日本にラーメンが定着したのは、文明開花後の明治時代初頭。明治4年に日清修好条約が締結され、多くの中国人が日本に移り住んだ。当時、外国人は「居留地」と呼ばれる専用地域に居を構える決まりになっており、彼らの場所は中国人街として発展していく。
横浜の場合は「南京街」と呼ばれる地域、現在の中華街のあたりだ。当然のごとく、「南京街」では中国料理のお店が活況を呈する。そのメニューの中に、ラーメンがあった。
もっとも、当時は「ラーメン」という名称は存在せず、「支那そば」という名称の、コースメニューの締めにいただく、ちょこっとした料理であったらしい。中国伝来のものであるから、しょうゆ味ではなく塩味。なので日本のラーメンの元祖は、塩ラーメンというのが定説だ。
「支那そば」がなぜ「ラーメン」になったのか? その有力な説は「拉麺変化説」だ。中国には「拉麺(ラウメン)」という、練った小麦粉を何度も延ばしてゆく手延べ方式の細麺がある。南京街で中国人コックたちが話していた「拉麺」の言葉を聞いて、お客が「支那そば」を「拉麺」だと思いこみ、注文しだしたという説。
他の説では、中国の切り麺「柳麺」が訛ったという「柳麺変化説」、東京にあった柳さんの屋台の「柳麺」というメニューが訛ったという「東京起源説」、札幌の『竹家食堂』店主が「柳麺」と書いて「ラーメン」と名づけたという「竹家食堂説」などもある。
こうして日本に誕生したラーメンは、徐々に全国に広がっていく。昭和33年には世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」(日清食品)が登場した。また、旭川の「しょうゆ」、札幌の「みそ」、函館の「塩」など全国に多種多様なご当地ラーメンが誕生する。
ご当地ラーメンブーム
ラーメンが市民権を得ると、今度はご当地ラーメンブームだ。最初は昭和43年の「みそラーメンブーム」。インスタントの「サッポロ一番みそラーメン」(サンヨー食品)が発売された。前年に東京にオープンの「どさん子」チェーンが一気に100軒を突破したのもこの年だ。
次は昭和59年の「とんこつラーメンブーム」。博多ラーメン「ふくちゃん」がオープンし、5年前に発売のインスタント「うまかっちゃん」(ハウス食品)などもあり、全国的に人気になった。また、平成9年には「油そばブーム」。もともと東京・多摩で発祥の油そばを出す店が都心に開店。その後、各地に広がっていった。
そして、平成10年「和歌山ラーメンブーム」。『井出商店』がテレビ番組で「日本一うまいラーメン店」になったのと、新横浜ラーメン博物館への期間限定出店が重なり、一気にブームが到来。東京には『のりや』も開店し、話題になった。
新しいラーメンの開拓
そして、平成12年「牛骨ラーメンブーム」。看板の無い店『がんこ』ほか、牛骨でダシを取る店が大流行した。このブームはさらに発展するかに思われたが、もともと牛骨はとんコツと比較して、味のまろやかさが欠けるので配合が難しい点、そしてBSE(いわゆる狂牛病)問題でトーンダウン。現在では牛骨自体を使用する店はほとんど見受けられなくなってしまった。
代わって登場したのが、平成13年の「魚系ラーメンブーム」。豚などの動物系と、煮干しなどの魚系ダシを器で合わせる「ダブルスープ方式」が大流行した。代表的な店では東京、中野の『青葉』(現在はダブルスープ方式ではない)。模倣店も数多く開店し、大ブームになった。
この現象は今でも続いている。以前は煮干しのダシをふんだんに効かせたスープが多かったが、最近では「あごダシ」と呼ばれる、とびうおを使ったものが流行している。あごダシを加えることにより、煮干しに比べて、ややほろ苦さが立つのが特徴だ。
なお、それと平行して、一昨年あたりから夏季限定の「冷やしラーメン」をメニューに取り入れるラーメン店も増えてきている。特に昨年はその傾向が強く、各店舗とも多種多様な具に挑戦し、見た目にも楽しい作品が登場した。
