。「恥ずかしくてパトロールに出れない」という婦人警官たちからの訴えが殺到して、取り締まりに乗り出すことにしたという。
許処長の指示を受け、警察では映画の事前検閲を行う映画放送処に「ポスターの内容に違法性はないか」と問い合わせたが、この作品は3級(ポルノ)映画の扱いではないので、ポスターの事前検閲は必要なかったことが判明。そこで「警官の制服を無許可で使用した」容疑で起訴できないかと検討を進めており、さらにテレビCMを観た市民から「女性がロープで縛られているシーンを観て、気持ち悪くなった」という苦情が1件寄せられたことから、放送管理局に詳しく調査するよう求めている。
これまで女子高生の制服モノは放置していたのに、警察もずいぶん身勝手なものだと思うが、ちなみに『強姦2制服誘惑』は清純派女優の朱茵(チュー・ヤン)が、ガールスカウトの制服を着て、初めてお色気シーンに挑むというのがウリ。で、果たしてどの程度の内容なのか、今晩、早速みんなで映画館まで「取材」に行くことになりました(笑)。
1998/3/11
香港初の「フーゾク無料体験」、おとり捜査で摘発
香港の出版界では、いま「第四次ポルノ雑誌戦争」が勃発中だ。ポルノグラビア+黒社会(暴力団)内幕ネタの、いわば「アサ芸」式雑誌がブームになった70年代後半、『香港97』に代表されるグラビア専門誌の登場が相次いだ80年代半ば、中国本土のフーゾク情報で競った90年代前半に対し、今回は地元香港の風俗店ガイドをウリにした新雑誌が次々と創刊され、熾烈な部数競争を繰り広げている。
そんななかで、フーゾク店とタイアップし「無料体験クーポン」をつけた雑誌も現われたが、香港警察が「いくら何でもやりすぎ」と激怒。香港初の試みは、おとり捜査によって店員と客が一網打尽にされるという結果に終わった。
この雑誌は週刊ポルノ誌『豪情夜生活』。3月6日号にクーポン券を付け、9日午後6時から7時の間にモンコク・花園街の指定されたフーゾク店に行けば、先着20名限りで「無料体験」ができるというもの。そこで警察では客に紛した警官を派遣したが、「無料体験」では売春防止法に抵触しないため、7時を過ぎたところで「有料」になったのを確認し摘発。タイ人の風俗嬢2人と店員3人、さらに客4人を検挙したもの。
11日付『東方日報』によれば、検挙された客のうち1人は日本人で、「タダで『味見』をしようと、わざわざ飛行機で来港した」と報じているが、いくら何でもウソ。おそらくは在港邦人でしょう。
『豪情夜生活』は自称モンコック風俗地帯の元ポン引きで、『りんご日報』ポルノ面の連載コラムで有名になった肥龍(デブの龍)氏が昨年初めに創刊。「ワンチャイ××サウナの××嬢は口がうまい」など、それまでダブーとされてきた地元風俗店の実用ガイドを満載して、一躍部数最大のポルノ誌になったが、似たようなライバル誌が相次いで登場し、香港初の試みで他誌を圧倒しようとしたようだ。
1998/3/12
幼児ポルノ&死体画像で、日本人に見せしめ判決
「被告は邪悪な人間である」――。インターネットで幼児ポルノや死体写真を流していた日本人エンジニアに対し、東区裁判所は12日、懲役1年9ヵ月の実刑判決を下した。
被告の武田洋幸(24)は、インターネットを通じて入手した、幼児の性行為やバラバラ死体などの画像データ41点を、自分のホームページ上で公開していたとして昨年10月逮捕され、猥褻物品管制条例違反の疑いで起訴されていたもの。先月行われた公判で、被告は「遊びのつもりだった」と訴えたが、裁判長は「被告の流した画像は、26年間に及ぶ私の司法生活で、最も極悪なものだった」と形容。被告の精神鑑定を命じていた。
12日の法廷で、裁判長は被告の精神状態に問題はないとしながらも、「道徳的に問題ある邪悪な人間」だと形容。しかし写真の公開は無料で、金銭的な目的でなかったことを考慮し、懲役3年の求刑に対して懲役1年9ヵ月の判決を下した。
13日付『東方日報』によれば、被告には全く反省の色がないとする検察側に対し、弁護側は「被告は十分後悔しているが、日本では『男が涙を流すのは弱虫』だとされるため、涙をこらえていただけ」と主張していたという。
武田は昨年秋、地元紙が掲載したダイアナ妃の死体合成写真をホームページで公開したことから、『週刊文春』に「インターネットの寄生虫」と実名入りで非難されていたが、その後問題になった写真がウィーンに本部を置く幼児ポルノ監視団体の目に留まり、インターポールに通報されたもの。
