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 「キッズ・goo」という検索サイトを知っていますか?

 小学生用の検索サイトだね。

 そこの検索サイトで、ちょっとこのサイトを検索してみて下さい。

 えーと…「歴史のお部屋」、と…OK,打てたよ。

 おや、いちばん上に表示されたではありませんか。
ありふれた名前だというのに。

 なんか嬉しいね♪ ではためしに押してみようかな〜「ポチ」


 ………


 あれれ? 表示されないよ?

 なんか「フィルタリング」に引っかかったようですね。
コレはいったい何なのでしょうか。

 この「キッズgoo」では、子供にとって有害と判断されるサイトは表示されません。
つまりこのサイトは有害指定されたワケでつ。





                              ヽヽ     ヽヽ
   ─┼─  \__l_ __ヽヽ \/ ヽ   ̄ ̄   ─┼─
     |  ヽ  (ソ  )   /   /   ,へ、 ──     |
    ◯ ̄)           \  (__   /  /|    \__
           ___ ____ __      ̄ /   |
         /  /   /   |   _/    l_.      |   l
         /   /   /   /ヽ / \    |  ヽ     |   |
        /  /   /   /  \    \   |   ヽ
        ヽ  ヽ   ヽ   ヽ   /      \ |   ヽ   ─┼─
         ヽ__ヽ___ヽ___ノ  /  /\   V /\ l:   ─┼─
            ヽ_(_____/     ヽ ̄ ̄/  /     ○ ̄ヽ
                 \   ヽ     ヽ  /  /\      |
                   \   ヽ    `./   /  |___    |
                     \  /ヽ.      /  /  /. ──┼
                       \/   ̄ ̄ ̄ ̄  /_O_./     ○|
                        \___○__.ノ        ノ




 ふざけおって!
「歴史の嫌いな人でも興味をもってほしい」という教育的な趣旨で、分かりやすくマンガ形式にしているのに。

 「キッズ・goo」では、どうやら昨今の保守・右傾化路線を有害認定しているようですね。
「嫌韓流」「自虐史観」で検索しても表示されません。
ちなみに朝鮮総連は表示されますが。

 なんともまぁ、分かりやすい基準ですわね。
スパイ組織と変わらない朝鮮総連よりも、たかがマンガのほうが子供に有害なわけですか。

 まったくでつ、右傾化路線が有害だって?
このサイトのどこが昨今の保守・右傾化路線なのでつか。

 いやノーマッド、それちょっと怒るポイントがズレてますわよ。

 保守・右傾化路線のサイトでは、だいたい以下の傾向があります。
それとこのサイトとを比較してください。



傾向その1、 「ロシアは日本の宿敵であり、侵略好きなDQNである!」

  → ロシアはロシアで、生き残りに必死であると主張


傾向その2、 「皇位継承では、女系を認めずに男系であるべきだ!」

  → 男系派の言い分の多くは、愚かな言いがかりであると主張


傾向その3、 「日本国憲法はアメリカに押し付けられたものである!」

  → 日本国憲法は、日本人の意思によって受け入れられたと主張


 言われてみたら世界史コンテンツの中では珍しく、左よりな方々と共通する主張が多いですわね。

 それなのに勝手に保守・右傾化路線に認定しやがって!
てめーらはちゃんと中身を読んで確かめたのか、ああ?

こうなったら徹底的に子供には見せられない有害サイトを目指してやる!
テーマは「もっと過激に!もっと大胆に!」

 いけいけ、GO!GO!

 え・・・えーと・・・・

 フランス革命の指導者ダントンは、こう言いました。


  /      /        ,. -r―-- 、 __     ヾ、
  /    /   / /  |:::::::::\::::`ヽ ̄``iー-、 ヽ!
. /     /  / /     !``丶、:::ヽ丶、``丶、__  ノ
/    ,ィ´ / /       l\__  `ゝ-、、ト 、::<`/
  / !/ /         !\\   ,r=、l::ヽ\::ヽ
 /  l  /         |,.--``ヽ、 f、::} !:::ヽ´\ヽ
 ヽ r'  〈|        l,r='    、゙'-'‐ ',\::ヽ ヽ!
  ヽヽ   !         l         〉   !ヽlヽ:::',
--、、  ヽ l          !\      _   l:',::\ヽ!
  \```!           !`丶ゝ   (_j  ∧:ト、:::ヽ、 
    /ヽ l         l         ' ∧:l!| | ` ̄``
、  /  l            ト、          / l:!リ |
. ! |  l         !、:ヽ      _ノ   l!  |
 ! ノ'/!         |::::ヾ` ` ̄/--、____ _ ヽ|    ,、_,.、_
 `´  l           l、丶、\  !‐-,-、,、,_,、`ニ=-―'--tヽヽ- 、_,.、
     !           !ヾ=- ``   >' _         { 、ヽ_ 、} )、
.     l          ト、ヽ、         ``丶、      〉 !' = ) ,) ',
    |          !l ヽヽヽ  _        `丶    〉 , ')、'_,)   !
     !           |  ヽ '⌒ `⌒⌒`'`ー'`ヽ-、__ヽ  〉//、ノノ    !
    l         l   {_,、``__,´、_,´ ,.``ー_ ‐-、ヽヽ ( , 〉)}´    }
      ゙、           l  !Y´ヽゝ`ヾ´ヾY´ヽr‐、,.-'ヽ}Yr', ′    /
       ヽ          ゙、 !| ヽ-r `'`'`'_'´' __`'´_,.-'⌒ljヽ=ォ   /
       ヽ         ヽノ,!⌒ ヾ-'ー' ー'´ `´    l_〉ヽく  , ′
        ヽ        //;、_             人||__ヽ>'
          ヽ      ノ/,ィヽ ``      |     /  !j l
            \ , '´、>` |! \        !    /     !

 “ de l'audace, encore de l'audace, toujours de l'audace.”

     「大胆なれ、さらに大胆なれ、常に大胆なれ!」





ぱ き ゅ ー ん !




 耳に弾が、耳に弾がぁー!

