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 一応、この歴史コンテンツは「なぜ戦争が起こったのか」をテーマに書いています。
戦争が起こる要因では、「国益の衝突」という視点は絶対に必要ですよね?
多くの場合、国益と地理とは不可分ですが。

 ええ。

 だけど単に「国益が衝突している」というだけで戦争が起こるわけではありません。
戦争が起こった要因を考える場合には、利害関係という合理的なことだけでなく、「個々の心理」もまた、大事な要素です。


 かって、イギリスの軍事評論家のリデル・ハートはこう言いました。







 「戦争を研究すればするほど、戦争の原因は政治的や経済的よりも根本的に心理的な理由であると気付くだろう。」








 「つまり"国益"という合理主義な面だけでなく、人間の心理・感情っつーのも大事なんだよ…」


 …ということを言いたいわけだお? このスリムな磯野家のパパは。



    


 ラミエルさん…リデル・ハートは歴史に名を残す軍事評論家。
それを「係長の席でユンケル飲んでそうなバーコードのおっさん」とは何事ですか?

 そこまでひどいことは言ってないお。

 他人の体のことをあけすけに言う人(?)は嫌われますよ。


 というわけで…ちょっと間をおいて、ここでは " 心理 " について語りたいと思います。

 「ムラムラして戦った、戦争できるなら誰でもよかった、今は反省している。」

 「諸君、私は戦争が好きだ。諸君、私は戦争が好きだ。諸君、私は戦争が好きだ。」

 「はやく戦争になぁ〜れ。」

 ……



第一次世界大戦への道

―― ハプスブルク帝国の滅亡 ――


第6話 "その名はコンラート(前編)"

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       ↑オーストリア

「 まともな隣国がほしい…」

        「 他人のことは言えないと思うけど 」






 さて、19〜20世紀にかけての世界では、いろんな同盟がありました。




露仏同盟


ロシア帝国     フランス
 + 



 今まで同盟国だったドイツ帝国はビスマルクの辞任後、我がロシアに対して冷淡になったクマ。
おまけにイギリスは、中央アジアで我がロシアがアフガニスタンに勢力を伸ばすのを妨害しているクマ。
よって新たな同盟国を探す必要があるクマ。

 ドイツのビスマルク外交によって、我がフランスは孤立を強いられているですの。
おまけにイギリスとはアフリカをめぐって対立しているですの。
何とか同盟国を見つけて、孤立から脱却しないと生き残れないですの。




独墺同盟


ドイツ帝国  オーストリア二重帝国
 + 


 ロシアの脅威に備えないと!

 激しく同意する。





日英同盟


日本帝国    大英帝国
 + 


 アジアでロシアが勢力を伸ばすのを、抑止しないといけませんわ。

 わうん、わうん。(←うなづいている)







 さて、気がついた点があるかと思いますが…

 どこかの国の脅威に備えるための同盟、だお。

 つまり、同盟ってのは基本的には防衛のためってことですか?

 防衛と圧力は表裏一体ですので、単純に防衛用とは言い切れないのですが…
まぁでも、防衛のためと言って差し支えないと思います。

 ようするに「牽制」だお?

 そうですね…しかし。

 しかし?

 かかし?












セルビア王国
 え? 同盟って「防衛」のためなんか?
そんなの初めて知ったで!


イタリア王国
 そんな珍説は初めて聞いたニャ!
同盟ってのは、積極的な侵略戦争のために結ぶものだニャ!


 激しく同意や!
同盟は防衛のためと言う奴は、根本から間違っているで!









 …という国もありまして。






 ロシアの兄貴、ワイはバルカン半島のほかの国と同盟を結びたいんや。
オスマン帝国に対抗するためや。

 OK、ではオスマン帝国への抑止力にするため、バルカン諸国が同盟を結べるよう、仲介してやるクマ。

 サンキュー、感謝するでロシアの兄貴。

 これでバルカン半島も安泰クマ。
余計な戦乱は避けられるし、バルカン半島での我がロシアの影響力も増すクマ。

 …( ロシアの兄貴…何か勘違いしとるようやな。)
( オスマン帝国からの防衛のために同盟を結ぶんやないで。)
( オスマン帝国から積極的に領土を奪い取るための同盟やで。)

 ……まぁいいか、わざわざ訂正するほどの勘違いでもないやろ。
このまま黙っとこ。

 ん? なにか言ったクマ?

