◎特殊勤務手当 まだ切り込む余地はある
石川県が特殊勤務手当を新たに見直した結果、新年度から年間約六千二百万円が削減で
きる見通しとなった。富山県でも見直しに伴う削減効果は二〇〇二―〇七年度で約五億六千万円に上っており、裏を返せば絶対に必要とは言えない手当がこれまで少なくなかったことを示している。
それぞれ国や他県の状況も参考にしながら廃止や見直しを検討しているようだが、これ
から北陸新幹線開業に伴う財政負担が増大することを考えれば、他の地域と横並びでいいという意識では物足りない。民間企業の血が出るようなコスト削減と比べれば、まだまだ切り込む余地があるのではないか。
特殊勤務手当は「著しく危険、不快、不健康または困難な勤務」などに支給されるが、
本来の給料と重複する二重払いなどが問題視された。これを受け、総務省は〇四年度に総点検を指示し、各自治体で見直しが進められた。
石川県はその時点で七十四項目あったが、新年度から「病院窓口業務等手当」など四項
目を新たに廃止し、四十五項目まで減った。内容の見直しでは月額を日額に改める項目がみられるが、その業務に応じた手当である以上、対象業務を行った日数分だけ払うのは当然である。
景気が不透明になるほど目立ってくるのは公務員の安定した給与や処遇である。特殊勤
務手当を残すにしても、支給の基準や単価が外からみて納得できるものなのか検証を続けてもらいたい。長年の労使慣行の中で定着した、いわば既得権であり、組合との関係で一気に削減するのは難しい面もあろうが、身を削る努力をしてこそ住民の支持も得られるはずである。
富山県の場合、財政難を理由に〇五年度から給与削減を実施し、新年度も削減率を圧縮
して継続することになった。その意欲は買えるとしても、全体責任のような一律的な削減だけでは厳密には給与改革とは言えないだろう。大事なのは仕組みを変えることであり、単に削減するだけでなく、たとえば医師を確保しようとするなら、そうした政策意図を給与に反映させる手もある。
職員の働く意欲を引き出し、人材を生かすためにも各自治体はメリハリをきかせた能力
・業績主義の給与体系に近づける努力をしてほしい。
◎景気判断引き下げ 原材料高騰との二重苦も
内閣府は二月の月例経済報告で、一年三カ月ぶりに景気判断を引き下げた。日銀が昨年
末、景気認識を下方修正したのに続く見直しであり、景気に対する判断の切り替えがやや遅れた印象も否めない。
息切れを始めた米景気の行方もさることながら、原油価格が再び一バレル百ドル台に乗
り、鉄鉱石や原料炭、小麦などの原材料価格の大幅値上げが気になる。日本経済をけん引してきた輸出産業が、米景気減速と原材料の値上げという二重苦に直面している。輸出産業が多い北陸経済にも大きな影響が出るのは避けられない見通しであり、政府、日銀はより慎重な政策運営が求められよう。
日本経済に暗雲が垂れ込めてきた背景には、米国のサブプライムローン問題に端を発す
る金融市場の混乱がある。今月九日に東京で開催された先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)では、世界経済の先行きに強い懸念が示された。
日本企業は、大手製造業を中心に米国や中国向けなどへの輸出で業績を大きく伸ばし、
設備投資を活発化させてきたが、下請けの中小企業や非製造業などへの収益拡大や雇用者所得の伸びは低いままで、個人消費を押し上げる力に欠けていた。内閣府がここへ来て景気判断を下方修正したのは、頼みの綱だった輸出関連企業の生産活動にまで、陰りが見えてきたからだ。
原因は米景気の減速懸念だけではない。原油価格は高止まりしたまま、さらなる上昇が
見込まれている。国内鉄鋼大手はブラジルからの鉄鋼石輸入について、昨年より65%値上げした契約条件をのまされた。副原料のマンガンやニッケルなどは昨年中に国際価格が二倍以上になっており、さらに原料炭の大幅値上げも迫っている。小麦価格は先物価格が一年で二倍以上に上昇し、家計を圧迫し始めている。
原材料の高騰は、日本企業の利益を確実に削り取っていく。製品に価格転嫁できる大手
はまだしも、中小零細企業の経営環境はより厳しさを増すことになる。日本全体で見れば、得られる外貨は減り、外需から内需への資金移動はますます細る懸念がある。日本経済は正念場を迎えているのだろう。