 んなコトやっているから、有害指定されるんだよ。

 ……というわけで、こちらの「 キッズgoo はじかれサイト同盟 」に加盟しました。














――― これより本編が始まります ―――









19世紀後半、バルカン半島
















 最初に、バルカン半島について簡単に説明しておこう。
19〜20世紀の世界史は、バルカン半島を理解できないと「何も分からず、暗記しただけに等しい」からな。
まずはこの地図を見て欲しい。



1910年におけるバルカン半島の言語分布図

【 スラブ語派 】
■ ロシア語
■ ウクライナ語
■ 白ロシア語
■ チェコ語
■ スロバキア語
■ ポーランド語
■ スロベニア語
■ マケドニア語
■ ブルガリア語
〔セルビア・クロアチア語〕
■ セルビア人
■ クロアチア人
■ モンテネグロ人

【 非スラブ語派 】
■ イタリア語
■ ルーマニア語
■ ドイツ語
■ アルバニア語
■ ギリシャ語
■ マジャール語

【 イスラム 】
■ トルコ語
■ ムスリム人
(セルビア・クロアチア語)
参考資料:地図で訪ねる歴史の舞台(帝国書院著)

 ごめんなさい、何が何やらサッパリ。

 海がドラクエだということは分かりますた。

 これでは私も分かりませんわ。 多数の民族が混じりあう場所ってことは分かりますが。

 スラブ語系を青・緑系で、スラブ以外を赤・黄色系で、イスラムを茶系でまとめたのだが・・・・
たしかにこれだけでは分からないな。
ではスラブ語系・非スラブ語系・イスラム系の3つだけに分けて、かつ国境線を記入しよう。




■ スラブ語系  ■ 非スラブ語系  ■ イスラム系

 ・・・・・・・・・・

 この地図から分かることを言ってみてくれ。

 バルカン半島って、オスマン・トルコの領土なのにイスラムが少ないんだね。
ほとんどヨーロッパ系じゃない。
しかも半分以上がロシアと同じスラブ系だね。

 もともとキリスト教圏(ビザンツ帝国)だったのを、オスマン・トルコが武力で併合した場所だからな。
もう1つ気がついて欲しいことがある、もう一度よく見てほしい。



■ スラブ語系  ■ 非スラブ語系  ■ イスラム系


 オーストリアにも、ロシアと同じスラブ系がとても多いですわね。

 その通り、ではここで問題だ。
ロシアがオスマン・トルコを戦争で破り、バルカン半島を支配したら・・・
そこのスラブ人はどういう反応をすると思う?

 え、えっと・・・・

 「イスラムの支配から解放されたぜワーオ♪」

「同胞ロシア帝国 ∩( ・ω・)∩ばんじゃーい!」


 そうなったら、オーストリアに住むスラブ人はどんな反応を示すと思う?

 「俺たちもオーストリアの支配から解放されてー!」

 あーなるほど、だからオーストリアは、ロシアがバルカン半島に進出するのを嫌うんだね。

 しかしそんなオーストリアの都合など、地中海に出たいロシアの知ったことではない。
かくしてバルカン半島は、ロシアとオーストリアの衝突の舞台となる。
しかも他民族がいる場所なので、独立運動や民族同士の衝突が絶えない。
おかげさまで武力介入する大義名分にはこと欠かないのだ。

 いい具合にグチャグチャでつね。

 バルカン半島を巡って激突するのはロシアとオーストリアだけではない。
ロシアの地中海進出を阻止しようとするイギリスも絡んでくる。

この19世紀後半のバルカン半島でおこった衝突を、「東方問題」と呼んでいる。





ロシアという国 …bT

帝国の逆襲 ― 後編










 1871年・・・ロシアは黒海艦隊の再建に成功した。
しかもフランスを破ってヨーロッパ本土最強となったドイツ帝国の後押し付きだ。


 ちょっと疑問に思うことがあるんですが…
クリミア戦争で負けてパリ条約を結んだのが1856年、パリ条約を破棄して黒海艦隊を再建したのが1871年ですわよね?

 そうだが?

 15年間も空いていますわよ?
15年間、ロシアはドイツに助けられるまで何もできなかったのですか?

 いや、クリミア戦争に負けた後からすぐに、パリ条約破棄の方策を探している。
具体的に言うと、ロシアに味方してくれる国をさがす事だな。

 プロイセン が味方じゃ駄目なの?

前回の話だと、プロイセンはクリミア戦争でも中立を通して、ロシアに感謝されたんでしょ?
なにも15年も待つことは無いと思うんだけどなぁ。

 おまえにしては良い意見だな。
たしかにプロイセンは基本的に親ロシアだが、しかし当のロシアは―――






 気持ちは嬉しいけど、プロイセンごときと組んでも役に立たないクマ。




 …と、まるでアテにしていなかった。

 ではどこの国を味方にするつもりだったのですか?

 おフランス だよ。

 え゛?? だってクリミア戦争で戦った相手でしょ?
パリ条約を押し付けた当事者じゃないの !?

 おフランスがロシアと戦争したのは、半分はナポレオン3世の人気取り&イギリスへのゴマすりだ。
少なくともイギリスほどに、ロシアの地中海進出を嫌がっていたわけではない。

 でも、こないだ戦争したばかりの国でしょ!?

 … もしかして、戦争は相手が憎いからやると思っていませんか?
… 国益が相反すれば戦いますし、一致すれば協力するのが外交です。

 ではフランスとロシアにとって、“共通する国益”って何ですの?

 イタリア をめぐる戦いだよ。

   ・
   ・
   ・
   ・

↓イタリア
 イタリア北部はオーストリア に支配されているニャ。

なんとか追い出して統一&独立したいニャ、だけど列強オーストリアには勝てないニャ。


 そうだ、フランスを味方につけるニャ。

↓フランス
 悪いけど、イタリアごときのために列強オーストリアと戦う理由が無いですの。

 だったらクリミア戦争では、フランスに味方して参戦するニャ!
いっしょに血を流すから助けてほしいニャ!

※当時はまだ「イタリア」ではなく「サルディニア」である

 ありがとうですの、おかげでロシアに勝てたですの♪
このあとでイタリアさんがオーストリアと戦うつもりなら、援軍を送ってもいいですの。
ただしイタリアの領土の一部はお礼にもらうですの。

 ありがとニャー♪

・・・・ってことで、覚悟しろやオーストリア!

↓オーストリア
 フランス君、この生意気なパスタ野郎をぶちのめすから協力してくれ。
クリミア戦争では、君を助けてロシアと戦っただろう?

 は? 最後にちょっと参戦したぐらいで、恩着せがましく言わないで欲しいですの。
いっしょになって多くの血を流してくれたイタリアさんの方が大事ですの。
・・・・ってことで、覚悟するですのオーストリア!

※ おかげで、後の普仏戦争ではオーストリアの協力が得られなくなった。

   ・
   ・
   ・
   ・

 というわけでフランスは、「オーストリアを孤立させようぜ作戦」をとった。

 分かりましたわ、そこでロシアの出番ですのね。
ロシアにしたら、パリ条約改正のためフランスに借りを作る絶好のチャンスですわね。


  


 その通りだよ。
そして利害の一致したフランスとロシアは、1859年に2国間協定を結んだ。

その内容は…


  1) フランス&イタリアがオーストリアと戦う時は、ロシアは友好的な中立を保つ。

  2) そのかわりにフランスは、ロシアのパリ条約の修正に協力する。


 「パリ条約の修正に協力」って・・・
パリ条約を結んでから3年しかたっていないのに、自分の都合で無しにしちゃうの!?

 …条約なんて、そんなモノですよ。

 内容を見たら分かるように、この二国間協定はロシアにとっておいしい条件だ。
参戦せずともパリ条約を修正するための味方が得られるのだからな。
しかしこの協定は企画倒れに終わった。
事情は以下の通りだ。

   ・
   ・
   ・
   ・

↓イタリア
 くらえ、猫パーンチ!

↓オーストリア
 うぎゃー!

 おらおら、ニャンプシー・ロール!

 ぐぼ!うがぁっ!