ポルノの事前検閲を行う放送娯楽管理事務処の劉永豪・主任によれば、これまで猥褻物品管制条例違反で実刑判決が下っても、懲役2〜3ヵ月の例が多く、今回の重い判決は今後増えると予想されるネット犯罪に対する「見せしめ的な意味があったはず」とコメントしている。
また、裁判長が幼児ポルノに厳しい見方をする白人裁判官だったことも被告に不利になったようだ。
メナム河「特製」ビーフンで、ツアー客集団コレラ
「どこへ行くのも集団で、旗を手に持つガイドを先頭にゾロゾロ歩いているだけ」と、日本人ツアー客が一昔前よくバカにされていたが、今もそんな調子で世界へ繰り出しているのは香港人ツアー客。朝から晩までびっしり集団行動、しかも食事はどこへ行こうとほとんど中華料理ばかり。映画館で上映前に流す旅行会社のCMと、そっくりそのまんまの観光地を回るという内容。タイ、フィリピン、マレーシアといった東南アジアが安くて手頃な人気コースなようだ。
そんななか、今月上旬に康泰旅行社のタイツアーに参加した香港人64人の間で集団コレラが発生。帰港後、潜伏期間を経て11日から発病者が相次ぎ、14日現在で19人が激しい下痢などで入院、うち3人の感染が確認されている。また永安旅行社のタイツアー参加者からも感染者が出ており、香港での二次感染が心配されている。
参加者らの話を総合すると、コレラ感染の原因となったのは、バンコクの近郊・メナム河支流にある水上マーケットで食べた魚蛋湯米粉(つみれ入り汁ビーフン)のようだ。屋台の小舟は川の水で調理しており、衛生面では問題が多い。2月に地元香港の海鮮料理が感染源となったコレラ騒ぎでも、水上生活者らの汚水が流れ込む台風避難港から汲み上げた海水が原因とされた。それにしても、魚蛋湯米粉なんてタイへ行かなくても香港の麺粥屋で食べられるのにと思うのだが…。
さて地元大衆紙の報道ぶりはというと、相変らず大げさ。15日付『りんご日報』は「コレラ爆発の危機」と1面トップで大きく掲げ、「1時間に3回もトイレへ」「死ぬほどゲロを吐き、顔色はまるでキョンシー」などの見出しが踊る。さらにコレラ感染者の「地区別分布図」や、彼らが立ち寄った公衆便所やレストランの一覧表までつくサービスぶりだ。
「ニワトリ騒動」に続いて今度はコレラと、観光業界はまたしても頭を抱えることになりそうだが、センセーショナリズムに走る地元大衆紙の手法も、観光客の減少に一役買っているといえよう。
「兄貴」に頼まれた遺産管理に、疲れ果てて自殺
正月ともなれば「初笑い」を宣伝文句に掲げたコメディ映画が上映されるのは、日本も香港も同じ。日本では「寅さんシリーズ」のような人情喜劇が定番だったが、香港では正月の挨拶からして恭喜発財(儲けましておめでとう)と言うくらいだから、めでたい話と言えばやはり金儲けネタが多い。例えば「遠い親戚から思わぬ遺産が転がり込んだ一家が、てんやわんやの大騒動」とかいう設定だ。
しかし現実に思わぬ遺産が転がり込んで、いや「転がり込んだ」と勘違いされて、トンでもない目に遭ってしまった人の話を紹介しよう。
15日午前3時50分、馬鞍山の耀安団地に住む黄朝陽さん(39)が、6階の自宅から飛び降り自殺を図った。
16日付『成報』によると、黄さんは飲茶レストランでコックをしていたが、シェフのAさんに気に入られ「兄弟」と呼び合う仲になった。Aさんはギャンブルの借金がもとで2年前に自殺したが、100万HKドルの生命保険に入っており、遺言で黄さんを遺産管理人に指名。黄さんはAさんの葬儀の手配から、残された妻子の生活の世話、遺産の整理と借金の返済手続きを引き受けることになった。
しかしAさんの遺族は、黄さんが遺産管理人となることに反対したため、保険金の受領手続きは行えず、その一方でAさんの借金取りが黄さんのもとへ連日押しかけてきたため、とりあえず自分の金でAさんの借金返済を肩代わりするうちに、自ら借金を抱える身になってしまった。またAさんの家族からは黄さんが保険金を横取りしたものと疑われ、黄さんがシェフに昇格すれば、周囲から「呑死人銭、食死人位(死者の金をネコババし、死者のポストも横取りした)」と噂される始末。そしてAさんの遺族から「保険金の引き渡し」を求めて裁判を起こされ、絶望した黄さんは死を図ったという。
黄さんは一命を取りとめたものの重体で、左足を失うことになりそう。病院に詰めかけた報道陣に対し、「人助けをしたつもりだったのに、誰も自分を助けてくれない」と、涙ながらに語ったという。
高官と親密な「虎の娘」に、司法長官もビクビク?
