回 想
〜 初めての剃毛 〜

あれは私がこの御屋敷に初めて来た次の日の事でした。

あのような満腹感を感じた食事は初めてのことでしたし、

何もかもが私の知らない事ばかりで驚きの連続でした。



生まれて初めて寝た”フカフカのベッド”で目が覚めた私は、お礼を言いたくて部屋を出た。

この屋敷の中はとても広くて迷路のようだ。

何処へ行けば何があるのか、さっぱりわからずに困っていると女の人が声をかけてきた。

「どうかされましたか?」

昨夜の夕食の時に聞いた話では、この屋敷で働いている人のようだ。

綺麗な服が羨ましい。

私もあんな服を着てみたい。

「昨日のお礼を言いたいんだけど、何処に行けばいいのかわからなくて・・・」

「御主人様は外出されております」

そうか、居ないのか。

どうしよう。

困ったな。

「私は麻里花様のお世話をするようにと申しつかっております」

私は元居た部屋へ連れ戻された。

「御主人様がお帰りになるまで、このお部屋でお待ちください」

そう言われては仕方が無いのでベッドに戻った。

この部屋だけでも、以前住んでいた家よりも大きい。

そこに在る物は、全てが見たことの無い物ばかりだった。

どうしようか迷ったが、フカフカのベッドの上で一日を過した。

退屈はしなかった。

食事も部屋に用意してもらい、お腹いっぱい食べた。

これを”幸せ”と言うのかと思った。


家族にも食べさせてあげたかった。

だけどもう居ない…



夜になりあの人が部屋へやって来た。

皆は「御主人様」と呼んでいるあの人だ。

これでやっとお礼が言える。

「この邸はどうだ?」

私の目を真っ直ぐに見ながらそう言った。

しかしその目は私を見ているのではなく、私の心を覗いているかのように冷めた視線だった。

「みんな優しくしてくれるし、ご飯をいっぱい貰いました。ありがとうございました」

私は精一杯の感謝の気持ちを込めてお辞儀をした。

「何かお礼がしたいんだけど、私に出来る事ありませんか?」

こんな所に住んでいる人に対して私が出来る事なんて無いことはわかっていたが、言わずにはいられなかった。

「そうか、ならここで働いてみないか?」

少し考えたようだが、確かにそう言った。

「えっ!、本当に?」

聞き違いかと疑った。

「ああ、お前が良ければそうしろ」

ここで働くということは、ご飯の心配はいらない。

その事だけでも嬉しかった。

しかも、あの綺麗な服を着られるかもしれない。

こんな凄い屋敷に住めるなんて、夢にも思ったことはなかった。

「ただし、ここでの仕事はキツイぞ。身も心も私に捧げるのがここでの仕事だ。それでも良いか?」

私の顎を指で持ち上げて、目を真っ直ぐに見つめてそう言った。

「意味はわかるか?」

「はい。根を上げません。どんな仕事でも耐えます」

泣いた事や、辛い事など今まで何度も有った。

それでも必死に生きてきた。

ここで生活できるのなら、何だって出来ると思った。

「よしわかった。今日からお前は私のメイドとして仕えろ。衣食住は保証する。仕事は少しずつ覚えればいい」

私の頭を撫でてくれた。

私を受け入れてくれたんだ。

「はい。よろしくお願いします」

ここを出ても行く所など無い。

ここに居れば少なくとも食事に苦労することは無いだろう。

「これからは、御主人様とお呼びすれば良いのですか?」

「そうだ。それでいい」

私もさっきまでは客だったけど、もうこの屋敷の使用人になるんだな…


「まずはココのしきたりを教えよう」


ベッドに手を縛られて何をされるのか不安だったけど、約束をしたからには守らなくては…

何でも我慢しなくっちゃいけない。

今までだって辱めなど何度も受けてきたし、この方には恩が有る。

「両足を開け!」

初めて強い口調で言われたせいでビックリした私は、「そんな…」と思わず言ってしまった。

「私の言う事に口答えは許さない。覚えておけ!」

そう言われて、私は自分の立場を忘れないようにしようと決めた。

「はい、わかりました。私はあなたのものです」

この言葉の重みを当時の私は知るはずもなかった。


両足もベッドに縛られて身動きが出来なくなった。


スカートは捲られ、パンツが丸見えになっている。

ろくに洗濯もしていないパンツだったのが恥ずかしかった。

「これが終わったら服を渡す。明日からはそれを着ろ」

「はい。ありがとうございます。御主人様」

あの綺麗な服を貰うためには我慢しないと。


御主人様はナイフでパンツを切り裂いた。


これでは私の恥ずかしい処が見えてしまう。

「こんな恥ずかしい事は勘弁してください」

思わず口から出てしまった。

「これが嫌ならここから出て行け!」

間髪を置かず返事が返ってきた。

「どうする?」

そうだ、私は御主人様のものになったのだ。

何が有っても逆らってはいけないのだ…

その事を忘れていた。

「ごめんなさい。私をここに置いてください。」

「ならば、私に逆らうな。わかったな!」

「はい。御主人様」

私は再度誓いを立てた。

これが身を捧げるという事なの?


また、御主人様はナイフでパンツを切り裂いた。


恥ずかしい処が丸見えになってしまった。

他人に見られたのは初めてではないけど、こんな格好は初めてだからとても恥ずかしい。

自分の顔が赤く染まっていくのがわかる。

心臓がドキドキと凄い勢いで動いている。

「見られるのは初めてか?」

「い、いいえ…でも・・・いえ、何でもありません」

私が顔を背けると、御主人様はハサミで私の下の毛を切り始めた。

ジョキッ、ジョキッ、と切り落とされる音だけが部屋の中に響いた。


白いクリームが塗られた。


シェービングクリームと呼ばれているそれは、ひんやりと冷たかった。

ハケで丁寧に塗られ、私の恥ずかしい処の全てを覆いつくした。


御主人様はカミソリを取り出した。


最初は何をされるのかわからなかった。

御主人様はカミソリの刃を私の肌に当てた。

ジョリ

ジョリッ

少し痛い。

この痛みと音で何をされているのかわかった。

下の毛を剃られているのだ。


もう半分以上が剃り落とされている。


どうしてこんな事を…

さっぱりわからない。

これがこの屋敷のしきたりなの?

ここはそういう場所なの?

でもこれを我慢すれば明日からは…


全てが綺麗に剃り落とされてしまった。


今更ながらこの屋敷が、今まで私が暮らしていた場所とは違う事を思い知った気がする。

「これで明日からここで働く準備ができた」

「ありがとうございました。御主人様」



儀式が終わり、私はこの御屋敷の一員となったのです。



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