↓フランス
 ・・・・・・

 ニャハハハ! フランスの助けがあれば、オーストリアなんか敵ではないニャ!
このまま一気にイタリア北部からオーストリア軍を追放してやるニャ!
イタリアの国土完全統一まで、あと一歩だニャー♪

 御免なさい、私はここらで撤退するですの。
後はイタリアさん1人で頑張ってくださいですの。

 え゛?

   ・
   ・
   ・
   ・


 フランスはイタリアが勝ちすぎて強くなることを恐れ、途中でオーストリアと講和して撤兵してしまった。
フランスがロシアと組んで協定を結んだのは、オーストリアと戦うためだろ?
そのオーストリアと仲直りしたのだから、これでは意味が無い。

 なんじゃそりゃ!

 おフランスもやることが中途半端ですわね。
これではロシアにとってもイタリアにとっても印象が悪いでしょう。

※この後の普仏戦争では、フランスはイタリアの助力が得られないどころか、逆に攻撃されてしまう。

 そしてロシアとフランスは、相手のことをこう考えるようになった。


   ・
   ・
   ・
   ・

 何の成果もなかったクマ!
しかもフランスが撤退したんじゃ、まるでオレ様だけがイタリアの味方をして、オーストリアとの戦争を煽っているように見られてしまうクマ。

 何の成果もなかったですの!
もっと積極的に反オーストリアの姿勢を見せてくれると思ったのに、期待はずれですの。

   ・
   ・
   ・
   ・

 なんか好き勝手なこと言っているわね。

 お互いに相手のことを「こいつ、使えねー!」と失望しているところにトドメがかかる。
1863年にロシア領のポーランドで反乱騒ぎがおこったのだが…

 そういえば、当時のポーランドはロシアの領土でしたわね。

 この反乱に対し、ロシア政府は容赦せず鎮圧にかかった。
すると他の欧米列強が「人権無視だ」とクレームをつけてきたのだよ。


   ・
   ・
   ・
   ・

↓イギリス
 あーら、ポーランドで市民が反乱ですって?
しかも反乱者を9000人近くもシベリア送りにしたそうですわね。
さすがはロシア、人権無視な国ですわ〜♪

※ちなみにこの6年前、イギリスはインド(ムガール帝国)で「セポイの乱」を鎮圧。
この時のイギリスのメディアは「イギリス兵が1人殺されたら、インド人1000人を殺せ」と主張している。


↓オーストリア
 まったく、こんな野蛮な国が列強だなんて恥ずかしいね。

↓フランス
 ポーランド人を虐待するなんて、ロシアは野蛮ですのー☆

※フランスが特に海外植民地を拡張したのは、この頃である。

↓プロイセン
 これはロシアの国内問題でしょ? 私はロシアを支持するわ。 (だからドイツ統一の邪魔はしないでね)

 ・・・・(おのれフランスっ!)

   ・
   ・
   ・
   ・

 フランスのこの態度は、ロシアにとって相当にムカつくものだったらしい。
二国間協定は死文化したとはいえ、一度は協力を約束した「友好国」だと思っていたからな。

 敵に非難されるよりも、味方だと思っていた人から非難されるほうが、たしかに腹が立ちますわね。

 そーいうコトだ。
そしてこの時プロイセンがロシアを支持したことから、ロシアはフランスよりもプロイセンとの同盟を考えるようになった。
まぁーアレだ、「条約を結んで友好国になっても、行動が伴わないと意味ナシ」という良い見本だよ。
このロシアとフランスの決裂は、後にフランスにとって「普仏戦争での孤立」という形になって返ってくる。



 とまぁ、ロシアはロシアなりにパリ条約の破棄に向けて努力していたんだよ。
こうして1871年…普仏戦争で欧米の目がそれたチャンスを逃さずに、ロシアは黒海艦隊を再建する。
イギリスやオーストリアは反発するが、 “ 新生・統一ドイツ帝国 ” がロシアを支持したため、結局はロシアの条約破りを認めざるをえなかった。

 あー、前回のお話ですわね。

 そして6年後の1877年にはオスマン・トルコに宣戦布告、これを露土戦争と呼ぶ。
日本では、ちょうど明治になって西南戦争をやっている頃だな。

 ちなみに、宣戦布告の大義名分は何ですの?

 オスマン・トルコ領であるバルカン半島での暴動と、パン・スラブ主義(汎スラブ主義)だ。

 なに? 「パンツ・ラブ主義」?







ぱ き ゅ ー ん !


 耳に弾が! 耳に弾がぁ!

 「まいっちんぐ」なんて、いまどき誰も知らねーよ。

 ・・・・・ばか。

 パン・スラブ主義とは、ロシア以外の地に住むスラブ民族たちが、

「我々はスラブ人であることを自覚し、スラブの言語・文化を大事にしよう!」
「スラブ人は団結しよう!」


という思想・運動のことだ。


 最初は単に「他民族の国にあってもスラブの文化を大事にしよう」という程度だった。
しかしやがて政治化していき、

「オーストリアやオスマン・トルコに支配されているスラブ人を解放しよう」
「大国ロシアが、すべてのスラブ民族の保護者になるべきだ」


という思想になっていく。

 「解放」って、よーするに「スラブ人は故郷のロシアに帰ろう」ってこと?

 んなワケねーだろ。
バルカン半島をロシア領にするか、または独立して新たなスラブ人国家を建設することだ。

パン・スラブ主義は、オーストリアやオスマン・トルコにしたら、国内の民族紛争の火種でしかない。

もちろんロシアの民族主義者にとっては大歓迎だがな。
スラブの同胞を救え!という軍事介入の口実になる。


 ほどなくチャンスはやってきた。
1875年にはボスニア人が、翌1876年にはセルビア人、モンテネグロ人、ブルガリア人がオスマン・トルコ帝国に対して蜂起する。
説明の流れを聞いていたら予想はつくと思うが、みなスラブ系の民族だよ。



1875〜1876年の反乱



…オスマン・トルコ領内の自治領、または事実上の独立国



 ミントに質問だ、お前が19世紀のオスマン・トルコ皇帝だとして・・・
領地で独立派が暴動を起こしたらどうする?
しかも彼らが、はっきりとトルコ朝廷に宣戦布告したら?

 そりゃあ武力で鎮圧しますわよ。
放置したら、他の少数民族も蜂起して収拾が付かなくなりますわ。

 するとロシアが介入してくるわけだ。
1876年にオスマン・トルコ軍による反撃でブルガリア人が虐殺されると、それを口実にロシアはオスマン・トルコに宣戦布告する。



オスマン・トルコ軍による反乱鎮圧(1876年)と、
ロシアのオスマン・トルコに対する宣戦布告(1877年)





 オスマン・トルコは領内のキリスト教徒、とりわけ我がスラブの同胞であるブルガリア人を弾圧しているクマ!
オスマン・トルコの残虐非道な圧制を糾すべく、宣戦布告をするクマ!
これは正義と人道の戦争クマ!