 いや、何でもないで。あははははははははは!













 大セルビア帝国の建国に燃えるセルビア王国は今更だけど…
イタリアもまた、ずいぶんとやる気マンマンな国だお。

 統一後のイタリアはヤル気満々ですよ。
まずイタリアはフランスと対立した経緯があるので、基本的に反フランスです。









 我がイタリアの正当な領土でありシンボルであるはずのローマには、フランス軍とローマ教皇が陣取っているニャ。
邪魔だニャ、あいつらを追い出さないとイタリア統一が完成したとは言えないニャ。

フランス
 ああイタリアさん、お願いがあるですの。

 ………なんだニャ?

 今からプロイセンのビスマルクと、普仏戦争をするですの。
というわけで味方してほしいですの。

 誰が味方するかバーロー!
むしろ逆に、この機を逃さずローマに駐留するフランス軍を攻撃し、ローマ教皇もろともローマから追い出してやるニャ!

 …… つД`)







 ……ムラムラしてやった、フランスをボコれるのなら何でもよかった、今もあまり反省していない。






 ってわけでドイツのビスマルク宰相はん、対フランスってことで同盟を組もうニャ。

ビスマルク宰相
 いいですよ、こちらからもお願いします。
ドイツ帝国、イタリア王国、オーストリア帝国の3つで三国同盟を結びましょう。
そしてフランスを封じ込めるのです。

 ええええーーーーー! オーストリアも混ぜるのー?


 オーストリア帝国の領土には、イタリア人が多く住む場所があるニャ。
そこは未回収のイタリアであり、いずれ戦ってでも取り戻して統一したい場所だニャ。
ゆえにオーストリア帝国なんかと仲良くしたくはないニャ。

 んじゃ同盟の話は無しで。
せいぜい単独で列強フランスと対立してくださいな。
ああ勿論、オーストリア帝国と同盟を結ばないのなら、オーストリア帝国だって敵になるかもしれませんよ。

 ……


 仕方ないニャ、オーストリア帝国との間の領土問題は、ちょいと棚上げするニャ。







 ………。






 我がイタリアは統一したものの、国民には「イタリア国民」としての意識が根付いたとは言えないニャ。


 国民はみな愛国心を持たず、国家のことよりも自分のことばかり考えているニャ。
こんなことでは、我がイタリアは精神的に滅亡してしまうニャ。


 このため、国民には"政治的教育"が必要だニャ。






 そのためにイタリア国民を戦争に総動員し、勝利するニャ!
それこそが、愛国心を高める最も確実な方法だニャ!



 ねーねー、ビスマルクぅ。

 なんですか?

 我がイタリアは普仏戦争の際、ローマに陣取るフランス軍をボコって、ローマ教皇をバチカンに追いやったニャ。
ゆえにフランスは我がイタリアを敵視しており、宣戦布告する口実を探しているはずだニャ。

 だから先手を打ってフランスを攻撃しよう、と?

 三国同盟を結んだ仲なんだし、もちろんフランスをボコるのに協力してくれるニャ?

 三国同盟は防衛用の同盟ですよ。
そっちが先手を打って攻撃するのなら、我がドイツが貴国を助けて参戦する義務はありません。

 えー、そんなぁー……

 そりゃ統一時に色々と揉めたのは知ってますけどね、フランスが先制攻撃してくるなんて考えすぎですよ。

 フランスと我がイタリアは、地中海における永遠のライバルだニャ。
フランスの軍事力と革命の精神に屈している限り、我がイタリア国民は真の愛国心を持つことができないニャ!