広告収入を伸ばすため、公称部数と実売部数との間にかなり差があるのは、出版界で半ば常識だが、何ごともやり過ぎはよくないもの。3年半にわたってダミー会社が新聞を買い取り、「実売部数」も水増ししていたとして、星島グループの英字紙『ホンコン・スタンダード』の幹部3人が18日、汚職取締署(ICAC)により起訴された。
しかし、問題は3人の起訴状だ。「(同グループ会長の)胡仙と共謀し、様々な違法手段で、部数を水増ししていた」とあるのに、肝心な「共謀相手」の胡仙女史は起訴されずじまいなのだ。
『星島日報』は、万金油(タイガーバーム)で財をなした胡文虎が、戦前創刊した新聞。胡仙女史は胡文虎の娘で、21歳の時で『星島』を引き継ぎ、姉妹紙の発行や不動産投資で星島グループを拡大。「アジアで最も資産の多い女性」とまで言われたほど。また92年に江沢民・国家主席と会談してから、それまで中国のことをわざわざ「中(共)国」と書くなど、国民党寄りだった紙面を修正。共産党幹部らと密接になり、全国政協の「香港人特別招待者」にも任命されている。
このため18日付の他紙は、梁愛詩(エルシー・レォン)司法長官が手心を加え、起訴を逃れたのではないかと一斉に報道。董建華(C・H・トン)行政長官は18日、「梁長官にはしかるべき時に釈明させる」とコメントしているが、その董長官自身も89年から7年間、星島グループの取締役をしていたのだから、たいした「釈明」は期待できそうにない。
1998/3/23
ヤクザも企業化?ショバ代は「配当収益」に
映画では義理人情の世界として描かれることが多いヤクザだが、実際には組織の近代化、企業化、国際化が進んでいるのは、日本も香港も同じ。伝統的なシノギの一つであるショバ代の取り立て方も、最近では「企業化」が進んでいるようだ。
警察は20日、屯門ニュータウンの大興団地を縄張りとし、団地内の屋台から10年間にわたってショバ代を徴収していた暴力団「新義安」を摘発し、8人を逮捕した。警察ではショバ代徴収の証拠をつかむため、2ヵ月間にわたって屋台を経営し、私服刑事が情報を収集したが、その結果、判明したヤクザの新手のショバ代の取り立て方法とは…。
新義安は繁盛している屋台を見つけると、金を巻き上げるどころか逆に金を渡し、「ワシらも資本参加するで、えやろ!」と強要。そして毎月、売り上げに応じて200〜3500HKドルの「株主配当金」を徴収し、大興団地だけで毎月6万HKドル以上の「配当収益」を上げていたという。屋台主に紛した私服刑事は当初、雑貨を売っていたが、ヤクザたちに「利潤が少なく『投資』のウマ味がない」と見られて相手にされず、途中でラーメン屋に商売換えしたとのこと。
かねてから、香港のヤクザは屋台からショバ代だけを徴収しているわけではない。取り締まりの目をかいくぐって営業する違法屋台にとって、ヤクザは不可欠な存在だ。見張り役を引き受けるほか、捜査官が来れば合図で知らせ、いざとなれば捜査官にチンピラがわざと抵抗し、その隙に他の屋台を逃がす。運悪く検挙され屋台と商品を没収されても、ヤクザは商品の共同仕入れや屋台のリースを行っているから、翌日から営業を再開できる仕組み。ある意味で、ショバ代に見合うだけのサービスは提供しているということ。
香港で「ヤクザ=悪い人」という意識が広まったのは最近の話で、70年代までは何かにつけてワイロをせびり取っていた警官こそが「悪い人」。それならば、いざとなれば助けてくれるヤクザにショバ代を払ったほうがマシということ。
深夜の暴走ミニバス、地獄へまっしぐら
香港に生活していて何が便利かと言えば、終電を気にせずに夜遊びができるということ。「深夜の足」の主役は16人乗りのミニバスで、夜中でも数分おきに走っているし、乗り降りは原則としてどこでも自由。猛スピードで突っ走ってくれるスリルな俊足ぶりもありがたい。