 まぁオスマン・トルコの異民族統治が満点ということはない。
そもそもバルカン半島は、オスマン・トルコが武力で無理やり併合した場所だからな。
この時のオスマン・トルコは、スラブ人の反乱者に対して容赦せず、ブルガリア人の犠牲者は2万人とも言われている。

 … しかしロシアに異民族の迫害を非難する資格は無いです …
… ロシア帝国は、領内のユダヤ人を弾圧・虐殺していたのですから …



 「ユダヤ人の歴史(下)」 ポール・ジョンソン p 86-89

ロシアのユダヤ人に対する険悪な処置は現代世界史における重要な事実の一つであり、詳細に検討する必要がある。
まず第一に了解しなければならないことは、ツァー政権はごく初期から無慈悲な敵意をもってユダヤ人を見ていたという点である。他の独裁政府は、オーストリアやプロセイン、そしてローマでさえも、あいまいな態度を保持していた。ユダヤ人であるという理由で迫害するかと思うと、ユダヤ人を保護し、利用し、搾取することもあったのである。
それに対し、ロシア人は常にユダヤ人を、受け入れることのできない異分子として扱った。
1772年から95年にかけてのポーランド分割までは、多かれ少なかれ彼らはユダヤ人を自分たちの領土の外に留めておくのに成功していた。ポーランドの領地を望んで手に入れた結果、膨大な数のユダヤ人を抱えることになり、政府は、「ユダヤ人問題」を「解決する」ために、同化か追放という方法で対処し始めたのである。

※ ツァー政権 : 「ツァー」「ツァーリ」とはロシア皇帝を意味する。ツァー政権とは、「ロシア皇帝の政権」の意味。


 同上 p 98-99

近代ロシアで最初のポグロムは、1871年にオデッサで起こった。それは主にギリシャ人の商人に扇動されたものだった。1870年代に起こった騒動には多くの場合、民族的要素が絡んでおり、中でもスラブ民族主義者が、アンティ・セミティズムにおいて特に暴力的であった。

※ ポグロム : ユダヤ人に対する集団的・計画的虐殺。特に、19世紀後半から20世紀初頭にかけてロシアを中心に起きたものをいう。
※ アンティ・セミティズム : 反ユダヤ主義のこと。





 「戦争しかけて不凍港ゲットしてぇー!」と、哀しいほどに本音がスケスケですわね。

 しかし実を言うと、皇帝アレクサンドル2世はあまりノリ気ではなかった。

 皇帝はいい人だから?

 そんなわけないでしょう、単純に損得勘定だと思いますが。

 ロシアがバルカン半島に軍事介入すれば、結果に関係なくオーストリアが難色を示すのは分かりきっている。
当時のロシアは1873年にオーストリアと「シェーンブルン協定」を結んだばかりだったからな。

 シェーンブルン協定? どんな内容なのですか?

 簡単に言うと「バルカン半島は、あくまでも現状維持で。」という約束だよ。

 ロシアも、よくそんなのOKしましたわね。
自分の手足を縛る内容だと思うのですが。

 見方によっては現状追認……「オーストリアはロシアの黒海艦隊の再建を認める」ことになる。
当時のオーストリアは、ドイツがフランスをあっさりと撃破し、ロシアがパリ条約をあっさり破って艦隊を再建するのを目の当たりにしたため、こう考えた。




 これが新しいヨーロッパの体制なのだ。
この現実を受け入れて、ドイツやロシアとは妥協政策を取ったほうがいいな。




 こうしてオーストリアはロシアとシェーンブルン協定を結び、そこにドイツが加わって三帝同盟が結成された。

 どうしてドイツまでもが、ロシアとオーストリアとの同盟に参加してきたのですか?

 当時のドイツ帝国は統一したばかりで国内が整わず、しばらくは内政に専念しないといけない。
まぁ他国と戦争ができる状態では無かったわけだな。

 つまり「ジョゼフィーヌ、今日は疲れているからダメなんだ」な状態でつね。

 じょぜふぃーぬ? ごめん、それどういう例えなの?

 …このテのネタは、いちいち説明すると面白さが半減するのが理解できませんか?

 私も分かりませんし、世界史に関係することなら興味ありますわ、教えて下さいよ。

 ジョゼフィーヌとは、ナポレオンの奥さんですよ。
ある時、疲れて寝ているナポレオンを部下が起こそうとして、チーズの匂いを嗅がせたのです。
すると寝ぼけているナポレオンは、ジョゼフィーヌがベッドに来たと勘違いして、

「…むにゃむにゃ…ジョゼフィーヌ、今日は疲れているからダメなんだ…むにゃむにゃ…」

と言ったのです。
よーするに「疲れていて戦闘できる状態ではない」という意味で用いられるおフランスの諺なのです。

 あーなるほど、そういう意味ね。

 でもなんでチーズの匂いなのですか?
ジョゼフィーヌさんの体臭なり香水なりが、チーズの匂いに似ているのですか?

 「チーズの匂い」というのはでつね、女性の体の―――



         ぱ き ゅ ー ん !


 耳に弾が、耳に弾がぁ!

 このサイトの品位を下げるなボケ!

 注)フランスにそんな諺などありません。

 コホン・・・地図を見てくれ、ドイツは周囲を全て列強に囲まれる位置にあるだろ?



1870年前半のヨーロッパ


※バルカン半島にはセルビア・ルーマニア等が半ば独立していたが、
名目上はオスマン・トルコの領土であるので、この地図では表記しない



 うん、たしかに囲まれているね。

 周囲を列強に囲まれているドイツとしては、フランスが敗戦の恨みでドイツを憎んでいる以上、せめてオーストリアとロシアを味方につけておく必要があった。
そこでドイツのビスマルクは考える。




 そーいやロシアもオーストリアも、わが国と同じく君主制だな。


 よし、キャッチコピーは「3ヶ国で君主制を守り続けようよ♪」でいくか。
オーストリアとロシアとで同盟を結べたら、当分はドイツの東で戦争の危機は無いだろう。
その間にドイツは国内の整備に専念できる。




 こうして1873年…シェーンブルン協定に追加する形で結ばれたのが三帝同盟だ。
ロシアにとっても、クリミア戦争以来ずっと孤立していた状態から救われる。
オーストリアにとっても、3ヶ国で同盟を結んだほうがシェーンブルン協定を確実に保障できる。
またドイツと手を結べば、仮想敵国であるロシアの脅威も減る。


1873年、三帝国同盟の結成




 なるほど…たしかにこれなら、ドイツを敵視するのはフランス1国だけですわね。
イギリスはヨーロッパ本土での覇権争いに興味ないですし。

 ・・・とまぁそんなワケで、皇帝アレクサンドル2世はオスマン・トルコと戦争する事には消極的だった。
ロシアがバルカン半島に軍事介入したら、オーストリアは間違いなくブチ切れる。
せっかく結んだばかりの三帝同盟に悪影響が出るからな。
同盟結成からたった3年しかたっていないし。

 ロシアって、とにかく何でも戦争できたらいいや、って国だと思ってますた。

 戦争は国益のためにやるものだよ、犠牲に見あう国益も見込めないのに戦うバカなど(普通は)いない。
無理にトルコと戦争したらオーストリアとの仲がこじれるし、最悪はイギリスまで敵にまわしてクリミア戦争の再現だからな。

 でもロシア皇帝は戦争回避を望んだのなら、どうして結局は露土戦争に突入したのですか??

