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戻す受精卵、原則1つ 体外受精で日産婦が指針

2008年02月23日03時02分

 不妊治療で、受精卵を体外から子宮に戻す個数について、日本産科婦人科学会(日産婦)は原則として一つに制限する新たな指針案をまとめた。治療技術の向上で妊娠率が高まっていることや、複数の受精卵を戻すことで2人以上妊娠する多胎妊娠になり、母体や赤ちゃんへの危険が高まることを考慮した。

 指針は、4月の総会で正式決定する。強制力はないが、指針には学会に加わるほとんどの医師が従っている。

 日本国内で不妊に悩むカップルは10組近くに1組といわれる。厚生労働省研究班の03年の調査で、不妊治療する患者は46万7000人いると推計されている。

 日産婦のまとめでは、05年に約8万5000人の女性が体外受精を試み、約1万9000人の赤ちゃんが生まれた。多胎妊娠は3784例で、そのうち225例が三つ子か、四つ子だった。

 受精卵は、子宮に戻しても必ず妊娠するとは限らないため、不妊治療では、これまで複数個を戻すのが一般的だった。四つ以上というケースも珍しくなかった。

 日産婦は指針で、戻す受精卵を原則「三つまで」としている。

 多胎妊娠になると、妊娠高血圧症候群のほか、早産や死産のリスクが増す。低体重で生まれる可能性も高くなる。受け皿となる産科や新生児科にかかる負担も重視した。

 一方で、03年に「原則一つ」を法で定めたスウェーデンでは、受精卵を子宮に戻した場合の出産の確率は25%前後と、二つ以上のころと変わっていないことが昨年報告された。日本国内でも、原則一つとする医療施設が多くなっている。

 ただ、高齢になると妊娠率が落ちるため、日産婦は新指針に「35歳以上や2回以上妊娠できていない場合、二つでもよい」とする方向で検討している。海外では英国も原則一つとするように法手続きを進めており、米国も学会が「一つ〜二つ」を推奨している。

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