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あの夜の火事が全ての始まりでした。
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私は火事で家と家族を失い途方に暮れた。
辺り一帯が全て灰になってしまった…
貧乏だったが家族で住める場所はあった。
一夜にしてこの身体以外のものを全て失い、一人ぼっちになってしまった。
家族を失い、住む場所が無くなり、2・3日はただ呆然としていただけだった。
お腹が減り我に返った時・・・・・・私も死んでしまおうと思った。
でも最後の勇気が無くそれはできなかった。
中央公園で寝起きをし、残飯を求め街中をさ迷い歩いた。
「どうした?食べ物が欲しいのか?」
不意に、身なりの整った人が声を掛けてきた。
考える事もせずに、「うん」と答えた。
「私の邸にこないか?満足するまで食事をさせてあげよう」
「本当に?」
「お腹いっぱい食べていいの?」
他には何も考えられなかった。
とにかくお腹いっぱい食べたい一心だった。
「好きなだけ食べればいい」
そう言ってその人は手を差し伸べてくれたので私は付いて行く事にした。
「はい、行きます」
とにかくご飯が食べられる事が嬉しかった。
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理由は無いが、この人に付いて行けばご飯が食べられるのだと感じた。
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生まれて初めて馬車に乗った。
この人は馬車を持っている程の大金持ちなんだ…
どうして私なんかに声を掛けたんだろう?
馬車に乗って来た場所は、私たちでは近寄る事すら許されない地区だった。
私は屋敷というものを初めて見た。
塀の中には中央公園よりも広い庭が広がっていた。
とても大きな建物で、いつも通っていた教会よりも大きな建物は初めて見た。
そこは見たことの無い物ばかりで、とても綺麗な所だった。
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「お帰りなさいませ、御主人様」
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屋敷の中に入ると、同じような服を着た6人の女の人が待っていた。
「この娘に食事の用意を」
「はい、かしこまりました。」
皆は口を揃えて答えている。
「今晩はここに泊まりなさい」
そう言って私の頭を撫でてくれた。
もう何日もお風呂に入っていない、薄汚れたこの私の頭を。
それは、この数日間忘れていた人の温もりだった。
「後の面倒も見てやってくれ」
「はい。御主人様」
一番手前に居た女の人が私の側に来てお辞儀をした。
「ようこそいらっしゃいました。私がご案内いたします」
そう言い終わると、私を部屋へと案内してくれた。
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「こちらのお部屋でお待ちください。すぐにお食事の用意をいたします」
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連れられて来た部屋は、以前住んでいた家よりも大きな部屋だった。
部屋の中は見たことの無い物ばかりが置いてある…
何に使う物なんだろう?
どうも部屋が広すぎて落着かない。
窓から外を見たら広い庭の遥か向こうに塀が見えた。
本当に広い屋敷なんだと改めて思った。
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その晩、私は至福の時を過ごしました。
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