 さきほど話したパン・スラブ主義だ。

皇帝は消極的でも、ロシアの世論は別だよ。


 オスマン・トルコが反乱を起こしたブルガリア人を残虐に弾圧すると、ロシアの国内には

「オスマン・トルコをブチのめして、スラブの同胞を救うべきだ!」

という声が沸きあがり、パン・スラブ主義を唱えるロシアの軍人は、バルカン半島に出かけて義勇兵として戦闘を始めたのだ。

 そんなことしたら、オーストリアのかんしゃくが爆発して、三帝同盟にヒビが入りませんか?

 パン・スラブ主義者たちは、基本的に三帝同盟には反対だったからな。
彼らはオーストリアをバルカン半島進出のライバルとしか見ていない。

 でも他国と協調せずにバルカンに進出した結果が、クリミア戦争での孤立と敗北だったと思うのですが…

 他国と交渉で利害を調整するのは堅実だが、しかし骨が折れる上に我慢と妥協を強いられる。
それを嫌って強硬策を唱える “ 冒険的な国粋主義者 ” は、古今東西いくらでもいるよ。
この日本だって、「北朝鮮の万景峰号を撃沈せよ!」とTVで叫んだ議員が、「愛国的だ」と喝采されているだろ?
自分の理屈や正当性を唱えることはできても、「それが何をもたらすのか、周囲からどう解釈されるか」までは考えないんだよ。
しかも指摘すると「この売国奴め」と言い返してくるからな。

 … 思想の左右を問わず「理念」を政治や外交に持ち込む人は多いですね。…

 皇帝アレクサンドル2世や弟の大公は戦争回避を望んだが、陸軍大臣ミリューチンは「名誉ある平和を得られないのなら、軍隊を引くべきではない」と主張して、開戦へと議論を牽引した。(和田春樹「ロシア史」より)
国内の開戦を望む声を抑えきれなくなったアレクサンドル2世は、「ブルガリア人を守る」という名目でオスマン・トルコに宣戦布告をする。




1877年、露土戦争 勃発

※ 「露」…ロシア 「土」…トルコ




 この露土戦争は、ロシアが南下政策によって一方的に侵略した、とは言えません。
くわしくは、番外編・綾波レイの補習授業で解説しています。

 では、ロシア政府に野心は無かったのですか?

 それとコレとは話は別だよ。
たとえノリ気でなくても、戦ると決まった以上は最大の成果を求めるのが国家の戦争だ。
「ブルガリア人を救え!」という大義名分とは別に、クリミア戦争の敗北で低下したロシアの威信の回復と、念願の地中海進出を果たす野心があることは、戦争後の講和条約を見たら明らかだ。

 で・・・・他の列強は露土戦争に介入せずですか?


   ・
   ・
   ・
   ・

オーストリア
 ← 中立

 ドイツ
 ← 中立、ってか国内整備で忙しいので関わりたくない

 イギリス
 ← 中立、でも結果次第では介入するつもり

 フランス
 ← 中立、自分には関係ない。 でもロシアが地中海に出てくるのはちょっと嫌

   ・
   ・
   ・
   ・

 あら、みんな知らんぷりなんだ。

 意外ですわね、オーストリアとイギリスは絶対に介入してくると思ったのですが。

 理由は2つある。
1つめは、オスマン・トルコがブルガリア人を虐殺したからだよ。
当時の国際社会は、「キリスト教徒がイスラム勢力に弾圧・虐殺されている!」と、どこの国民もオスマン・トルコを一斉に非難した。
オスマン・トルコの保全を国防方針としていたイギリスでさえ、ブルガリア人への同情の声が上がったのだ。
ちなみに下の絵は、当時のイギリスの新聞に掲載された木版画だよ。

イラストレイテッド・ロンドン・ニュース

トルコ人の暴虐から逃れ、ロシア軍に守られて
故郷に帰るブルガリア人の難民たち。


 もちろん政府は、内心では

「地中海に出てくるなよボケ、しつこいんだよオメーわよ!」 byイギリス
「バルカン半島に来るなよ、民族問題がややこしくなるだろ!」 byオーストリア


 ・・・と思っているのだが、しかし国民が

「ブルガリア人が可哀そう、がんばれ正義のロシア軍!」
「ロシア軍よ、オスマン・トルコを倒してキリスト教徒を救え!」


というムードでは、迂闊にオスマン・トルコの味方ができないのだ。

 あらま。

 んで、2つめは?

 事前にオーストリアに対して「お願い、露土戦争に介入しないでね☆」と工作したからだ。
まぁ逆に言えば、オーストリアがロシアの軍事介入を黙認すると答えたから、ロシアも露土戦争に踏み切れたんだけどな。

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   ・
   ・
   ・

 国内から「ブルガリア人を救え」と突き上げられて、戦争しないわけにはいかないクマ。
三帝同盟のよしみで、宣戦布告して本格的な戦争が始まっても、介入しないでほしいクマ。

 君は何を意味不明なことを言っているのだね?
そもそも三帝同盟は、バルカン半島の現状維持を定めたシェーンブルン協定を発展させたものだよ。

「ベルカン半島の現状維持を約束しあった仲だから、バルカン半島に突撃しても大目に見てくれ」

…って、それはひょっとしてギャグで言っているのかね?


 ロシアがバルカン半島に軍事介入したら、バルカン半島のスラブ人は民族自決で勢いづく。
国内に多くのスラブ人をかかえる私の身にもなってもらいたいな。

 なあに、かえって免疫がつくクマ。

 つくかっ!
国内のスラブ系は押さえることができたとしても、バルカンに統一スラブ人国家が誕生したら、隣の私には新たな脅威になるだろっ!

 じゃあストレートに質問するクマよ。
オレ様がどんな条件を飲んだら、バルカン半島に突撃しても、それを黙認してくれるクマ?

 ……


 ボスニア・ヘルツェゴビナを、私の属国にすることを認めてほしい。


      


 OK、アミーゴォ♪ 交渉は成立クマね☆

   ・
   ・
   ・
   ・
   ・

 あのさ…なんでボスニア・ヘルツェゴビナが欲しいの?

 私もまるで理解できませんわ。
そもそもオーストリアがロシアのバルカン進出を嫌うのは、自国のスラブ人にまでパン・スラブ主義が広まってほしくないからですわよね?

 その通り。

 ボスニア・ヘルツェゴビナを自分のものにできたら、それがチャラになるほどのメリットでもあるのですか?

 そんなに豊かで、喉から手がでるほど欲しい場所なの??

 いや…ボスニア・ヘルツェゴビナは、バルカン半島の中でも特に貧しい山だらけの地域だよ。
オーストリアがこの地域を欲しがる理由は別にある。
ちょっとこの地図を見てくれないか。

バルカン半島の言語分布図(1910年)


■ スラブ語系 ■ 非スラブ語系 ■ イスラム系


 では質問だ。

オーストリアはなぜ、バルカン半島にロシアが軍事介入するのを嫌がるのだ?