しかしスリルがあれば、それだけリスクを伴うというもの。深夜のミニバスは、しばしば死傷事故を引き起こす。22日早朝には旺角から上水へ向かっていたミニバスが、前を走っていたコンテナ車に激突。運転手の朱紹彭さん(58)が死亡し、乗客16人全員が重軽傷を負う惨事となった。
23日付『東方日報』が伝えた、朱さんの同僚たちの話によると、朱さんはもともと慎重な性格で運転もおとなしく、「終点まで走るのに、他の運転手たちと比べて、いつも10分以上余計にかかっていた」そうだ。しかし朱さんは広州に住む妻に仕送りするため、毎日17時間働いており、事故当時は居眠り運転をしていたらしい。
ミニバスの運転が荒いのは、飛ばせば飛ばすほど稼げるから。ミニバスには赤ラインと緑ラインの2種類があり、赤ラインは運転手の個人経営で、売り上げは自分のもの。だから「まだまだ稼ぎ足りない」という運転手たちのおかげで一晩中走っているし、台風上陸でバスが止まれば、「今こそ稼ぎ時」と運賃を値上げして荒稼ぎをする。一方、緑ラインのミニバスは企業経営で、運転手は会社に雇われているのだが、給与は歩合制がほとんどだから、これも水揚げが多ければ、それだけ運転手がもうかる仕組みだ。
満席になれば目的地へ急ぎ、折り返す回数を増やせば収入が増える。ガラガラならガラガラで、前方を走るミニバスを追い抜いて、途中から乗る客を奪ってやろうと、やはりアクセルをふかす。
深夜の街でデットピートを繰り広げるミニバスが怖いという人は、最近では2階建てバスの終夜運転も増えているからそちらへ。でも、これまた最近よくひっくり返るんだけどね(笑)
返還で出没した両替老人、「無許可屋台」で逮捕
そういや香港返還の前には、おせっかいな日本のマスコミに「返還後の香港はどう変わるか」と勝手な予想をされていたものだが、返還でいきなり変わったのは、エリザベス女王の肖像が刻まれた香港ドルの旧硬貨を、あまり見かけなくなったこと。政府は「市民が旧硬貨を一斉にため込んでしまったため」と説明していたが、硬貨は何十億枚も出回っていたんだし、いくらなんでも怪しい。やはり「もう英国じゃないのに、女王は相応しくない」と、政府が秘かに回収したんじゃないの?と勘繰りたくなるもの。最近では小銭不足もだいぶ緩和されたようだが、セブンイレブンでは1ドルや50セント単位の価格設定が増えような気がする。
そんな小銭不足に目をつけて、暗躍していたのが「両替老人」だ。毎朝銀行の前に並び、開店とともに小銭を両替。銀行の小銭が品切れになったところで、それに手数料を上乗せして、小銭が不可欠な商店主らに再両替して利ざやを稼ぐのだ。
24日付『東方日報』によると、旺角のネーザン・ロード沿いにある香港上海銀行前は、お昼時ともなればこの種の老人たちが30〜40人現われ、道行く人に「小銭はいらんかね」と声をかけている。
老人たちの両替相場は、10セント玉200枚と20セント玉250枚を80HKドルで換えるというもの。1日で100HKドルくらいの手数料収入が稼げるそうだ。時おり怪しげな男たちが現われ、老人たちに小銭を追加供給しているとかで、同紙では「両替老人たちがすでに『集団経営化』している疑いも」と報じている。
これに対して警察では、老人たちを「無許可屋台」と判断し、過去4ヵ月前で17人を検挙した。しかし捕まったところで200〜300ドルの罰金を取られるだけ。それなら2〜3日でモトが取り返せるというわけで、小銭不足が続く限り「両替老人」たちの姿は消えそうにない。
再びキナ臭くなったマカオ、高官射殺される
97年後半から観光客の減少に悩んでいる香港だが、同じ苦しみを味わっているのがお隣りマカオ。96年秋にカジノの利権をめぐって、ヤクザ同士の抗争が続き、組幹部が射殺されたり、カジノやホテルに爆弾が置かれるといった事件が連続。おかげでマカオへ繰り出す香港人は激減し、ホテルもカジノもフーゾク店も、閑古鳥が鳴いてしまった。