一方、昨今のラーメン店の店構えはどうであろう。ラーメンが中華料理の一部であった時代には、ラーメン店も中華の影響から、赤を基調とした赤いのれんや赤いカウンターなどの外観や内装が目立った。
その後、『らーめん香月』のブレイクの影響で、ネオンを多用した派手な看板や外観のラーメン店がいくつか登場。しかし、最近の流行は木目を活かした和風の店構えだ。これは『光麺』の成功によるところが大きい。
また、近年の味の傾向が「魚系」。これは、スープの取り方が和食の延長線上である。そのため、和風の造りがぴったり合うという事情もあるようだ。和風の店構え以外には、最近は『まっち棒』などに代表される、スタイリッシュな店舗も見受けられる。美容室やカフェを彷彿とさせるおしゃれな店内でラーメンがいただけると好評だ。
世界のラーメン事情
さて、日本でこれほどまでに大人気のラーメンであるが、実は世界各国でもブームを巻き起こしている。
例えばハワイ。20年以上も前に『えぞ菊』が進出し成功を収めたのを皮切りに、現在では『なかむら』『めんちゃんこ亭』『天下一品』『ごまいち』など日本のラーメン店の支店が店を構える。また、『浪花屋ラーメン』『相撲ラーメン』などハワイ独自の店も多く、数十軒がしのぎを削る。
また、パリの通称「ラーメン通り」も有名だ。オペラ座とルーブル美術館の間あたりで、もともと『大阪』がラーメン店を開業(現在は閉店)。その後、『ひぐま』『サッポロラーメン』『北海道』『来々軒』など現在では10数軒が密集するに至った。パリのラーメンは北海道系の味が多いのが特徴だ。
ロンドンにもラーメン店が多い。『亮』『太郎』『能登』その他、10数軒でいただける。また、ロンドンでは「ヌーベルジャパニーズ」の流れも見逃せない。これはいわば、新感覚日本料理店。代表的なのは『WAGAMAMA』。おしゃれなバーのような雰囲気で、ロンドンっ子たちがおしゃれにラーメンをすすっている。
タイのバンコクには『8番ラーメン』が進出し、至るところに支店がある。また『レックさんラーメン』など現地の人が修行をして独立した例もある。さらに日本人観光客向けに、現地の麺料理の屋台なのに「ラーメン」という看板を掲げるところまで出る始末。
韓国のソウルではラーメンは即席麺が「ラミョン」という名で、すでに国民食にまで発展している。店でラーメン(ラミョン)をオーダーすると、インスタントラーメンを調理したものが出てくる。最近では『明洞ラーメン』『九州ラーメン』などのラーメン専門店も開店し話題となった。
その他、世界各国の大都市では気軽にラーメンが食べられる。ニューヨークでもシドニーでもバンコクでも北京でも。ニューヨークのワールドトレードセンターにもラーメン店があった。
海外で一番すごいのはおそらく台北。ここ数年、空前の「ラーメンブーム」となっている。もともと親日派の地域であり、角川書店も『台北Walker』を発行しているほどのところなので、ラーメン店が多いのもうなづけるが、その数なんと百軒以上。それらは「日式拉麺」と呼ばれ、『赤坂ラーメン』など日系のフランチャイズもあるが、ほとんどが現地の独自の店舗だ。
このようなラーメンの進出は、店舗に限ったことではない。むしろ、家庭で気軽に作れるインスタントラーメンのほうが進出がめざましいのではなかろうか。
昭和33年に登場した『チキンラーメン』や昭和46年の『日清カップヌードル』。その後、さまざまな商品が開発されている、ご存知、日本が生んだ世界有数の料理の一つだ。インスタントラーメンは、今日ではさまざまな形に変化して世界各国に輸出されている。また、現地の外国法人が生産する、独自の商品も多い。
ちなみに、インスタントラーメンの1年あたりの需要量第1位は中華人民共和国(約160億食)で、第2位はインドネシア(約90億食)。なんと日本は、第3位(約50億食)である。
(はんつ遠藤)
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