 「かって我々を打ち砕いたフランス革命の精神が、今なお我々を脅かし、父祖の理想へ変えることを妨げている。我々はこの精神的鉄鎖を断ち切らなければならない。」

―― イタリア首相クリスピ


 よーするに、お前が個人的にフランス嫌いなだけかよ……

 ドイツはん、同盟国として、対フランス戦を支援してほしいニャ。

ビスマルク宰相
 あのな、イタリアよ…我がドイツが貴国と同盟を結んだのは、フランスの攻撃を封じるため…
つまりはフランスに対する防衛のためだ。

 フランスから攻撃されたのならともかく、こっちからフランスと戦争する予定なんか無いよ。
どーーーーーーしても戦りたきゃ、おまえが一人で勝手にやれ。

 えーーーーー? 折角、三国同盟を結んだのにーーー?

 いやだからな、三国同盟ってのはあくまでも攻撃された時のためであって…
なんでお前の野心に、こっちが付き合わないといけないんだ?

 ……


 もうすぐしたら、フランスはバスチーユ監獄襲撃から100年が経つニャ。

 ?

 この100周年を記念して、フランスは我々に対して侵略戦争を計画しているニャ!
だから先手をうってフランスを攻撃しようニャ!
これは侵略でも先制攻撃でもないニャ、安全保障のための防衛戦争だニャ!




| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
|  電波が強すぎます。. |
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             /
           //ビビビビビィィィ!!!
    どかーん!  _
       从";从 /||__|∧,
      (( ; ;"、; :(O´Д`)
     ((;";从.")と ))  ))つ
     `;Y ;"、 Y ノ ノ ノ
          (_ノ、_ノ



 陰謀論は2ちゃんでやれ!


 つーかね、戦争するお金はあるのですか?

 軍事費なら大丈夫だニャ。
国内の不況と税の減収なんか無視して、軍事費をイタリア統一以来の最大規模まで引き上げたニャ!

 アホが指導者になると、国民は悲惨だな。


 余計なお世話かもしれませんがね、国内の経済政策に力を割いた方がいいと思いますよ。
ただでさえ貴国の経済は「イタリア経済の暗黒時代」と呼ばれるほどにドン底なんですから。


 それに…フランスを敵視するのも結構ですが、おかげでフランスと関税戦争にまで発展し、輸出が落ち込んでいるのでは?
貴国にとってフランスは貿易で輸出総額の44%を占めるお得意さんなんでしょう?

 たしかに経済は輸出の激減もあってガタガタだニャ。

だけどそれは"精神的問題"にすぎないニャ。

よって、その解決のために時間を割く必要なんてないニャ。











 ビスマルクがイタリアの馬鹿げた扇動に乗らなかったおかげで、ドイツ帝国とフランス共和国の間に戦争は起こりませんでした。


 さて…ドン底の経済問題を「精神的問題」と思っていたお茶目な首相もやがて辞任…
その後、イタリアは急激な経済成長を遂げます。


 次の首相は社会主義色が強く、企業よりも労働者寄りの政治でした。
しかしこれを「社会主義に迎合する首相では、この国は駄目になる」「企業の利益を優先しないと、工業製品でイギリスやドイツとの競争に勝てない」と批判する人がいました。


 イタリア経済が急成長を遂げている間は、こういった批判は少なかったのですが…
経済成長のスピードが鈍ると、企業家は一斉に社会主義者(と思われている)の首相に対して批判を始めたのです。


 加えて、イタリア首相を悩ませたのが「ナショナリスト」と呼ばれる人々でした。

 ようするにネット右翼のことですか?
定義がいまいち定まっていない言葉ですけど。

 一口にナショナリストと言っても、いろんな思想の人がいますから。
ただ彼らの書いた文章には、共通して「戦争の価値」というテーマが登場しました。









 戦争は中産階級や資本家を活性化させ、イタリア国民に国家意識・目的意識を持たせる手段だニャ。

 戦争はイタリア国民に「理想のための死とは何か」を教え、馬鹿げた博愛主義を追放してくれるニャ。








 ・・・・・・・・・


 ヤル気満々なのは結構ですが、彼らはどこの国と戦争する気なんですか?
まさか本気でフランスと?

 いえ…「瀕死の病人」と言われるほど落ち目だった、オスマン・トルコ帝国ですよ。
もっと具体的に言うと、彼らの狙いはオスマン帝国の領土であった北アフリカです。

 なんで北アフリカだお?