 最初に説明があったよね。
バルカンにパン・スラブ主義が広まると、オーストリアのスラブ系民族までもが、民族自決を唱えだすからでしょ?

 OK、では続けて質問だ。

具体的にはどの地域だ? 地図見たら分かるだろ。

バルカン半島の言語分布図(1910年)


■ スラブ語系 ■ 非スラブ語系 ■ イスラム系

 オーストリア領内でバルカンに隣接している場所だから……クロアチアとその周辺だね。

 今は独立している、ミルコ・クロコップ の国でつね。

 そのクロアチアに隣接している、同じくスラブ系の地域は?

 ボスニア・ヘルツェゴビナ……。

 ああ、理解できましたわ。
自国のクロアチアにパン・スラブ主義が広まるのを防ぐには、ボスニア・ヘルツェゴビナにパン・スラブ主義が広まるのを防がないといけないのですわね。

 その通り。 しかもその隣には、自治領のセルビア公国があるだろう?

バルカン半島の言語分布図(1910年)


■ スラブ語系 ■ 非スラブ語系 ■ イスラム系


 セルビア公国は、バルカン半島の中でも特に民族自決の理念が強い。
しかも彼らは単にセルビア人の民族自決だけではなく、

「バルカンの全てのスラブ人を“民族自決に覚醒”させ、セルビア公国に併合しよう」

…と、大セルビア帝国の建設を目指していたからな。

 「バルカンのすべての」って…オーストリア領のスラブ系はどうなるの?
いちおーはオーストリア南部も、バルカン半島でしょう?

 もちろん含まれる。
クロアチアの辺りには、セルビア人も多く住んでいるし。

※ 同じスラブ系でも……クロアチア人はセルビア人とちがい、正教徒ではなくカトリック信者である。
このセルビアの構想は、かなり無理があると言わざるを得ない。


 ……

 なんか伝染病みたいな連中でつね。

 かってオーストリアは、敵国オスマン・トルコへの嫌がらせで

「イスラムに支配されて悔しくなの? 武器をとって戦いなよ」

…と、セルビア人を扇動していました。
オーストリアにとっては「国防のために必要な手段」だったのですが、因果が巡ってきたのですよ。

 だったらさ、オスマン・トルコに

「ある程度の自治を認めてあげて下さい♪」

ってお願いしたらいいんじゃない?
そうしたらボスニア・ヘルツェゴビナの人たちも、満足しておとなしくなるんじゃないのかなぁ。

 おまえ、あたまいいなぁ〜。(棒読み)

 そもそもオスマン・トルコの異民族統治に問題があったから、反乱が起きたわけなんだが。
もちろんオーストリアは、オスマン・トルコに対して、

「反乱が起きないように、ボスニアのキリスト教徒への待遇を改善してほしい」

と書面で要請しているが、でも無視されているからな。
このまま放置したら、オスマン・トルコからの独立を求めるスラブ人はエキサイトする一方だ。




 もうトルコ朝廷には、ボスニアのスラブ人を平和的に統治する能力が無いな。

だったら私が統治するしかあるまい。

ロシアがそれを認めてくれるのなら、オスマン・トルコに宣戦布告してバルカン半島に突撃することも認めよう。





 なるほど…つまりパン・スラブ主義やセルビアからの防衛ラインにしたいわけですのね。

 そのとおり。
放置したら、たとえ自国のスラブ系民族にまでパン・スラブ主義が広まることはなくても、セルビアとボスニア・ヘツェゴビナとモンテネグロとが合体して、オーストリアとアドリア海の覇権争いに発展しかねないからな。




 オーストリアにとってベストな状態は、オスマン・トルコが平和的にバルカンのスラブ系を統治することです。
しかしそれは無理だと分かり、またロシアとオスマン・トルコの戦争も、いつまでも防げません。
だから苦肉の策として、戦争を認める代わりにボスニア・ヘルツェゴビナの直接統治で手を打ったのです。

 さて話を露土戦争に戻そうか。


 …とまぁこうしてどこの国も介入しない(できない)でいるいる間に、

ロシアはオスマン・トルコに勝ってしまった。

 あらま。

 ・・・・で、あの国は? まさかあの国が黙っているとは思えませんが。

 もちろん黙っていない。 もう形振りかまう気などゼロだ。

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 Fuck You!ぶっ殺すぞロシア野郎!

※セイバーファンの方、イメージを壊して申し訳ございません。

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 イギリスは2年前に大金を投じてスエズ運河を買収していたからな。
ここで地中海にロシア艦隊が進出したら、買ったばかりのスエズ運河が脅威にさらされる。
イギリスは艦隊を出動させ、ダーダネルス海峡を通過して、イスタンブールの前に停泊させたのだ。

 うは wwwwww なんてストレートな意思表示 wwwwww


 あれれ? ダーダネルス海峡って、どこの国の艦隊も通行禁止な中立地帯じゃなかった?

 この期に及んで、そんな条文をクソ真面目に守ることに何か意義でもあるのか?

 まぁ、ありませんわね。

 イギリスと戦う意思の無いロシアは、オスマン・トルコと講和条約を結んだ。
これをサン・ステファノ条約と呼ぶのだが・・・・・


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 サン・ステファノ条約の結果、前からオスマン・トルコからの独立を希望していた国々は独立する事になったクマ。
具体的に言うと、セルビア、ルーマニア、モンテネグロだクマ。
またブルガリアとボスニア・ヘルツェゴビナには、半独立国として自治権を与えるクマ。
なおボスニア・ヘルツェゴビナの行政は、我がロシアとオーストリアとの共同管理になるクマ。

※モンテネグロはトルコ朝廷に対して一切の服従も貢納もせず、むしろ露骨に敵対するという「実質は独立国」であった。
しかしトルコ朝廷は属国であると主張し続け、この帰属問題に完全に決着がつくのは、露土戦争の後である。

※ルーマニアは、クリミア戦争の頃までワラキア・モルダヴィアに分かれていたのが、合併した地域である。
ルーマニアの住民は非スラブ系だが、露土戦争では「反トルコ」でロシアに協力する。


 我がロシアの正義の闘いのおかげで、彼らキリスト教徒の国はイスラムから独立できたクマ。
また各民族ごとに独立したので、彼らも満足クマ。
良いことをした後は気持ちがいいクマ♪

 国名をゴチャゴチャ言われてたって、分かりませんわ。
地図を見せてもらえませんか? (^−^*)

 いいクマよ♪

サン・ステファノ条約によって独立した国々

ルーマニア 独立
セルビア 独立
モンテネグロ 独立
ボスニア・ヘルツェゴビナ 自治区として半独立
ブルガリア 自治区として半独立



 ふーむ・・・・・
バルカン方面のロシア領そのものは、さして増えてはいませんわね。
エカチェリーナ2世のように、大幅な領土拡張があるかと心配したのですが。

※しかし中央アジア方面での領土拡張には、インド防衛のために強く反発している。

 ちゃんと考えているクマ♪

 ところで、ブルガリアの領土が随分と大きいですわね。
ブルガリアの領土は、ばっちり地中海にも達していますし。
しかもバルカン半島の南半分を占める国になっているし。

 別にロシア領を増やしたわけじゃないからケンチャナヨ。

※韓国語で「大丈夫だよ問題ないよ」の意らしい

 ブルガリアってスラブ系だったか?非スラブ系だったか?