しかし昨年夏、カジノ王ことスタンレー・ホー氏の口利き(?)で、ヤクザ同士の「手打ち」が成立。最近ではきな臭い事件もだいぶ減ったかと思いきや、マカオ政庁の高官が街中で、白昼ヒットマンに射殺される事件が起きた。
殺されたのは賭博監察庁のフランシスコ・ピント・ド・アマラル庁長(45)。24日午後1時50分頃、リスボアホテル近くの南湾大馬路を歩いていたところ、背後から近寄ってきた男が至近距離から頭をめがけて銃撃。アマラル庁長は病院へ運ばれたものの、ほぼ即死の状態だった。
アマラル庁長はマカオ政庁で、カジノを管轄する部門のナンバー2。25日付『天天日報』によると、昨年5月の就任以来、カジノの利権をめぐるヤクザの抗争に対して厳しい姿勢で臨み、カジノ内を縄張りとし負けが込んでいるギャンブラーに高利で金を貸す「畳碼仔」と呼ばれるチンピラを、カジノから締め出す強硬策を採っていた。また「ある勢力」がバックについたカジノ開設申請を先送りにするなどして、相当うらみをかっていたようだ。
ちなみに、アマラル庁長の上司にあたる賭博監督協調局長も、96年11月に何者かによって銃撃されて重傷を負い、いったん職場復帰したものの、すぐに脅迫に遭い、昨年4月ポルトガルへ帰国している。
マカオへ遊びに行くのは危ないから当面控えた方がいい?いやいや、そんな心配は無用。マカオはもとからカジノで成り立っている街だから、この種の事件は昔からのことで、今さらビクビクしても始まらない。むしろ当分フェリーは空くし、ホテルも安く泊まれるしで狙い目でしょう。
パスポートも領事館も、本物とニセ物は紙一重
入境管理処は27日、シエラレオネ共和国の「偽造旅券」を売りさばいていたとして、湾仔の移民コンサルタント会社を摘発。職員ら12人を検挙し、同国の「偽造旅券」232冊などを押収した。シエラレオネは西アフリカの小国で、29日付『東方日報』によると、同社では2万8000米ドルで土地を買えば、現地へ行かなくても国籍と旅券が取得できると宣伝。これまでに1500人以上が「偽造旅券」を購入していたという。
しかし、地元紙は「偽造旅券」と報じているが、あながちニセ物とは言い切れない。売っていた旅券は本物の旅券と全く同じだし、同社はもともとシエラレオネ政府公認で旅券を発給していたのだ。入境事務処では93年にも「偽造旅券」販売の容疑で同社を摘発したことがあるが、この時は本国政府が「同社社長は次期駐マカオ名誉領事だ」と説明し放免されていた。つまり、同社はシエラレオネのある高官と有力なコネを持ち、旅券販売権を獲得していたが、96年にクーデターが発生したためその高官が失脚。かくして同社が発給した旅券は「ニセ物」になってしまったということらしい。
かつて香港にはシエラレオネ領事館が存在した。とはいっても、本国政府から領事は派遣されず、ある移民コンサルタント会社社長が91年に「名誉領事」に任命されて開設したもの。大々的に旅券を売り出し「商売繁盛」していたが、92年に本国でクーデターが起きると領事館は閉鎖され、かわって今回摘発された会社が「移民総代理店」に任命された。ちなみに領事館はそのまま「レソト王国領事館」に転業し、レソトの旅券を売り始めた。
アフリカやカリブ海の小国にとって、香港での旅券販売は貴重な外貨収入だ。一方、これらの旅券を購入するのは、中国本土の人がほとんどで、「シエラレオネは英連邦加盟国なので、その旅券はビザ無しで行ける国が多く旅行に便利」という理由。特にメリットが大きいのは、旧・英国領だった香港にもビザ無しで出入りできること。シエラレオネへ移民するつもりなんかさらさらないのだ。
売る方も売る方なら、買う方も買う方…、ともかくニッポン人に生まれて良かったね。