 当時のアフリカは、フランスとイギリスが次々と植民地にしていました。
このまま放置したら、地中海はフランスとイギリスだけの海になってしまいます。
しかもイタリアは北アフリカのリビアに投資をしていましたので、そこが英仏の植民地になって回収不能になったら困るのです。


 さて「北アフリカをオスマン帝国から奪い取ろうぜ!」というナショナリストの主張に対し、政府は彼らをなだめようとしました。







 我がイタリアがオスマン帝国の領土を奪い取れば、同様にオスマン帝国の領土を狙う連中が、「俺も、俺も〜」と言って湧き出てくるニャ。


 そうなったら、東ヨーロッパ〜西アジアの秩序はグチャグチャになるニャ。
経済もそこそこ発展したんだし、紛争はおこさず現状維持でいこうニャ。


 「オスマン帝国の領土に所属する地域の併合は、この帝国の終焉を急ぐ人々に前例と刺激を与えてしまう。」

―― イタリア外相 トッティーニ







 しかし経済が停滞したこともあって、ナショナリストさん達はヒートアップする一方です。
バルカン半島の緊張や列強のアフリカ争奪戦で国際社会が緊張すると、彼らナショナリストの主張に耳を傾ける人も増えていきました。









 我がイタリアは、精神的にも物質的にもプロレタリアート国家だニャ。


 プロレタリアートは長い間、理念を持たずに分裂していたが、社会主義によって階級闘争が重要であることを学んだニャ。


 だが今度は我らナショナリストから、国際的な階級闘争が重要であると学ぶべきだニャ。







 「 しかしそのために戦争になったら、どうすればいいか?」


 「もちろん、戦争をしようではないか!


 「 ナショナリズムによって、戦争に勝とうとする意思をイタリアに燃え上がらせようではないか。」


 「 なぜなら、戦争とは国家救済の手段であり、『道徳命令』であり、国民に使命感を回復させる不変の手段であるからである。」

―― 劇作家エンリコ・コッラディーニ、1910年のナショナリスト全国大会にて









 社会党が首相を一丸となって支持していたら、首相の政治基盤も強化されて、こういったナショナリストの扇動も無視できたかもしれません。

 あれ? 首相って社会主義的な政策をとっているんでしょ?

 本物の社会主義者ではありませんから、支持基盤では企業よりの姿勢を取ることもありましたので。
くわえて社会党の中には、「政府とは一切の妥協や共闘などせず、労働者が政治・経済・権力を掌握すべきだ」というガチガチの連中もいましたからね。


 さらに警官が労働者のストに発砲して死者を多く出して「政府による労働者の虐殺」と非難されていたので、社会党も政府を支持しにくかったのです。


 こうして「ナショナリストからも社会主義者からも支持されない」という状況の中…
イタリアは北アフリカのリビアに侵攻し、オスマン・トルコ帝国と戦争を始めます。



1911年、リビア戦争 勃発
※またはイタリア・トルコ戦争、伊土戦争




 戦争を渋っていたイタリア政府がリビア侵攻を決めた理由は、2つあります。


 1つめ…北アフリカのモロッコをフランスが掌握したので、イタリア政府は「フランスがリビアにまで手を伸ばすかもしれない」と恐れていました。
イタリアはリビアに何年にも渡って投資をしていたので、それをどうしても守りたかったのです。


 2つめ…これは政府が国内の支持を獲得することです。
リビア戦争をおこせば国内のナショナリストも大人しくなるでしょうし、社会主義者も政府を支持せざるをえなくなるだろう、と政府は考えました。

 「国内の結束を図るために戦争をする」ってやつですか。

 ただこのテの戦争の歴史を語る際に注意してほしいのですが…



第一次世界大戦の前と後では、戦争に対する価値観が大きく異なる


 …ということを前提に考えてください。
当時は戦争・侵略というのは絶対悪ではなく、だからこそ「国内の結束の手段としてはアリだろ」だったのです。
そういった時代背景を理解しないと、「政府は支持を得るために戦争を始めるものなのだ、人民はその犠牲者なのだ」という史観にはまり、一人悦に浸るだけになるでしょうね。

 結果はどうなったんですか?