 ブルガリア人は我が国と同じ、スラブ系クマよ。

 ………(  ̄  ̄ メ)

 ……で、ブルガリアは自治領で、宗主国はあくまでもオスマン・トルコですのね?

 いや、できたての国は色々と大変だから、2年間はロシア軍が駐留して面倒を見るクマ。

 あははははは♪ もぉークマちゃんたらぁ♪

 てへ♪

 目を閉じろ!歯を食いしばれ!

 ク、クマー!? Σ(´Д `;)

   ・
   ・
   ・
   ・

 サン・ステファノ条約は、イギリスにとって受け入れられるものでは無かった。

どう見ても新ブルガリアはロシアの属国だったからだ。

 でも2年たったら、ブルガリアから出ていくって言っているんでしょう?

 それを信じろと?

 パリ条約を一方的に破棄した時点で、信用ゼロですわね。

 ロシアはブルガリアに軍港を築くこともできるし、またバルカン半島の南部分を支配下に治めることになる。
イギリスの外相ダービーは、ただちに「ロシア海軍が海峡を突破することは認めない」という書簡を送った。

 バービー?

 私の名はオービーでもバービーでもない、二度と間違えるなっ!

 ほらそこ、ジョジョネタ禁止。

 このダービーの書簡を見ただけでも、イギリスがいかにロシアを信用していないかが分かる。

 イギリスが反発するのは分かるのですが…
オーストリアは、露土戦争の前に「ボスニア・ヘルツェゴビナの管理を認める」という条件で手打ちにしたのでしょう?
なんでオーストリアまもでもが強硬に反対するのですか?

 世界最強のイギリスが反対したので、勝ち馬に乗ったんだよ。
そもそもロシアの軍事介入を認めたのだって、妥協してイヤイヤだったからな。

 三帝同盟の結束って、いったい…

 こうして、イギリスとオーストリアは

「サン・ステファノ条約を撤回せよ! いやなら戦争だ!」

という強硬姿勢を示したのだ。

 あらら、クリミア戦争の再現ではありませんか。
ドイツが味方と言っても、他国と戦争できる状態ではないし、そこまで義理立てするほどの利害関係じゃありませんしね。
どう考えても、いざ戦争になったらロシアは孤軍奮闘しないといけませんわ。

 また戦争ですか・・・・

 こうしてバルカン半島に緊張が走る中・・・
ロシアとは違う理由で「やばいって!これマジやばいってぇ!」
うろたえる国があった。


   ・
   ・
   ・
   ・
   ・

 皇帝陛下、これはマジやばすぎです。

 大丈夫よビスマルク。
ロシアとイギリス・オーストリアが戦争になっても、クリミア戦争と同じく中立で通すから。
今のドイツは対外戦争ができる状態では無いって事ぐらい、わきまえているわ。

 いや、今度ばかりはそれも出来ません。

 なんで? バルカン半島のゴタゴタに関わらないのは、貴方が言っていた方針よ?

 このまま戦争になると思いますか?

 そりゃあ、なるんじゃないの。
イギリスは絶対にロシアの地中海進出を認めないし、オーストリアもバルカン半島への進出を認める気は無いわ。
しかもイギリスが強気なので、勝ち馬に乗り換える気が満々だし。

 いや、おそらく戦争にはなりませんね。
戦争になったらクリミア戦争の再現だということはロシアも分かっているはず。
オーストリアが敵に回ると確定した時点で、2対1でロシアに勝ち目はありません。

 戦争の一歩手前でロシアが折れるってこと?
だったら尚更、何の問題も無いじゃないの。

 ロシアが我が国との同盟を求めるのは、イギリスやフランスと対立して孤立しているからですよ。
でもロシアが地中海進出を断念したら、ロシアとイギリスが敵対する理由は無くなります。
もしロシアとイギリスが組もうものなら、ロシアにとってドイツという国は必要ありませんね。
「ロシア・オーストリアと組んでフランスをけん制する」という、わが国の国防方針が根底から崩れます。

 でもさ、予想通りにロシアとイギリス・オーストリアが戦争に突入するかもしれないじゃない。

 その場合、三帝同盟は完全に崩壊します。
結果、やはり「ロシア・オーストリアと組んでフランスをけん制する」という、わが国の国防方針が根底から崩れます。

 …いっそ、どちらかに味方するってのは?

 参戦するのは論外です。
ロシアかオーストリア・イギリスかの、どちらか一方を完全に敵に回しますので。
そうなったら、フランス野郎は敵になった方の国と組んでドイツを圧迫するでしょう。
それに今のわが国は、戦争を避けて国内の整備に専念すべき時です。
統一してからまだ日が浅いですので。

 ・・・・・・・・どないせぇっちゅーんじゃい。
戦争を引き起こしてはダメ、和平になってもダメって、そんなの無茶苦茶じゃないの。

 わが国の主導でロシアとイギリス・オーストリアの間に和平をもたらす、これしかありません。

「本来なら間違いなく戦争だったのに、ドイツのおかげで回避できた」

というのが理想のシナリオです。
そうなればドイツは戦争に巻き込まれる事もなく、今後もロシア・オーストリアと仲良くやっていけます。
また新たにイギリスを敵に回すこともありません。

 口で言うのは簡単だけどさ・・・・
戦争を避けるには、ロシアには地中海進出を断念して、バルカン半島から撤退してもらうしかないのよ?

 まぁそうですね。
この点でイギリスが妥協することは考えられません。

 でもロシアからは「ドイツめ裏切ったな!」と恨まれないようにしないといけないのよ?
ロシアを怒らせたら、それこそフランス&ロシアで東西から挟み撃ちにされちゃうわ。

 とても難しいですが、やらざるを得ませんね。
交渉が決裂して戦争になるとしても、「ドイツは双方のために最善を尽くしたのだ」というポーズは取っておかないと。

   ・
   ・
   ・
   ・
   ・

 みなさん、戦争は良くありませんよ。
話し合いで解決しませんか?

 ・・・・・・・?


 なんでドイツが出てくるのですか?
ドイツは「バルカン半島の問題には関知しない」と明言していたはずですが。
ロシアが地中海に進出しようと、バルカンに勢力を伸ばそうと、ドイツには関係ない事でしょう?

