北京五輪、中国市場を狙う企業には大きなチャンスに
[北京 17日 ロイター] オリンピックがスポーツイベントとしてのみならず、マーケティング的な意味合いでも世界最大規模のイベントとなった今、8月に開幕する北京五輪はスポンサー企業にとって大きなビジネスチャンスになることが期待されている。
夏季五輪の過去2大会の開催国がオーストラリアとギリシャで、中国に比べて関連する市場規模が小さかったことも、北京大会に対する企業の期待感を余計に高めている。文化大革命から約30年が過ぎた中国では、BMWなどの高級車を購入する消費者も増えつつあり、潜在的な大規模市場への参入を視野に入れている企業も多い。
米医薬品・健康関連用品大手のジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)(JNJ.N: 株価, 企業情報, レポート)は、北京大会で初めて五輪公式スポンサーとなる。同社バイス・プレジデントのオーウェン・ランキン氏は、中国市場の大きさに魅力を感じているとし、五輪をスポンサーする「ちょうどよい時期だ」と語った。
2006年のトリノ冬季五輪と北京五輪を合わせた放映権料とスポンサー料は、すでに約44億ドル(約4700億円)。この数字は、2002年のソルトレークシティー冬季五輪と2004年のアテネ五輪の総収入合算を上回っている。
スポーツ関係のコンサルティングを手掛けるヘリオス・パートナーズのクリストファー・レナー氏は「今回(北京大会)は五輪史上で最も成功するマーケティング・プログラムになる。疑問の余地はない」と述べた。
スポーツ用品大手の独アディダス(ADSG.DE: 株価, 企業情報, レポート)は、中国国内での五輪ロゴの使用権取得に1億ドルを支払う見通し。北京大会では、国際オリンピック委員会(IOC)と契約する世界スポンサー12社が五輪ロゴを全世界で使用する権利を持ち、北京五輪組織委員会(BOCOG)と契約する国内スポンサー11社が、中国での同ロゴ使用権を持つ。
中国企業として唯一の世界スポンサーとなったパソコン大手レノボ(0992.HK: 株価, 企業情報, レポート)は、北京大会で同社の技術をアピールするとともに、1988年のソウル五輪でサムスン電子(005930.KS: 株価, 企業情報, レポート)が行ったように、世界規模でのブランド確立を目指している。
また、世界最大の携帯電話キャリアである中国移動(0941.HK: 株価, 企業情報, レポート)や、アジアの石油精製最大手である中国石油化工(シノペック)(0386.HK: 株価, 企業情報, レポート)、中国銀行(3988.HK: 株価, 企業情報, レポート)は、いずれも国内スポンサーに名を連ねている。
大手グローバル企業では、米マクドナルド(MCD.N: 株価, 企業情報, レポート)や米コカ・コーラ(KO.N: 株価, 企業情報, レポート)が、五輪スポンサーとして80周年を迎える。一方、アディダスのライバル企業である米ナイキ(NKE.N: 株価, 企業情報, レポート)は、公式スポンサーにはならない戦略。同社は「競技が始まれば、ナイキ製品を身に付けた選手たちが競い合い、勝つところに注目が集まる」としている。
<懸念されるリスク>
北京五輪にはビジネスチャンスが見込まれる一方、スーダンとダルフール紛争に対する中国の政策を理由にスティーブン・スピルバーグ氏が芸術顧問を辞退するなど、人権活動家らによる批判の対象になるというリスクもある。
米女優ミア・ファローさんらが支援する人権団体「ドリーム・フォー・ダルフール」は、五輪のスポンサー企業に対し、ダルフール問題に力を入れるよう求める一連のキャンペーンを計画しており、場合によっては五輪期間中に本社での抗議行動などが行われる可能性もあるという。
一方、BOCOGは、こうした批判にさほど耳を傾けてはおらず、大会は政治問題から切り離して考えるべきだと主張。BOCOGや一部スポンサー企業の広報コンサルタント会社、ヒル・アンド・ノウルトンの幹部は「企業はオリンピックを人間の最高水準の功績が示される場と評価しており、開催地がどこであろうと参加には前向きだ」としている。
(ロイター日本語ニュース 原文執筆:Kirby Chien、翻訳:宮井伸明)
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