「『食い扶持の維持』か『基地』か。沖縄はそういう選択をずっとさせられてきて、疲れている。今回のような怒りの抗議は、本当に歯を食いしばってのことです」――。
オーマイニュースではおなじみのイベント、「古木杜恵の闘う! 居酒屋」第7夜に、沖縄現地紙の記者が登場すると聞いて、21日夜、東京・阿佐ヶ谷の『Asagaya Loft A』に足を運んだ。 「闘う~」は毎回、2部制で4時間以上激論を繰り広げるトークイベントである。今回の第1部はジャーナリスト安田純平さんの「イラク最新リポート」だったが、こちらは割愛。第2部で登場した、琉球新報・松元剛記者が、イラク以上の戦争状態に置かれている沖縄の現状について、血を吐くようなリポートをしてくれたので、かいつまんで紹介する。 米軍再編の危うさを解説する松元剛氏=21日23時、東京・阿佐ヶ谷のAsagaya Loft A(撮影:軸丸靖子) 冒頭紹介したコメントにある「今回」というのは、2月11日に発覚した沖縄駐留米軍の海兵隊員による14歳の少女強姦事件である。沖縄ではその後も飲酒運転、住居侵入、偽札使用と米兵の逮捕が続き、20日からは異例の「無期限外出禁止令」が出された。 松元さんによると、その外出禁止令のプレスリリースが記者クラブに投げ込まれたのは20日午前零時過ぎ。妙なタイミングに「何かある」と思っていたら、翌朝、フィリピン人女性が米軍兵士にレイプされたことが発覚した、という。 「2万5000人の米兵が日本にいるあいだは、統計学的にこうした事件は防ぎ得ない。基地の規模を減らしていかなければ、被害は減らせない」 と松元さん。米軍再編と沖縄の自衛隊との関連について問われると、「『自衛隊と米軍の一体化』といわれているが、それは的を得ていない。実際は、自衛隊が軍事力を高めていくための『日米の軍事融合』が適切だと思う」と指摘。 沖縄の自衛隊はこれまで、県内で射撃訓練ができず九州まで移動して訓練していたが、現在は、一体化によって米国のグリーンベレー(米陸軍)と一緒に訓練ができるなどといった環境がどんどん整ってきている、と危ぐした。 これに対し、フロアから「沖縄で就職難にあえいでいる若者たちは自衛隊に就職したいのでは?」と問われると、 「自衛隊は、給料をもらいながら大型トレーラーの免許が取れたりするので、それを目当てに入隊する人は少なくない。中学・高校を卒業するときは、自分にも勧誘の電話があった。安定しているので親が入隊を勧めることもある。ただ、沖縄で、高校・大学を卒業した人に一番人気のある職場は、相変わらず基地職員。安定していて朝7時半から夕方4時まで務めれば残業もない。それが沖縄の現実だ」 と力を込めた。 さらに、「沖縄人はなぜもっと怒らないのか?」と問うた古木さんには、「言うは易し、だ」とバッサリ。1995年の事件(米兵3人が12歳の小学生女児を車で拉致し、海辺で強姦した事件)以降も、米兵による暴行事件は14件起きている、と淡々と指摘して 「その中で、少しでも本土で話題にされたのは、沖縄サミットのときの事件くらい。沖縄の人間はすでに怒り疲れている。今回のように14歳の少女となればさすがにもっと怒るが、本当のところは、沖縄に全部基地を押し込めて、こうした問題をずっと放置している日本本土の問題だ」 「ただ、沖縄自身の問題もある。(地元首長に)基地撤廃を訴える人を選びたくても、選挙になると食い扶持の問題が出てきて、経済優先の人に投票してしまう。ずっと、『食い扶持』か『基地』かの選択の中をしてきた沖縄が、今回のように怒りの行動を起こすのは、本当に歯を食いしばってのことだと分かってほしい」 と訴えた。
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