 それは私が、平和を愛する誠実な仲介人だからです。






( ゚д゚)


(つд⊂)ゴシゴシ



「 誠 実 」



(;゚д゚)


(つд⊂)ゴシゴシ



「 誠 実 」



(;゚ Д゚) ・・・・・・・・・・



 誰もが耳を疑った。

「普墺戦争でオーストリアを、普仏戦争でフランスを撃破して、武力による統一を成し遂げたドイツが仲介人?」
「問題は血と鉄で解決される、と発言した『鉄血宰相』が平和を求めている?」
「バルカン半島の勢力争いには関知しないと言い切っていたのに?」

こうして露土戦争の後始末を話し合うべく、ビスマルク宰相の主導の下、ベルリンで列強の会議が開かれることになったのだ。

 1878年、ベルリン会議ですね。

 ってわけで、次回に続くぅ〜。










…… おまけ ……





↓ギリシャ
 ぴぴる ぴるぴる ぴぴるぴ〜♪  ぴぴる ぴるぴる ぴぴるぴ〜♪


 いやん ばかん うっふんダメダメ☆
そんなにムラムラしないで♪ お願いだから えいっ!

 何やってんだオマエ。

 あーら、こないだオスマン・トルコから独立したギリシャですわよぉ〜。
クマちゃんとは同じ正教なんだから、仲良くしましょ?





 それはいいけど、その見てて恥ずかしくなるアイコン画像は何クマ?

 ギリシャといえばギリシャ神話、美の女神アフロディーテですわよぉ〜ん☆

 それは見たらわかるクマ、でも下着なんて着けてたクマか?

 んもぉー、クマちゃんってばエッチねぇ〜。
アイコン画像のためにググル検索したら、なぜかブラジャーの画像が出てきたものだから。
せっかくだから、国旗のブルーにコーディネートして色も調整したのよぉ〜☆
しかもこれ、「ヌーブラ」と言って、紐なしなのぉ♪




 ヌーブラ アフロディーテ :: Nubra Aphradite

ストラップやベルトがない新感覚ブラジャー『ヌーブラ アフロディーテ』は、上品なレースをあしらった可愛くて、ゴージャス&セクシーなヌーブラです。フロントホックで美しい谷間とバストラインを演出します。





 さすが有害サイト
他国はみんなエロゲのキャラだし、まともなのは主役の俺ぐらいクマ。





  ←Fate

 ←朱 -Aka-

  ←月姫






 ところでロシアさぁ〜ん、クリミア戦争でオスマン・トルコと戦争するんですってぇ〜?

 そうクマ。 相手がオスマン・トルコなら楽勝クマ。

 だったら私も、ロシアさんに味方して戦いますわぁ〜ん ☆
我がギリシャは、かってはビザンツ帝国として周辺を支配していたのに、こんな小国じゃ我慢できませんわ。
めざせビザンツ帝国の復活!ってことですのよ、ウフフフフ。
オスマン・トルコ帝国をボコって、領土を拡張ですわ〜♪

 味方してくれるのは嬉しいけど、おまえ財政が破綻寸前じゃなかったクマ?

 ……


 ちっくしょーおっ!

こんな……こんなはずじゃ無かったのよぉ…こんなはずじゃぁぁぁぁぁ…
せっかくオスマン・トルコから独立したというのに…バラ色の未来が待っているはずだったのに…

オスマン・トルコの方が経済的に豊かだなんてっ !!!!


 しかも、我がギリシャ国民が

「だって、となりの土地の方が豊かだから。ここの農地は独立戦争で荒廃したし」

…と言って、よりにもよって私を苦しめてきたオスマン・トルコに流出していくなんて!

 農業が主産業の国で、それは痛いクマね。

 そーいうわけで、国民を奮い立たせるにはグレイトな夢が必要なのよ。
ちょっと内政も腐敗続きで、政府批判も多いしねぇ〜。

 自己改革できないから虚栄と民族主義にしがみついて周辺に迷惑をまき散らす、2流DQN国の黄金パターンを地でいっているクマね。
そんな自国がボロボロの状態で、他国と戦争なんてできるクマ?

 おほほほほ☆ だからこそ、他国に便乗して戦うんですの。
国力も無いくせに自分が主導して戦争するなんて、脳みそにカビが生えているアホのすることですわよぉ〜。

 言っていることは正しいけど、…何か根本的なところを間違っている気がするクマ。

 ってわけで、私と一緒にオスマン・トルコを ―――――

↓イギリス
 ほお…ギリシャさんは、クリミア戦争でロシアに味方すると?
ちょっと、ぶち殺されたいですか?

↓フランス
 その時は手を貸すですの〜。

 煤i゜д ゜;)


 ……や、やっぱり止めておきますわ〜(汗
クマちゃん、悪いけど1人で頑張ってねぇ〜 (はぁと







   そして月日は流れた…





 いいですか、ギリシャさん…
バルカン半島には今、「パン・スラブ主義」という思想が流行っています。
彼らはオスマン・トルコからの独立を強く訴えていますね。

 ………

 ギリシャさんはパン・スラブ主義者が「手を貸してほしい」と言ってきたら、どうしますか?

 オスマン・トルコは私にとっても敵ですので、手を貸しますわぁ☆

 パン・スラブ主義は、バルカン半島の秩序を崩壊させる危険な思想です。
そうなったら私の大事な経済植民地であるトルコと、そして地中海航路の安全がピンチにその元凶に加担したギリシャにとってもマイナスですわよ?

 えー、でもバルカンにもっと領土を拡張したいですわぁー…
そのためには、オスマン・トルコ領内の反乱分子とは手を結んでおいた方が…

 ギリシャさんには近い将来、バルカン半島の覇権を約束しますわよ。

 マジ!? 煤i゚∀゚ )

 というわけで、もしもセルビアのようなパン・スラブ主義の人たちが同盟を求めてきたら……

 はいっ!もちろん断りますっ!





ギリシャとセルビア公国(トルコの自治領)は、オスマン・トルコに対抗すべく1867年に同盟を結んでいた。
しかしイギリスの外交工作によって、ギリシャは「同盟を更新したい」というセルビア側の要求を拒否したのである。



   しかし…すぐにそれを後悔することになる。



 やいオスマン・トルコ! ブルガリア人を虐殺なんて許せないクマ!




  ボスニア・ヘルツェゴビナで起こった農民の反乱は、スラブの民族主義としてバルカン半島を揺るがした。


 オスマン・トルコに宣戦布告クマ!
バルカンのスラブ同胞を見殺しにはできないクマー!

 え ??!!


 そ、そんな!
パン・スラブ主義には味方しないつもりだったから、戦争の準備なんかしていませんわ!
せっかくの他国に便乗してオスマン・トルコの領土を奪うチャンスがっ!!!!



 政府の外交政策は無能だ!


 いやぁーっ! ただちに挙兵・侵攻するから、政府を非難しないでくださいっ!

 おせーよ、もう戦争は終わって、オスマン・トルコとは和平したクマよ。

 あら? ……ってことは……

 オスマン・トルコとギリシャとで、1対1の戦争クマね。
まぁ頑張るクマよ、たぶん勝てないと思うけど。

 そんなっ、オスマン・トルコと1対1なんて冗談じゃないですわっ!
イヤーッ、人殺しぃーっ!犯されるぅーっ!
誰か助けてーっ !!!!!








 列強はただちに介入し、オスマン・トルコがギリシャに宣戦布告をすることを止めさせた。

 ………



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