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病は食から:フレンチ・パラドックス=森下敬一氏 /北海道

 健康に関心をお持ちの方なら「フレンチ・パラドックス(フランスの逆説)」という言葉を覚えていらっしゃるでしょう。肉食中心の欧米諸国では例外なく心臓病死が多発しているのにフランスだけ低率なのはなぜかという課題です。この問題を(1)食生活の実態(2)心臓病のリスク・ファクターの2点から考えてみます。

 (1)フランスの食生活(ダイエット)は基本的には「地中海型ダイエット」で、野菜・果物やオリーブ油(不飽和脂肪酸)が格段に豊富です。肉類は他の欧米諸国よりは比較的少ない方で、それに対し乳製品、特にチーズが多い。そして忘れてならないのはワイン消費が断然高いことです。

 (2)心臓病リスク・ファクターとして高血圧、高脂血症、喫煙の3大要因も調べられましたが、フランスと他の欧米諸国との間にほとんど差が見いだされず、これらとの関連性は否定されました。結局、フランス式食生活の内容にこそ、その原因がある--と判断されました。

 フランス食は「地中海型ダイエット」の枠組みに入るため、野菜・果物・オリーブ油が豊富なことの長所をまず明確に直視しなければなりません。もう一つ、赤ワインのプラス面も見落とせません。それは、フランス国内で赤ワイン消費量が抜群のトゥールーズ(南仏)の心臓病死が同国のストラスブールやリールなどの約2分の1である事実によって示されています。

 93年、E・N・フランケルらは、赤ワインが心臓病を軽快させるのは赤ワイン中のポリフェノールが悪玉コレステロールの酸化を防ぐためだと発表しました。

 悪玉コレステロール、すなわちLDL(低比重リポプロテイン)の酸化こそ、心臓や血管内皮組織に病変を発症させる原因なのです。それを赤ワイン・ポリフェノールが予防してくれるのならば、当然心臓病も治癒に向かうでしょう。

 野菜・果物・ワインなどに共通する健康・長寿因子に「ファイト・ケミカル(植物・化学物質)」が挙げられます。次回はこの点について説明します。(次回は2月23日)<国際自然医学会会長、医学博士>

毎日新聞 2008年1月26日

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