 戦争そのものはイタリアの勝利におわり、リビアはイタリアの植民地になりました。
しかしナショナリストたちは満足どころか、戦争指揮の不手際を非難するだけでした。
そして社会主義者は、政府を支持どころかリビア戦争そのものを批判しました。


 くわえてリビア戦争では巨額の戦費を消費し、住民はきわめて反抗的な植民地を抱え込むという、植民地経営で苦しむ国の黄金パターンを突っ走ることになります。







 …さて…イタリアの話はこれぐらいにして。


 オーストリア帝国では、こういったセルビア王国やイタリア王国の拡張主義を警戒していました。


 オーストリア帝国の西部にはイタリア人が多く住む地域があります。
イタリア王国の民族主義者はそこを"未回収のイタリア"と呼び、そこを取り返すべきだと叫んでいました。


 そしてオーストリア帝国内のイタリア人も、イタリア王国に統合されることを望んでいました。
彼らはたとえば二重帝国内の南スラヴ人のような、「なにもハプスブルク帝国の崩壊や、そこからの独立を望んでいるわけではない。自治権を与えてくれたらそれでいい。」というレベルではなく、はっきりと隣国イタリア王国との統合を望んでいました。


 くわえてオーストリア帝国の南では、セルビア王国の民族主義者が大セルビア主義を唱え、オーストリア帝国内のセルビア人を扇動していました。







 未回収のイタリア、未回収のイタリアァ〜〜〜〜!

 ボスニアはセルビア領、ボスニアはセルビア領〜〜!

 戦争バンザイ、戦争バンザーイ!

 大セルビア主義、大セルビア主義ぃ〜〜♪

 ………


 ………

 どうしたオーストリア、悩み事があるなら聞いてやるクマよ。
ただしバルカンのスラブ人国家の国益に反することは聞けないけど。

 そうよオーストリアさん、悩み事があるなら聞いてあげるよ。
あ、でもバルカン半島に鉄道を通して経済進出するのは止めないけどね。
ちょっとオーストリアさんの経済圏とは衝突しちゃうけど、いいでしょ別に。

 ………

 戦争バンザイ、戦争バンザーイ!

 大セルビア主義、大セルビア主義ぃ〜〜♪

 汎スラヴ主義、汎スラヴ主義〜♪

 バルカンに経済進出、経済進出〜♪

 ………






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       ↑オーストリア

「まともな隣国がほしい…」






 いや、あんたも他人のことは言えませんから。

 イタリアとは三国同盟で同盟関係にあるとはいえ、イタリアで " 未回収のイタリア " の領土回復運動が盛り上がるほどに、オーストリア帝国は警戒を強めることになります。


 くわえてボスニア危機でセルビア王国との仲が致命的に悪化。
そして帝国内では民族の自治要求が日に日に強まっていきます。


 この内憂外患な状況を打開すべく、一人の人物が声をあげました。

その名はコンラート・フォン・ヘッツェンドルフ

栄光あるオーストリア・ハンガリー二重帝国の参謀総長です。






コンラート
 今、わが二重帝国は危機に瀕している。
西ではイタリア王国が"未回収のイタリア"を唱え、我が二重帝国の領土を狙っている。


 そして南では…セルビア王国が大セルビア主義を唱え、我が二重帝国内のセルビア人をはじめとする南スラヴ人を扇動し、分離主義に走らせている。


 そして厄介なことに…イタリア王国が敵になればアドリア海の経済圏が、セルビア王国が敵になればドナウ川の経済圏が危機に晒されるだろう。
海外に植民地を持たない我が二重帝国は、この2つの経済圏を死守せねばならない。


 この危機を打開するのには、受身でいては駄目だ。
積極的に、果敢に立ち向かう姿勢こそが、この帝国を救うことができるだろう。


 では、我々はどうするのか。


 セルビア王国とイタリア王国に対し、こちらから予防戦争をしかけ、この2つの国を撃滅するのだ!


 そしてセルビア王国は、完全に我が二重帝国内に併合せねばらない。
問題から逃げず先送りせず、今ここで根こそぎ消滅させる信念こそが、この二重帝国を救うことだろう!











→ 第7話「その名はコンラート(後編)」に続く。

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