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【社説】

道路論戦 「10年59兆」をまず外せ

2008年2月23日

 国会の道路論戦が熱を帯びるにつれ、政府にほころびが目立ってきた。結局は「十年で五十九兆円」の道路整備中期計画の妥当性に行き着く。与野党が歩み寄るには、まずこの数字を外すしかない。

 政府の苦しい答弁が続いている。

 二十一日の集中審議では、二〇〇八年度から十年間で五十九兆円の事業費を盛り込んだ道路整備中期計画のずさんさが焦点となった。小泉政権下では、約一万四千キロの高規格道路整備の一部が「白紙化」されたが、いつの間にか「整備推進」と言及されたものだ。

 民主党の岡田克也氏は当初案の六十五兆円から六兆円減額されたことについて「一声であっという間にコスト削減できるいいかげんなものか」と皮肉った。冬柴鉄三国土交通相は「積算根拠、内訳もできるだけ早く示したい」と答えたが、私たちもここに疑問を持つ。

 政府がガソリン税などの暫定税率維持を含んだ租税特別措置法改正案の成立を目指すのは、この計画を達成させるためだ。なのに根幹部分の具体的データがいまだにはっきりしないとはどういうことか。

 中期計画自体にしても閣議決定されておらず、関連法案成立後に行うという。そんなあいまいな代物を議論の俎上(そじょう)に載せて、審議を進めよというのはあまりに乱暴だ。国会軽視のそしりを免れない。

 ガソリン税などの道路特定財源の使途も、でたらめぶりが日に日に明らかになっている。外部文書の引用にすぎないような国交省所管の社団法人の報告書作成に約一億円かけていたことが新たに判明した。しかも常勤役員三人全員が国交省からの天下りだ。

 職員のスポーツ用具、カラオケ機器、ミュージカル公演費用…。まさにその使われ方は惨憺(さんたん)たる状況だが、いずれもこれまでは見過ごされてきたものだ。政府は野党側の追及に改善を約束した。これは、ねじれ国会がもたらした一つの成果と言うべきものだろう。

 攻める民主党にも難点がある。道路特定財源の一般財源化と暫定税率廃止を主張しているが、大幅税収減になることへの地方自治体の懸念を解消し切れていない。より簡潔で丁寧な説明が求められる。

 今後の論戦の焦点は、衆参両院議長あっせんに盛り込まれた「法案修正」となろう。与野党合意を得るには、政府が中期計画にこだわる一方で、民主党に対案を出せと迫るのは無理がある。福田康夫首相は一歩踏み出し、今こそ「十年五十九兆円」を見直すべきだ。

 

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